腐男子は神様に願望を叶えてもらいました

ミイ

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第1章

26. 婚約

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その日の夕食時、僕は今日のことを家族に報告をした。心なしか父様もディル兄様も満足気な表情である。

するとロザリーナ姉様から「実は私も報告があります。」と声がかかる。

「私、この度アミリス・セイボリー公爵様と婚約致しました。」

「(えーっ!!)」

僕は驚いて声が出なかったが、兄様2人を見ると大して驚いてはいなかった。

「(なんで驚かないの!?父様と母様は知ってたとしても2人共、冷静すぎない!?)」

と僕が思っていると、タジェット兄様が「おめでとう。やっとか…。」とポツリと呟いた。

ディル兄様も「ロザリーナ姉様、最後まで渋ってたもんね。」と言った。

「えっ?皆知ってたの?」 

知らなかったのは僕だけみたいだ。

「実は5年前からセイボリー公爵との婚約話は出ていたんだ。でもロザが魔術学校に行きたいと言って延期になり、今に至るというわけだ。幸いセイボリー公爵は優しい方だからお互い納得してから婚約しようというものだったから良かったけどね。」

と父様が説明してくれた。

「そうなの。やっと今年で魔術学校も卒業だし、いい機会だと思って。本当は学校の教諭もいいかなって思ったんだけど流石にセイボリー様に申し訳なくって。ただでさえ、ワガママを言って魔術学校に行かせてもらったから。」

と姉様は苦笑いをしている。

「そうなんだ。姉様、おめでとう!セイボリー公爵様ってとてもお優しい方なんだね。いつか会ってみたいな。」

「近々、挨拶に来るからフェルも一緒に挨拶しましょ。フェル以外は皆会ったことあるの。」

「そうなの?」

と周りを見ると皆が頷き、ディル兄様が

「魔術学校の先生をしてるよ。5年生の担任をしてる。」

と教えてくれた。

それから姉様に挨拶に来る日がわかったら教えてもらえるように頼んで部屋へと戻った。





僕は明日持って行く宿題と持ち物を準備する。

「(最初から文字が読めるってありがたいことだなー。そのおかげで知識としてはたくさん吸収できたし。でも、逆に書くのは凄い難しかった…!エリーのスパルタ教育がなかったら今頃ひどいことになってたかも…。普通に見たらアラビア語?みたいな感じにしか思えなかったし。今日の宿題はもう終わったから…ちょっと進めとこ。BLウォッチングして出来ない時とかあるかもしれないしね!あっ!そうだ!ディル兄様にもお礼言っておかなきゃ。昨日心配させちゃったし…ついでにタジェット兄様に手紙を貰いに行こーと。)」

早速僕は、ディル兄様の部屋へと向かった。コンコンッと部屋の扉をノックする。

「ディル兄様~。フェルだけど今いい?」と外から声をかける。

「入っていいよ。」

と遠くから声が聞こえた。

「(ん?)」と思ったものの中に入るとディル兄様はおらず、入浴中みたいだった。

浴室から「もう出るからソファに座って待ってて。」と言われ、大人しく座る。

僕はタジェット兄様に比べ、あまりディル兄様の部屋には入ったことがない。元々、無口で必要最低限のことしか言わないディル兄様はタジェット兄様と比べると自然と距離が出来てしまっていた。

部屋の中を観察すると、とてもシンプルで机と本棚、ソファとチェスト、ベッド、家具も必要最低限。ただ、観葉植物や花などがとても多い。やはり風の能力者だからか自然のものが好きなんだろうか。

そんなことを考えているとガチャッと浴室の扉が開いた。そこにはバスローブ姿で髪の毛をタオルで乾かしているディル兄様がいた。

「フェル、ごめんね。こんな姿で。」

と謝られたが、タイミングが悪いのはこちらの方。

「ううん!僕もせっかくゆっくりしてたのに急かしてゴメンね。」

と謝った。

「(湯上がりとかディル兄様、色っぽいな…。バスローブから少し見える胸元とか火照った顔とか…!どっちかっていうとカッコいいのに今は色気があるよ~!)」

と僕は照れつつもガン見した。

「珍しいね、フェルが部屋に来るなんて。どうしたの?」

ディル兄様はタオルで頭をガシガシ擦りながら近付いてくる。

「あっ…えっと、昨日のことで心配かけたからお礼を言いたくって。」

「そんなこといいのに。私はフェルが困ってたら力になってあげたいんだから。それに私は話を聞いただけだよ。」

と兄様は僕が座っている隣に腰掛け、頭を撫でてくれる。

「ううん!それでも僕がお礼を言いたかったんだ。」

「そっか…それなら、どういたしまして、だね。上手く断れたようで良かったよ。」

「(なんだかディル兄様、今日は饒舌だな…?どうしたんだろ?)
…ディル兄様、なんか今日は口数多いね?」

僕がそう言うと「昔と違って本当はもっと喋るよ。魔術学校に行きだして、だいぶ変わったと思う。家で無口なのはフェルと喋るとタジェット兄様に睨まれるからね、黙ってるんだ。だからこうやって2人きりのときは素が出せる。驚いた?」と兄様は戯けた顔して笑った。

「うん、ちょっと。でも僕は今の兄様の方が喋りやすくて好きだな、前の兄様も好きだけど今の方が雰囲気が柔らかいから…。」

そう素直な気持ちを言うと、兄様は僕を抱き締めて
「ありがとう。」と3度目のデコチューをした。

僕は途端に恥ずかしくなり「ディル兄様!僕、これ恥ずかしい!」と文句を言う。

「えー。こんなの全然。額で我慢してる私を褒めて欲しいくらいだよ。フェルがもう少し大きくなったら次に進もうね。」

と意味深な発言をする。

「(今までの兄様じゃない!なんか手慣れた雰囲気が出てる~!いつの間にこんな小悪魔みたいな性格になっちゃったんだ~!?)」

僕は動揺していてディル兄様の

「タジェット兄様には負けないよ。」

とポツリと言った発言を聞き逃していた。
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