転生したら性別までも変わっていて、可愛い妹までいて幸せだけど。まさかの妹が悪役令嬢！？

第２幕

浮気の葛藤

　アベルとグレンは、保健室のベットに眠るカインを見ていた。

「カインの魔力量なら、あんな魅了にかからないなんて…油断してた」

「見えてたら魅了されてないはずだよ？カインはディアンナ嬢だと思って呼んでいたと思うから。魔王アルフレッドはあの女の名前を愛しげに呼んでいたからね。それにしても、あれだけ言ったはずなのにカインに手を出すとは思わなかったよ」

　なかなか、目を覚まさないカインを気にしつつアベルはグレンに尋ねた。

「どれだけ強く叩いたの？」

「…かなり強めに、俺の力でカインを気絶させれると思わなくて」

　グレンも目覚めないカインを気にしつつ、罰悪相に苦笑い浮かべていた。

「平時のカインならだよね？さっきのカインは隙あり過ぎだったと思うけどね」

「起きたら謝る…」

「そうだね。起きたら、ディアンナ嬢とあの女のどっちに好意抱いてるか心配だね」

　それから数十分後にカインは目覚めた。


　目覚めたカインを気づかう様に、アベルとグレンは見つめカインの言葉を待っていた。


「……確認なんだが。アベルはディアを怒っていたか？」

　冷静に状況を理解しようとしてくれているカインにアベルは「ディアンナ嬢には怒ってないよ」

「…ディアはあの場にはいなかった？」

「いないよ」

　カインはしばらく、考え込み独り言を呟いていた。

「ディアはいない…。知らない女性に声かけられて…頼られて、断ろうとしたのに断れなくて……。違和感あったのに、ディアかと聞いたら嬉しそうに返事して、可愛いくて愛しくて………。私はディア以外と？」

　カインが状況整理をしていたと思ったら、カインのアイマスクが少しずつ濡れていった。

「カインの意思じゃないよ」

「私の意思だ。ディアじゃないと違和感あったのに、強請られキスした」

「落ち着いてカイン。あの女のせいだから、カインは悪くないよ」

「…あの女は何をした？」

　カインは苛立たし気に唇拭うように擦っていた。

「あの女がヒロイン？だよ。攻略対象者に近づくなって忠告していたのに、まさかカインに近づいて、カインじゃないなんて言うとは思わなかったよ」

　アベルは声が後半荒くなっていた。
　声をかけるタイミングを逃していたウィリアムが近づいて来た。

「ヒロインは転生者だったんだと思います。カインは本来の設定姿とは違いますし、魔術が多少使える文官的な人物でしたから。剣術は愚か運動全般不得手でした」

「それでも、顔は変わらないよね？」

「カインの場合は別人といってもいい位です。攻略前は自信なさ気な大人しいタイプですから、攻略されて相応しくなりたいって少しばかり前向きに努力をして自信をつけて顔つき変わる程度です。私も最初カインを見た時は驚きましたが、転生してるとすぐに知り得たので鍛え過ぎだと内心思っていました」

「そう。理由はわかったけど、名前も確認しないで不用心に近づいて魅了した事実は変わらないよ」

「そうですか。魔王は落ち着いてきてるんですよね？カインはどんな状態かによって、あの女は処罰ですか？」

　アベルとグレンは当たり前だと頷いた。

「それで、カインは何をしてるんですか？」

不快気に唇を拭い続けている様子にウィリアムは尋ねた。


理由をアベルから聞くと、ウィリアムは呆れた様に溜息吐き捨て。

「何を言ってるんです？貴方にとったらキスなんて挨拶ですよね？今世はともかく、前世を考えてから落ち込んでください」

「……前世？あー、そうだ。何となく思い出した」

「カイン？お前、前世で何してたんだよ？？」

「この２人なら伝えても引いたりしないから、言ってしまえばいいと思います」

カインは他人事だと思って好き勝手いうウィリアムに内心苛立ちを感じていた。

「前世だからな。特定の相手がいない時は男女問わずキスしてたんだ…」

「は？男女問わず？？」

「前世の話は過去として聞くけど。男女問わずってどういう事かな？」

グレンとアベルは驚き尋ね。

「どういう？言葉の通り男女問わずだが？手の甲のキスの方が珍しいからな？」

「確かに手の甲へのキスの方が珍しいですけど。普通は男女問わずキスなんてしません貴方だけです」

アベルとグレンは、ウィリアムが関係し知るカインの事について深く考える事を止めることにした。

「カイン、そんなに擦ると傷つくからやめようね？」

アベルはカインの手を軽く抑え注意をした。

「そうそう。気にすんなよ！何なら俺と口なおしにキスするか？なんてな」

グレンが笑いながら冗談を言ったのだが「する」と即答され、ウィリアムが呆れて見ていた。

「グレンは前にしたよね？今回は僕がしてあげるよ」

黙って見ていようとしていたウィリアムは思わず突っ込みをしてしまっていた。

「えっ？グレンはカインとキスしてたんですか？貴方達の関係がわからなくなってます」

「僕達の関係は普通に仲の良い友達で将来の側近候補でカインは義兄だよ」

「そうだな。アベルはキャシーの婚約者で義弟だな。グレンは義兄だ…グレンは他の女性にキスした私でもディアの婚約者でいいか？」

「俺が義兄の頂点！って、あの女の事は気にすんなって？ディアンナの事は好きなんだよな？」

これ以上の突っ込みをしても理解出来ないとウィリアムは判断し止めて、傍観していた。