蝉時雨が止むまでは

ロイス

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2 夏

蝉になりたい

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熱い?暑い?
漢字に書けばわかる。
でも元樹にはわからないよね…
ごめんね何もわかってあげれなくて

頃は7月中旬、梅雨も明けてカラッとした日が続いた。

最近の元樹の様子は見違えるように元気だった。もちろん呼吸器をつけていたが、

しっかりご飯を食べ、会話だってできた、
なによりも薬を受け入れ元樹自身に病気を治してやるという気を感じた。


でもなんでなんだろう。
神は何者だ?なぜ8歳の少年にこんなにも試練を与えているんだ?誰かをかばっているのか?教えください神様、いるならば…

8月に入って蝉が鳴きだした頃、
つい2週間前までは元気だった元樹の様子が一変し、先生からもこの夏が勝負と言われた。
今までもこの夏、冬、なんてことは言われてきたけど今回はという顔をしている。

菌に抗するために一か八かの勝負に出たのに今回は合併症にさらに肺にも負担がかかっていて手術をするだけの体力もないとの見方で親としてはどうにかして下さいと頭を下げるだけでもちろん先生の様子を見ている限り手術ができないことも知っているし、薬なんかも試せないのは知っている。

元樹になんて伝えたら正解なんだろう。

どうしてこんな状況なのに大人って嘘つこうとか、元樹にいいようにとか考えるんだろう。あんなにも頑張って打ちたくもない薬を受け入れ病気と闘っていたのに…


むしゃくしゃして他人に当たった。
とにかく泣いた。
なんでだろうって考えた。
自己嫌悪に陥った。

でもでも元樹を見るとなぜか勇気付けられる。母ちゃん母ちゃんって言ってくれる。呼吸器越しにかすれがすれにして。
ごめんねこんな母親でって何回言ったか、


結局元樹には新たな合併症は言わないことにした。手術ができないのに頑張ろうとは言えなかったからだ。


8月の最初の週、甲子園
泥だらけになって1つの白球を追って
あんな青春を元樹にもさせてやりたい。
高校球児のハツラツとしたプレーを見るとなんだか胸が苦しくなる。
元樹は野球の試合を観るのが大好きだった。
かっとばせ~ってテレビ越しに言ってたよね。去年の夏なんかは宿題せずに高校野球を見ていたね。ごめんね怒ったりして。
元樹は優しく母ちゃんは悪くないよって…
また励まされちゃった。


ねぇねぇ母ちゃん、おれ来月9歳だよ、
今年の夏は蝉いっぱい捕まえるぞ~


これが最期に聞いた元樹の言葉だった。
いや、、、


8月10日14時雲ひとつない晴天の日元樹は息を引き取った。
突然すぎた。もちろんいつ息を引き取るかはわからないと言ってたけどとにかく叫び泣きじゃくった。夫と2人、先生を呼んだ時には部屋で2人ポツンといたって先生に聞いた。
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