乙女ゲーム世界で少女は大人になります

薄影メガネ

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第四章~大人扱編~

089 例の物

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「全部持って行かれた全部持って行かれた全部持……」
「あのぉ~お姉さん?」
「フェルディナンのエッチな本やっぱり全部みておくべきだったかな?」
「お姉さんの一番気にしているところはそこなんですね」

 ベッドのシーツを引っ張り上げてギュウッと手に握り締めながら、フェルディナンに本を全部持って行かれたショックに一人ブツブツ同じ事を繰り返しつぶやいていたらククルに頭をでられた。中身は200歳のおじいちゃんとはいえ、外見年齢的には5、6歳くらいに見えるこんなに小さな子供に心配されてしまった。

「ビックリさせてごめんねククルちゃん。それにしてもフェルディナン全然わたしのこと信用してなかったね……」
「ですね」
「鎖も二つに増えちゃったし……う~フェルディナン酷いっ! ――って、わきゃあっ!?」

 新たに加わった手枷が付いた方の手で強くベッドを叩いたら鎖が跳ね返ってきて危うく怪我するところだった。まあ少しばかりおでこをかすってその部分がじんじんするが多分たいしたことはない。

「大丈夫ですか!?」
「ふわ~んフェルディナンのバカァッ!」

 こんな自業自得で怪我したらそれこそフェルディナンに馬鹿にされる。思わず八つ当たりしている私の背中をさすりながらククルが笑いながら話し掛けてきた。

「王様怒ってましたからね~」
「ククルちゃん……もういいわ! フェルディナンがわたしのこと信用してないってよく分かったもの! と、いうことでククルちゃん以前から頼んでいた例の物・・・ちょ~だい!」
「お姉さん全くりてないんですね」

 ククルが感心したように私を見つめている。

「あっ、でも、いきなりだったし持ってきてないよね……?」
「大丈夫ですよ。王様に呼ばれた時に多分必要になるんじゃないかと思って持ってきました~」
「さすがククルちゃん!」
「はい。僕、お姉さんの考えていることなら何となく分かります」

 単純だと言われている気がしないでもないが今は気にしないことにする。

「絶対に諦めてなんかやらないんだから~っ!」
「……王様がお姉さんに手枷を追加した理由分かった気がします」
「他の人にそう言われたらあきれられているって感じがするけど、何故だかククルちゃんの場合本気でめてる気がする」
「はい。あんなに大慌てで大変そうで余裕のない王様が見れるなんて、やっぱりお姉さんすごいですよね」
「ククルちゃん!」

 何時いつも唯一の味方でいてくれる小さな身体をムギュッと抱き寄せながら私は例の物をククルから受け取った。

「これでこんな鎖なんか簡単に引きちぎってフェルディナンに追いつけるわ!」
「お姉さん頑張って下さい~」
 
 ふふんっと得意気に鼻を鳴らし、気合いを入れて私は例の物を口へと運んだ。



 ――それから数分後、

「お、おかしいにゃん……どうして引きちぎれないにゃ?」
「それはきっとお姉さんが女性だからではないでしょうか?」
「でもにゃっでもにゃっ、ククルにゃんに複製してもらっにゃ獣酢じゅうすを飲んで獣人化すれば力もアップするにゃよ?」
「あっ! もしかしたらですが。……お姉さんごめんなさい。この獣酢じゅうすは急ぎで生成したので正規の物に比べると少し質が落ちるのかもしれません」
「にゃんとっ!?」
 
 私がククルにお願いした例の物とは獣酢じゅうすだったのだが。まさか性能が落ちるとはとんだ見当違いだった。
 へにゃへにゃとお尻から生えた真っ白な尻尾から力が抜けていく。頭の猫耳までへにゃんとしてすっかり元気がなくなっていく私の様子に、ククルが元気づけようと背中の羽を使ってパタパタと風を送ってくれる。が、今回ばかりは落ち込みが半端はんぱない。

「それにゃぁわにゃし、このへにゃから出られないニャぁ?」
「はい、そういうことになります」

 ――部屋から出られない。
 復讐よろしくククルからもらった例の物を勢いよく飲み干したまではよかった。獣酢じゅうすを飲んで獣人化してそれから付けられた手枷と足枷の鎖を引きちぎり、性能が増した鼻を使ってフェルディナンの匂いを辿たどり追いつくつもりでいたのに。まさかしょっぱなからつまずくとは思ってもいなかった。

「うにゃ……それにゃらせめてフェルディニャンにバレるまえに元の姿に戻るにゃ……」

 何もなかったことにしようと思って振り返ると、困ったように顔をくもらせているククルと目があった。

「ククルにゃん? どうしたにゃ?」
「本来数ヶ月かかるものを数週間で作ったので質が落ちるとはいえ、獣酢じゅうすの方は出来ているのですが……」
「にゃっ?」
「元に戻る方の薬、そのつまりマタタビの方はまだ生成出来ていないんです」
「にゃあっ!?」
「ちなみにマタタビが育つまであと数日かかります」
  
 ごめんなさいと肩を落としたククルの隣で、思わず私はビビッと尻尾の毛を逆立ててしまった。



*******



「おこにゃれるおこにゃれるおこにゃれるおこにゃれるおこにゃれる……」
「あのぉ~お姉さん?」

 先程までの威勢は何処どこへ行ったのか。私は毛布を頭からかぶってはみ出した真っ白な尻尾そっちのけにフェルディナンに怒られることを恐れてにゃあにゃあ鳴いていた。
 
「そんなに王様のこと怖いんですか?」
「こういうときにょフェルディニャンはようしゃないにゃぁ~」
 
 ぷるぷる震えて毛布の中に隠れていること数時間が経過。そろそろ夕刻時にさしかかりフェルディナン達が帰ってきてもおかしくない時間帯だ。そうしてすべもなく毛布にくるまっていたらついに扉が開く音がした。

「ふにゃあっ!?」

 情けなくも間抜けな声を上げてしまった。ビビッて全身の毛が逆立ってしまう。
 そしてツカツカとこちらにやって来る足音がすぐ横でピタリと止まった時には、正直なところ緊張で心臓が止まるかと思った。

「本当にろくなことしなかったんだな……」
「にゃんっ!」

 フェルディナンはそう言うなり緊張にピーンと直立して毛布からはみ出た私の尻尾をつかんだ。もちろん未だに尻尾はビビッて毛が逆立ったままだ。それをなだめるようにふにふにと握られてちょっとだけ緊張がやわらぐ。

「すまないが、席を外してくれないか?」
「はい。あの、王様? あまり強くお姉さんをしからないで下さいね? 先ほどからずっと王様を恐がって毛布の中に引きこもったままなんです。お腹の子供にもよくありませんし……」
「どうやらそのようだな」

 ベッドがきしんでフェルディナンが隣に座る気配がした。

「大丈夫だ。彼女を叱りつけたりはしない。安心して任せてくれればいい」
「だそうですよ、お姉さん。ですから安心して出てきて大丈夫ですよ? あとは王様とちゃんと話し合って仲直りして下さいね?」

 ククルはそう言って最後にポンポンと毛布越しに私の背中を叩くとフェルディナンの言う通りに部屋を出ていってしまった。

「……月瑠?」

 名前を呼ばれて私は思わず反応してしまった。フェルディナンにつかまれている尻尾の先を使ってご機嫌をうかがうように彼の腕にクルリンと巻いてみる。そうしたらそこに優しくキスされて。大丈夫かな? と、そろそろと毛布のはしから顔を少しだけ出してみたら、フェルディナンは想像以上に優しい表情を浮かべて静かに私の隣に座っていた。

「やっと出てきたな」
「フェルディニャンおこってにゃ?」
「怒ってない。叱ったりしないからそんなに怖がらないでくれないか?」
「でもにゃ、わにゃし最近フェルディニャンにおこられることしかしてないにゃ……」

 そう言ってまた毛布の中に引っ込もうとしたら毛布ごと優しく抱き上げられた。

「そうだな。君は子を宿してから随分ずいぶん悪戯いたずらが多くなった」
「ごめんにゃさぃ……」
「だがそれが本当の君なんだろう?」
「にゃ?」
「この世界に来たばかりの頃から最近までずっと、君が人との距離を取るようにしていたのは知っている。結婚した後も何とかして俺のそばから時折ときおり離れようとしていたことも」
 
 確かにフェルディナンの言うとおりだった。姉と一緒に元の世界に帰ることがこの世界にきた目的だと言えず。その大切な姉の消息しょうそくつかめない。分からないことだらけでづまっていて、それなのにフェルディナンと結婚してしまった。
 どうすれば良いのか分からなくて複雑なことが多すぎて。フェルディナンを愛しているのに本当の自分を出せずにいた。それが辛くて近くにいられない時もあった。けれどそういったモヤモヤも子供が出来たことでようやく吹っ切れた気がする。もうどんな理由があろうともフェルディナンの傍にいてもいいんだと思えるようになった。単に傍にいたいだけじゃなくハッキリと一緒にいなければいけない子供という理由が出来て。それでようやく私は安心することが出来たのかもしれない。

「そして子供が出来てから君が何時いつになく俺に甘えたがるようになったことも知っている」
 
 色んなしがらみから解放されたことでもっと甘えたくなった。フェルディナンに構って欲しくて子供みたいに沢山怒らせて沢山悪戯いたずらしていたことも、そんな知られたくない弱い部分もどうやらフェルディナンにはバレバレのようだ。
 バレてたのね。と、また耳と尻尾をへにゃんとさせて反省するようにうつむいていたらキュッと抱きしめられた。

「わだかまりが消えてようやく本来の君に会えた。だから多少の悪戯には目をつむることにする」
「フェルディニャン……やっぱりあまいにゃね」

 私はキラーンと桜色の瞳を光らせてフェルディナンの耳にカプッと噛みついた。刺激に弱いフェルディナンの耳にチュウチュウ吸い付いて甘噛みしながらじゃれついてみると、フェルディナンはくすぐったそうに小さく身動みじろぎした。また小さな悪戯を仕掛けられたフェルディナンが今度こそ引き剥がしに掛かるかと思っていたら逆に優しく背中をでられてしまう。

「にゃ、にゃんでにゃ?」

 あんまりフェルディナンが優しい事を言うからちょっとは怒られた方がいいかもしれないとわざと仕掛けたのに、それすらもフェルディナンは許してしまった。驚きに思わず耳から唇を離してまじまじとフェルディナンの顔を見ていたら、鼻先にチュッといとおしむようにキスされてそれ以上何も言えなくなる。

「叱らないと約束したからな」
「……フェルディニャンはあますぎるのにゃ」

 だからって好きにさせて言い理由にはならないのに。まったくどれだけ私に甘いんだこの人は。
 そうあきれたように見つめ返しても今度は唇を重ねられてもっと優しく触れられてしまうから。最終的に困ったのはこちらの方だった。

「そうだな。俺は君には甘い」
「……どころでにゃ、いにゃにゃでどこいってたにゃ?」

 これだけ甘いなら不意打ふいうちで今まで何処どこに行っていたのか聞いたらポロッと言っちゃうかも? と思ったのにそこは綺麗に無視された。

「そういえば君は俺がいない間に色々とやらかしていたようだが。俺が帰るまでこの姿でいたということは戻れないんだろう?」
  
 ゆっくりと毛布をまくられて獣人化した身体を改めて見られてしまう。真っ白な尻尾と耳、そして俊敏しゅんびんな猫の動きを可能とする柔らかく鍛え上げられた質の良い筋肉の付いたしなやかな身体。桜色に変化した瞳は虹彩こうさいが大きく白目の部分が少ない。姿形はちゃんと白い猫の獣人そのものに変化している。
 それなのに獣酢じゅうすを急ぎで作ってもらったせいで力が半端にしか出せないとは。思い出しただけで悔し過ぎて涙ぐんでしまう。

「うにゃぁ~フェルディニャンもうイヤにゃなのにゃ~どうしてうまくいかにゃいのにゃ~」

 解読不能な猫語でうにゃうにゃ言って泣きだした私の背中をフェルディナンがよしよしと慣れた手付きででながらなだめている。

「こちらとしてはそうそう君のやっていることが上手くいかれても困るんだが……」
「もうイヤだもにゃ~」
「すまないが段々君の話している猫語を理解出来なくなってきた」
「にゃんっ?」
「まあいい……とりあえず少し落ち着きなさい。それとその瓶を離しなさい」

 獣人化して失敗したと分かってからずっと私は獣酢じゅうすの入っていた瓶を握り締めていた。とくにその瓶に意味はないのだがあまりのショックに思わず引っ掴んだまま毛布の中に引きこもっていたことに言われてようやく気が付いた。

「やにゃ」

 瓶から手を離したらどうなるというものでもないのだが、何となく反射的に反抗してしまった。泣くのをピタリと止めて大事な物でも抱えるようにヒシッと瓶を懐深ふところふかくにしまい込む。

「まったく大人になったと思ったら君はぐ子供に戻るんだな」
「フェルディニャンはおとにゃだもにゃ~」
「何だその皮肉ひにくった言い方は」
「わにゃしはこどもにゃもん。フェルディニャンのいってることにゃんてきかにゃっ!」

 やっぱり何も出来なかった悔しさがひょっこりと顔を出す。とんだ八つ当たりだとは分かっているものの。むぅっとほっぺたを膨らませて言うことなんか聞いてやるものかとねてみる。が、フェルディナンにはあまり効果がないようだ。私を抱えたままベッドに腰を下ろし直して横になりながらゆったりとくつろぐ体勢に入ってしまった。

「……それにしても随分ずいぶんと大きな子供だな」
「ふ――っ!」
威嚇いかくをするな。それと何をそんなに苛立いらだっているんだ?」 
「フェルディニャンがわにゃしをおいていっちゃったからにゃっ!」
「やはり問題がそこに戻るのか」
「もうおいてかれるのはいやにゃのにゃ。こんどにゃいっしょにいくにゃ~」

 必死にボロボロと涙をこぼしてうったえると途端フェルディナンは弱腰になった。

「分かったもう置いていかない。君を置いていくのは今回だけだ今度からは一緒に連れて行く。だから泣かないでくれ」
「あとにゃ? このくにゃりはずしにゃ?」

 手枷てかせ足枷あしかせを外して欲しいとそれにつらなる鎖を引っ張る仕草しぐさを見せたら予想外の回答が返ってきた。

「それにしても獣人化した君にそれが付いていると何というか……」
「にゃ?」
「飼い猫に見える。それも血統書付きの毛並みが良くて気性の荒い雌猫か」

 その場合、ご主人様はフェルディナンということになるのだろうか? 
 そんなふうにちょっとだけズレたことを考えてジーッと見つめていたら猫耳をでられた。思わずうっとりされるがままに撫でられていたら次にとんでもないことを言われてしまった。

「ついでに首輪も付けてみるか? 逃亡してもすぐに分かるように鈴を付けてみるのも良いかもな」
「ふみゃあっ!?」
 
 ベッドから跳ね起きて逃げようとしたところで鎖を引っ張られてまた腕の中に戻されてしまう。外すどころか装飾品の追加とは。逃げ出したくもなるというものだ。

「逃げるな」
「だってにゃだってにゃ。いにゃのフェルディニャンがわるいにゃよ?」

 一緒にベッドで横になりながらクスンと涙ぐんでフェルディナンの胸元でにゃあにゃあ泣きながら嫌々を繰り返していたら前髪が少しだけ乱れてしまった。

「月瑠、あまり暴れるな」

 そのほつれた前髪をくって優しい仕草しぐさで直しているフェルディナンの手がピタリと止まった。

「これはどうしたんだ?」
「にゃ?」

 ちょっとばかり目を丸くして紫混じった青い瞳をしばたたかせながらフェルディナンがたずねてくる。そのフェルディナンが凝視ぎょうししている場所は確か……

「あにゃっ……そ、それはにゃ……ないしょにゃの」

 手枷をベッドに叩きつけたらその反動で返ってきた鎖にかすりました何て間抜けなことは言いたくない。

「内緒? 赤くなっているが……また何かしたのか?」
「……ぶ、ぶつけたのにゃ」
何処どこに? 君の行動出来る範囲内でぶつけて怪我をするような場所なんて……」

 周りを見渡すフェルディナンの視線が鎖で止まった。

「これか……」
「き、きのせいにゃのにゃ」
「どうやら気のせいではないようだな」

 嘘を付くなととがめるような目線向けられて、それでも私が誤魔化し笑いを浮かべていたらようやくフェルディナンが折れた。

「分かった。後で鎖は外す。だから今は大人しく一緒に寝てくれないか?」
「もしにゃして、フェルディニャンねむいにゃ?」
「ああ、今日は少しばかり疲れた」

 まさか手枷の鎖で怪我をされるとは思ってもいなかったようだ。そんなもので怪我をされてはたまらないとフェルディナンはさっさと外す事に決めたらしい。そうして怒った様に眉根まゆねしわを寄せながら赤くなったおでこにチュッと唇を落とされるとじんじんしていた痛みが消えた。

「あにゃ? にゃおった?」

 どうやら癒しの魔力を使って治してくれたらしい。触ってみたところでどうなったのかはよく分からないけれど、とりあえずお礼を言うとフェルディナンは返事の代わりに私を抱く腕に力を入れた。

「あっあとにゃ? もう一つおねにゃいがあるにゃ」

 どうしてもお願いを聞いてもらいたくて両手を祈るように組んで上目遣いにフェルディナンを見上げると、逆にこちらが溶けてしまうんじゃないかと思うくらいにとろけるような甘い微笑みを返された。ゆっくりと私の頬をなぞるように撫でながら愛しい視線を注がれる。

「何だ?」
結良ゆらにゃんの日記と、フェルディニャンの研究本と、フェルディニャンのエッチニャ本、返してほしいにゃっ!」
「それは断る」

 にっこり笑って断られた。それも即断即決で。まるで隙がない。

「あっあのにゃどの本がだめにゃのにゃ?」
「全部だな」
「はにゃあっ!? にゃ、にゃあせめてフェルディニャンのエッチニャ本だけでも返してほしいにゃ~」
「……どうしてよりにもよってそれを一番欲しがるんだ? 君の一番重要視している本は俺のそういったたぐいの本なのか?」

 違うだろう? とフェルディナンが眠そうな顔で問いただしてくる。

「あのにゃ、じゃあいっしょによむにゃ!」
「君とそういった類いの本を一緒に読むのか?」

 それは遠慮したい……と、流石さすがにフェルディナンが引いているのが分かる。

「にゃぁどうすれにゃかえしてくれるにゃ?」
「返すも何もあれは元々君の本じゃない」
「ふ~ん、にゃらいいにゃよ? またフェルディニャンがいにゃい時に物色ぶっしょくするにゃ!」
「それは止めてくれ。というか止めなさい」
「やにゃ」
「まったく聞き分けのない」
「わにゃしいいこにゃないもにゃ。こどもにゃから言うことなんてきかにゃっ!」
「すまないが、君の言っている事がまた分からなくなってきた」
「にゃ――っ!」

 良い子じゃないし、子供だから言う事なんて聞かない。そう言ったのにフェルディナンは全く相手にもしてくれない。

「もういいからそろそろ寝るぞ?」
「いやにゃもにゃ本かえすにゃっ!」
「それは断る」
「フェルディニャン!」
「悪いが君の言っている事が理解出来ない」
「そんなのうそにゃ~っ!」
「良い子だから寝なさい。子供はもう寝る時間帯だぞ?」
「こ、こどもにゃないにゃ」
「大人になるのか? なら対応は変わってくるが……」

 不味いこのままだと何かされる。とうか大人の対応とやらをされてしまう。

「……わにゃしこどもにゃ」
「そうか、なら大人しく寝るんだな」
「にゃん……」

 口で言い負かされてしまった。それも最終的には眠気に負けたフェルディナンに力尽くで抱き締められてあやされて強制的に寝かしつけられるとは。
 ようやく大人になれたと思っていた矢先に子供だと主張する羽目はめになるとは思ってもいなかった。
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