52 / 215
第1章
51. 危機
しおりを挟む
それから僕はナルシスさんの状態を再確認した後、父様と一緒に各テントにいる重症患者の元に足を運んだ。
皆、光魔法を施された後だったのでだいぶ症状が落ち着いており、父様と共に僕は安堵する。
しかし、事が急変したのはその直後だった。
僕がいる避難場所の程近くで大きな爆発音と同時に魔獣の雄叫びが聞こえたかと思うと、魔獣がこちらへ向かって走ってくるのが見えた。それを目撃した父様と僕、その他数名の騎士は臨戦体制をとった。
「フェル、お前はこの周り一帯に防御壁を張れ!私はその間にアイツを食い止める。皆、行くぞ!」
父様はそう言うと数名の騎士を引き連れて魔獣のいる場所へと走り出した。
僕は学院の理事長室でやった通り、この辺一帯に防御壁を張り巡らせる。通常は自分の周りの数メートルの防御壁を張るのが精一杯だが、僕の魔力はチートによって無限なので防御壁を張ってもさほど魔力を消費せずに済む。
そして、僕は防御壁を張ったのを確認すると、そのままの状態で父様の元へと走り出した。
その時、後ろから
「フェン、待て!お前、何処に行く気だ!?まさか魔獣のところじゃないだろうな!?こんなこと言いたくないが、光魔法を使うお前が行っても足手纏いになるだけだぞ!お前はここにいろ!」
とライム君に止められる。
たしかに光魔法は攻撃型ではなく、どちらかというと防御型もしくはサポート型だ。先程のような防御壁を張ったり攻撃型の能力者の潜在能力を高めたり、治癒することに長けている。だからライム君が止めるのも無理はない。それに彼は僕が2つの能力持ちであることも知らないのだ。
僕は彼の言葉に2つの能力持ちであることを言うわけにはいかないため「僕なら大丈夫だから!」と答えることしか出来なかった。
それを聞いたライム君は眉間にシワを寄せて「なら、俺も行く!」と言って付いてこようとした。
僕はそれを必死に止めようとしたが「俺だって騎士の端くれだ。フェンが行くのに戦える俺が行かないのはおかしい!」と強く言われ、結局僕が折れることになった。
そして2人で父様達のいるところにかけつけると、ほとんど父様と魔獣が1対1で戦っている状態だった。他の騎士達は魔獣の攻撃を受け、瀕死ではないが立つこともままならない状態だった。
父様は元騎士なだけあって剣と魔法の両方を使い魔獣を押しているようだったが、この魔獣は剣や魔法の攻撃を受けても再生する能力を持っているようで父様との戦いも父様の魔力が切れてしまうと危ない状況だ。
僕は父様と魔獣の戦いを見ながら何処か弱点になりそうなところを探したが、どんな攻撃をしてもすぐに再生してしまう為なかなか見つからない。
僕がどうすればいいか焦っていると、
「フェン、アイツすぐ再生するんだったらどうにか再生する隙すら与えないくらい攻撃をして心臓を一突きしたらいいんじゃないか?」
ライム君がそう言った。
「(そうだ!その手があった!)」
僕は大声で「父様!魔獣を出来るだけ多く攻撃して!」と叫ぶ。
「(父様って呼んじゃったけど、この際だから仕方ない!またあとでライム君に説明しなくっちゃ…!)」
父様はこちらを見るとコクリと頷いて、剣を構えた。
僕はそれと同時に水魔法で作った氷の刃を構え、父様と同じタイミングで敵を攻撃するのを待つ。
父様が魔獣に向かって足を蹴り出し、高速で相手の身体の至る所を攻撃した。勿論その間も次々と傷は再生していく。
僕は魔獣が少なからず再生するのに時間がかかり、それに気を取られている間に心臓を狙う。
僕は後ろから魔獣の心臓目掛けて氷の刃を放った。
その瞬間、グサッ!と刺さったと同時に魔獣が雄叫びを上げながら倒れる………と思いきや、魔獣は最後の力を振り絞って口からファイアーボールのようなものを複数放った。
僕は自分の周りに防御壁を、父様はジャンプして攻撃を避けた。しかし、僕はすっかりライム君のことを忘れていた。魔獣が放ったファイアーボールの何個かがライム君の方に放たれてしまい、僕が「危ない!」とライム君を庇おうと身体を傾けた時、魔法が解けてしまった僕の腹部をファイアーボールが貫通する。
僕はそのまま、驚いた顔のライム君を見ながら気を失った。
皆、光魔法を施された後だったのでだいぶ症状が落ち着いており、父様と共に僕は安堵する。
しかし、事が急変したのはその直後だった。
僕がいる避難場所の程近くで大きな爆発音と同時に魔獣の雄叫びが聞こえたかと思うと、魔獣がこちらへ向かって走ってくるのが見えた。それを目撃した父様と僕、その他数名の騎士は臨戦体制をとった。
「フェル、お前はこの周り一帯に防御壁を張れ!私はその間にアイツを食い止める。皆、行くぞ!」
父様はそう言うと数名の騎士を引き連れて魔獣のいる場所へと走り出した。
僕は学院の理事長室でやった通り、この辺一帯に防御壁を張り巡らせる。通常は自分の周りの数メートルの防御壁を張るのが精一杯だが、僕の魔力はチートによって無限なので防御壁を張ってもさほど魔力を消費せずに済む。
そして、僕は防御壁を張ったのを確認すると、そのままの状態で父様の元へと走り出した。
その時、後ろから
「フェン、待て!お前、何処に行く気だ!?まさか魔獣のところじゃないだろうな!?こんなこと言いたくないが、光魔法を使うお前が行っても足手纏いになるだけだぞ!お前はここにいろ!」
とライム君に止められる。
たしかに光魔法は攻撃型ではなく、どちらかというと防御型もしくはサポート型だ。先程のような防御壁を張ったり攻撃型の能力者の潜在能力を高めたり、治癒することに長けている。だからライム君が止めるのも無理はない。それに彼は僕が2つの能力持ちであることも知らないのだ。
僕は彼の言葉に2つの能力持ちであることを言うわけにはいかないため「僕なら大丈夫だから!」と答えることしか出来なかった。
それを聞いたライム君は眉間にシワを寄せて「なら、俺も行く!」と言って付いてこようとした。
僕はそれを必死に止めようとしたが「俺だって騎士の端くれだ。フェンが行くのに戦える俺が行かないのはおかしい!」と強く言われ、結局僕が折れることになった。
そして2人で父様達のいるところにかけつけると、ほとんど父様と魔獣が1対1で戦っている状態だった。他の騎士達は魔獣の攻撃を受け、瀕死ではないが立つこともままならない状態だった。
父様は元騎士なだけあって剣と魔法の両方を使い魔獣を押しているようだったが、この魔獣は剣や魔法の攻撃を受けても再生する能力を持っているようで父様との戦いも父様の魔力が切れてしまうと危ない状況だ。
僕は父様と魔獣の戦いを見ながら何処か弱点になりそうなところを探したが、どんな攻撃をしてもすぐに再生してしまう為なかなか見つからない。
僕がどうすればいいか焦っていると、
「フェン、アイツすぐ再生するんだったらどうにか再生する隙すら与えないくらい攻撃をして心臓を一突きしたらいいんじゃないか?」
ライム君がそう言った。
「(そうだ!その手があった!)」
僕は大声で「父様!魔獣を出来るだけ多く攻撃して!」と叫ぶ。
「(父様って呼んじゃったけど、この際だから仕方ない!またあとでライム君に説明しなくっちゃ…!)」
父様はこちらを見るとコクリと頷いて、剣を構えた。
僕はそれと同時に水魔法で作った氷の刃を構え、父様と同じタイミングで敵を攻撃するのを待つ。
父様が魔獣に向かって足を蹴り出し、高速で相手の身体の至る所を攻撃した。勿論その間も次々と傷は再生していく。
僕は魔獣が少なからず再生するのに時間がかかり、それに気を取られている間に心臓を狙う。
僕は後ろから魔獣の心臓目掛けて氷の刃を放った。
その瞬間、グサッ!と刺さったと同時に魔獣が雄叫びを上げながら倒れる………と思いきや、魔獣は最後の力を振り絞って口からファイアーボールのようなものを複数放った。
僕は自分の周りに防御壁を、父様はジャンプして攻撃を避けた。しかし、僕はすっかりライム君のことを忘れていた。魔獣が放ったファイアーボールの何個かがライム君の方に放たれてしまい、僕が「危ない!」とライム君を庇おうと身体を傾けた時、魔法が解けてしまった僕の腹部をファイアーボールが貫通する。
僕はそのまま、驚いた顔のライム君を見ながら気を失った。
41
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる