体質が変わったので

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贄の家(4)神域

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 村に着くや、またも村人の視線がついて来た。しかしそれに構わず、神社へ向かう。
 その前に、村人が8人、立ちふさがった。村の人口からすれば、8人は多い。大人の男の、4分の1だ。
「どこに行く」
「神社へ行こうかと思いましてねえ」
「村人以外、立ち入り禁止だ。帰れ!」
「けったいな神さんやなあ。何て神さん祀ってはるんです?」
「か、関係ないだろう!」
 彼らが睨みつけてくるのを素知らぬ顔で流し、遠くの離れた神社を視る。
 重苦しい、歪んだ気が満ち満ちていた。
「何の騒ぎかな」
 あっという間に集まったらしい村中の人間達の中から、恰幅のいい男が進み出る。
「あなたは?」
「村のまとめ役をしている者で、飯里です。まあ、村中ほとんど飯里ですが」
「御崎です」
「町田です」
「郷田です」
「神社にお参りしようかと思ったんですが」
「申し訳ない。あれは村の神域でしてね。村人以外の立ち入りは、ちょっとご遠慮いただきたい」
 僕達に集まる眼は、不安、敵意、恐怖、猜疑、色々とあったが、どれもこれも、マイナスのものばかりだ。
「では、お話を聞かせていただけますか。
 あそこに祀られているのは、何ですか。春に行われた祭りとは何ですか」
 数人が、ピクリと視線を揺らせた。
 だが、村長は動じない。
「マイナーな土地神ですよ。祭りは、不定期に行われるものでしてね。村人だけで執り行う、いわゆる、奇祭というやつですな」
 僕達を取り巻くのは、村人全員かも知れない。
 その人垣の最後列に、和幸君と父親、母親らしき人がいた。
 その時、背後に車が止まり、中から高齢の男が降り立った。飯里の死亡診断書を書いた医師だ。こちらを見て、顔をしかめた。
「まだ何か調べているんですか?」
「ああ、先生。昨日はどうも。
 いや、今朝、かな」
 医師は視線を泳がせた。クロだな。
「何の事か。
 調べられるような事はない。帰った、帰った。警察は余程暇なんですな」
「休暇中なので」
「プライベートですよう」
「税金で来てるんとちゃいまっせ」
「しかし、場合によっては公務に切り替える。例えば、死亡診断書に嘘の記載があったとか」
「なっ!?」
「人を死に追い込んだとか」
 村人達の多くが、顔を見合わせて分かり易く動揺する。
 村長だけが、そのまま――いや、冷たい睨みつけるような目で僕達を睨みつけている。
「何の事やら。訴えますよ」
 僕も、平然と受ける。
「いいでしょう。ただしその前に、聴きましょうか。あちらの皆さんの言い分を」
 誰もが、ギョッとしたように神社の方を見て、数歩後ずさった。
 ポッカリと空いた進路を僕と直は進み、その小さな古い社の手前で足を止める。
「暴発寸前だな」
「そうだねえ。辛うじて押さえているのは、飯里だよねえ」
「助けてって言うのは、こういう事か、飯里」
 智史がパタパタと走って来て、訊く。
「飯里!?おるんか?」
「ああ。このままじゃまずい。
 直、囲ってから、封印を解く。その後、祓おう」
「りょうかーい」
「何をするつもりだね!?やめろ!」
 村の連中が慌て出す。
「はい、落ち着いて下さいねえ。行きますよう」
 直の札が、神社を囲むように配置され、檻を作る。
 そして僕は、刀を出した。
「さあ、逝こうか」




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