27 / 215
第1章
26. 婚約
しおりを挟む
その日の夕食時、僕は今日のことを家族に報告をした。心なしか父様もディル兄様も満足気な表情である。
するとロザリーナ姉様から「実は私も報告があります。」と声がかかる。
「私、この度アミリス・セイボリー公爵様と婚約致しました。」
「(えーっ!!)」
僕は驚いて声が出なかったが、兄様2人を見ると大して驚いてはいなかった。
「(なんで驚かないの!?父様と母様は知ってたとしても2人共、冷静すぎない!?)」
と僕が思っていると、タジェット兄様が「おめでとう。やっとか…。」とポツリと呟いた。
ディル兄様も「ロザリーナ姉様、最後まで渋ってたもんね。」と言った。
「えっ?皆知ってたの?」
知らなかったのは僕だけみたいだ。
「実は5年前からセイボリー公爵との婚約話は出ていたんだ。でもロザが魔術学校に行きたいと言って延期になり、今に至るというわけだ。幸いセイボリー公爵は優しい方だからお互い納得してから婚約しようというものだったから良かったけどね。」
と父様が説明してくれた。
「そうなの。やっと今年で魔術学校も卒業だし、いい機会だと思って。本当は学校の教諭もいいかなって思ったんだけど流石にセイボリー様に申し訳なくって。ただでさえ、ワガママを言って魔術学校に行かせてもらったから。」
と姉様は苦笑いをしている。
「そうなんだ。姉様、おめでとう!セイボリー公爵様ってとてもお優しい方なんだね。いつか会ってみたいな。」
「近々、挨拶に来るからフェルも一緒に挨拶しましょ。フェル以外は皆会ったことあるの。」
「そうなの?」
と周りを見ると皆が頷き、ディル兄様が
「魔術学校の先生をしてるよ。5年生の担任をしてる。」
と教えてくれた。
それから姉様に挨拶に来る日がわかったら教えてもらえるように頼んで部屋へと戻った。
僕は明日持って行く宿題と持ち物を準備する。
「(最初から文字が読めるってありがたいことだなー。そのおかげで知識としてはたくさん吸収できたし。でも、逆に書くのは凄い難しかった…!エリーのスパルタ教育がなかったら今頃ひどいことになってたかも…。普通に見たらアラビア語?みたいな感じにしか思えなかったし。今日の宿題はもう終わったから…ちょっと進めとこ。BLウォッチングして出来ない時とかあるかもしれないしね!あっ!そうだ!ディル兄様にもお礼言っておかなきゃ。昨日心配させちゃったし…ついでにタジェット兄様に手紙を貰いに行こーと。)」
早速僕は、ディル兄様の部屋へと向かった。コンコンッと部屋の扉をノックする。
「ディル兄様~。フェルだけど今いい?」と外から声をかける。
「入っていいよ。」
と遠くから声が聞こえた。
「(ん?)」と思ったものの中に入るとディル兄様はおらず、入浴中みたいだった。
浴室から「もう出るからソファに座って待ってて。」と言われ、大人しく座る。
僕はタジェット兄様に比べ、あまりディル兄様の部屋には入ったことがない。元々、無口で必要最低限のことしか言わないディル兄様はタジェット兄様と比べると自然と距離が出来てしまっていた。
部屋の中を観察すると、とてもシンプルで机と本棚、ソファとチェスト、ベッド、家具も必要最低限。ただ、観葉植物や花などがとても多い。やはり風の能力者だからか自然のものが好きなんだろうか。
そんなことを考えているとガチャッと浴室の扉が開いた。そこにはバスローブ姿で髪の毛をタオルで乾かしているディル兄様がいた。
「フェル、ごめんね。こんな姿で。」
と謝られたが、タイミングが悪いのはこちらの方。
「ううん!僕もせっかくゆっくりしてたのに急かしてゴメンね。」
と謝った。
「(湯上がりとかディル兄様、色っぽいな…。バスローブから少し見える胸元とか火照った顔とか…!どっちかっていうとカッコいいのに今は色気があるよ~!)」
と僕は照れつつもガン見した。
「珍しいね、フェルが部屋に来るなんて。どうしたの?」
ディル兄様はタオルで頭をガシガシ擦りながら近付いてくる。
「あっ…えっと、昨日のことで心配かけたからお礼を言いたくって。」
「そんなこといいのに。私はフェルが困ってたら力になってあげたいんだから。それに私は話を聞いただけだよ。」
と兄様は僕が座っている隣に腰掛け、頭を撫でてくれる。
「ううん!それでも僕がお礼を言いたかったんだ。」
「そっか…それなら、どういたしまして、だね。上手く断れたようで良かったよ。」
「(なんだかディル兄様、今日は饒舌だな…?どうしたんだろ?)
…ディル兄様、なんか今日は口数多いね?」
僕がそう言うと「昔と違って本当はもっと喋るよ。魔術学校に行きだして、だいぶ変わったと思う。家で無口なのはフェルと喋るとタジェット兄様に睨まれるからね、黙ってるんだ。だからこうやって2人きりのときは素が出せる。驚いた?」と兄様は戯けた顔して笑った。
「うん、ちょっと。でも僕は今の兄様の方が喋りやすくて好きだな、前の兄様も好きだけど今の方が雰囲気が柔らかいから…。」
そう素直な気持ちを言うと、兄様は僕を抱き締めて
「ありがとう。」と3度目のデコチューをした。
僕は途端に恥ずかしくなり「ディル兄様!僕、これ恥ずかしい!」と文句を言う。
「えー。こんなの全然。額で我慢してる私を褒めて欲しいくらいだよ。フェルがもう少し大きくなったら次に進もうね。」
と意味深な発言をする。
「(今までの兄様じゃない!なんか手慣れた雰囲気が出てる~!いつの間にこんな小悪魔みたいな性格になっちゃったんだ~!?)」
僕は動揺していてディル兄様の
「タジェット兄様には負けないよ。」
とポツリと言った発言を聞き逃していた。
するとロザリーナ姉様から「実は私も報告があります。」と声がかかる。
「私、この度アミリス・セイボリー公爵様と婚約致しました。」
「(えーっ!!)」
僕は驚いて声が出なかったが、兄様2人を見ると大して驚いてはいなかった。
「(なんで驚かないの!?父様と母様は知ってたとしても2人共、冷静すぎない!?)」
と僕が思っていると、タジェット兄様が「おめでとう。やっとか…。」とポツリと呟いた。
ディル兄様も「ロザリーナ姉様、最後まで渋ってたもんね。」と言った。
「えっ?皆知ってたの?」
知らなかったのは僕だけみたいだ。
「実は5年前からセイボリー公爵との婚約話は出ていたんだ。でもロザが魔術学校に行きたいと言って延期になり、今に至るというわけだ。幸いセイボリー公爵は優しい方だからお互い納得してから婚約しようというものだったから良かったけどね。」
と父様が説明してくれた。
「そうなの。やっと今年で魔術学校も卒業だし、いい機会だと思って。本当は学校の教諭もいいかなって思ったんだけど流石にセイボリー様に申し訳なくって。ただでさえ、ワガママを言って魔術学校に行かせてもらったから。」
と姉様は苦笑いをしている。
「そうなんだ。姉様、おめでとう!セイボリー公爵様ってとてもお優しい方なんだね。いつか会ってみたいな。」
「近々、挨拶に来るからフェルも一緒に挨拶しましょ。フェル以外は皆会ったことあるの。」
「そうなの?」
と周りを見ると皆が頷き、ディル兄様が
「魔術学校の先生をしてるよ。5年生の担任をしてる。」
と教えてくれた。
それから姉様に挨拶に来る日がわかったら教えてもらえるように頼んで部屋へと戻った。
僕は明日持って行く宿題と持ち物を準備する。
「(最初から文字が読めるってありがたいことだなー。そのおかげで知識としてはたくさん吸収できたし。でも、逆に書くのは凄い難しかった…!エリーのスパルタ教育がなかったら今頃ひどいことになってたかも…。普通に見たらアラビア語?みたいな感じにしか思えなかったし。今日の宿題はもう終わったから…ちょっと進めとこ。BLウォッチングして出来ない時とかあるかもしれないしね!あっ!そうだ!ディル兄様にもお礼言っておかなきゃ。昨日心配させちゃったし…ついでにタジェット兄様に手紙を貰いに行こーと。)」
早速僕は、ディル兄様の部屋へと向かった。コンコンッと部屋の扉をノックする。
「ディル兄様~。フェルだけど今いい?」と外から声をかける。
「入っていいよ。」
と遠くから声が聞こえた。
「(ん?)」と思ったものの中に入るとディル兄様はおらず、入浴中みたいだった。
浴室から「もう出るからソファに座って待ってて。」と言われ、大人しく座る。
僕はタジェット兄様に比べ、あまりディル兄様の部屋には入ったことがない。元々、無口で必要最低限のことしか言わないディル兄様はタジェット兄様と比べると自然と距離が出来てしまっていた。
部屋の中を観察すると、とてもシンプルで机と本棚、ソファとチェスト、ベッド、家具も必要最低限。ただ、観葉植物や花などがとても多い。やはり風の能力者だからか自然のものが好きなんだろうか。
そんなことを考えているとガチャッと浴室の扉が開いた。そこにはバスローブ姿で髪の毛をタオルで乾かしているディル兄様がいた。
「フェル、ごめんね。こんな姿で。」
と謝られたが、タイミングが悪いのはこちらの方。
「ううん!僕もせっかくゆっくりしてたのに急かしてゴメンね。」
と謝った。
「(湯上がりとかディル兄様、色っぽいな…。バスローブから少し見える胸元とか火照った顔とか…!どっちかっていうとカッコいいのに今は色気があるよ~!)」
と僕は照れつつもガン見した。
「珍しいね、フェルが部屋に来るなんて。どうしたの?」
ディル兄様はタオルで頭をガシガシ擦りながら近付いてくる。
「あっ…えっと、昨日のことで心配かけたからお礼を言いたくって。」
「そんなこといいのに。私はフェルが困ってたら力になってあげたいんだから。それに私は話を聞いただけだよ。」
と兄様は僕が座っている隣に腰掛け、頭を撫でてくれる。
「ううん!それでも僕がお礼を言いたかったんだ。」
「そっか…それなら、どういたしまして、だね。上手く断れたようで良かったよ。」
「(なんだかディル兄様、今日は饒舌だな…?どうしたんだろ?)
…ディル兄様、なんか今日は口数多いね?」
僕がそう言うと「昔と違って本当はもっと喋るよ。魔術学校に行きだして、だいぶ変わったと思う。家で無口なのはフェルと喋るとタジェット兄様に睨まれるからね、黙ってるんだ。だからこうやって2人きりのときは素が出せる。驚いた?」と兄様は戯けた顔して笑った。
「うん、ちょっと。でも僕は今の兄様の方が喋りやすくて好きだな、前の兄様も好きだけど今の方が雰囲気が柔らかいから…。」
そう素直な気持ちを言うと、兄様は僕を抱き締めて
「ありがとう。」と3度目のデコチューをした。
僕は途端に恥ずかしくなり「ディル兄様!僕、これ恥ずかしい!」と文句を言う。
「えー。こんなの全然。額で我慢してる私を褒めて欲しいくらいだよ。フェルがもう少し大きくなったら次に進もうね。」
と意味深な発言をする。
「(今までの兄様じゃない!なんか手慣れた雰囲気が出てる~!いつの間にこんな小悪魔みたいな性格になっちゃったんだ~!?)」
僕は動揺していてディル兄様の
「タジェット兄様には負けないよ。」
とポツリと言った発言を聞き逃していた。
92
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる