腐男子は神様に願望を叶えてもらいました

ミイ

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第1章

51. 危機

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それから僕はナルシスさんの状態を再確認した後、父様と一緒に各テントにいる重症患者の元に足を運んだ。

皆、光魔法を施された後だったのでだいぶ症状が落ち着いており、父様と共に僕は安堵する。





しかし、事が急変したのはその直後だった。

僕がいる避難場所の程近くで大きな爆発音と同時に魔獣の雄叫びが聞こえたかと思うと、魔獣がこちらへ向かって走ってくるのが見えた。それを目撃した父様と僕、その他数名の騎士は臨戦体制をとった。

「フェル、お前はこの周り一帯に防御壁を張れ!私はその間にアイツを食い止める。皆、行くぞ!」

父様はそう言うと数名の騎士を引き連れて魔獣のいる場所へと走り出した。

僕は学院の理事長室でやった通り、この辺一帯に防御壁を張り巡らせる。通常は自分の周りの数メートルの防御壁を張るのが精一杯だが、僕の魔力はチートによって無限なので防御壁を張ってもさほど魔力を消費せずに済む。

そして、僕は防御壁を張ったのを確認すると、そのままの状態で父様の元へと走り出した。

その時、後ろから

「フェン、待て!お前、何処に行く気だ!?まさか魔獣のところじゃないだろうな!?こんなこと言いたくないが、光魔法を使うお前が行っても足手纏いになるだけだぞ!お前はここにいろ!」

とライム君に止められる。

たしかに光魔法は攻撃型ではなく、どちらかというと防御型もしくはサポート型だ。先程のような防御壁を張ったり攻撃型の能力者の潜在能力を高めたり、治癒することに長けている。だからライム君が止めるのも無理はない。それに彼は僕が2つの能力持ちであることも知らないのだ。

僕は彼の言葉に2つの能力持ちであることを言うわけにはいかないため「僕なら大丈夫だから!」と答えることしか出来なかった。

それを聞いたライム君は眉間にシワを寄せて「なら、俺も行く!」と言って付いてこようとした。

僕はそれを必死に止めようとしたが「俺だって騎士の端くれだ。フェンが行くのに戦える俺が行かないのはおかしい!」と強く言われ、結局僕が折れることになった。




そして2人で父様達のいるところにかけつけると、ほとんど父様と魔獣が1対1で戦っている状態だった。他の騎士達は魔獣の攻撃を受け、瀕死ではないが立つこともままならない状態だった。

父様は元騎士なだけあって剣と魔法の両方を使い魔獣を押しているようだったが、この魔獣は剣や魔法の攻撃を受けても再生する能力を持っているようで父様との戦いも父様の魔力が切れてしまうと危ない状況だ。

僕は父様と魔獣の戦いを見ながら何処か弱点になりそうなところを探したが、どんな攻撃をしてもすぐに再生してしまう為なかなか見つからない。

僕がどうすればいいか焦っていると、

「フェン、アイツすぐ再生するんだったらどうにか再生する隙すら与えないくらい攻撃をして心臓を一突きしたらいいんじゃないか?」

ライム君がそう言った。

「(そうだ!その手があった!)」

僕は大声で「父様!魔獣を出来るだけ多く攻撃して!」と叫ぶ。

「(父様って呼んじゃったけど、この際だから仕方ない!またあとでライム君に説明しなくっちゃ…!)」

父様はこちらを見るとコクリと頷いて、剣を構えた。

僕はそれと同時に水魔法で作った氷の刃を構え、父様と同じタイミングで敵を攻撃するのを待つ。

父様が魔獣に向かって足を蹴り出し、高速で相手の身体の至る所を攻撃した。勿論その間も次々と傷は再生していく。

僕は魔獣が少なからず再生するのに時間がかかり、それに気を取られている間に心臓を狙う。

僕は後ろから魔獣の心臓目掛けて氷の刃を放った。

その瞬間、グサッ!と刺さったと同時に魔獣が雄叫びを上げながら倒れる………と思いきや、魔獣は最後の力を振り絞って口からファイアーボールのようなものを複数放った。

僕は自分の周りに防御壁を、父様はジャンプして攻撃を避けた。しかし、僕はすっかりライム君のことを忘れていた。魔獣が放ったファイアーボールの何個かがライム君の方に放たれてしまい、僕が「危ない!」とライム君を庇おうと身体を傾けた時、魔法が解けてしまった僕の腹部をファイアーボールが貫通する。

僕はそのまま、驚いた顔のライム君を見ながら気を失った。
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