腐男子は神様に願望を叶えてもらいました

ミイ

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第1章

54. 意識を失っている間

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次の日から通常通りの生活に戻れるように訓練を始めた。先ずは固形物を食べれるようにするのと上手く動けるように筋肉をつけることだ。

僕はエリーに訓練をしてもらう前にこれまでの看病についてお礼を言う。エリーは「当たり前のことをしただけです。」と謙遜していたが、僕にとってはこの世界の第2の母みたいな存在なのでそこはキチッとしたい。エリーは僕のお礼に「本当に良かったです。」と涙ぐんだ。

それからエリーに付きっ切りになってもらい、なんとか1週間ほどで元通りになった。普通では有り得ないスピードだが、自分自身に光魔法を施したかいもあって通常より早く治ったみたいだ。

あとエリーに聞いたことだが、タジェット兄様は僕が意識を失っている間、時間を見つけては僕の様子を見に来てくれていたらしい。あれだけベタベタと僕に触れていた兄様だが、ベッドサイドで僕の寝顔をジッと眺めるだけで1度も触れることはなかったという。

「(やっぱり僕を殴ったことを気にしてるのかな…?僕から触れないと兄様からは触れてこない…?)」

そう思うと若干寂しく感じた。

「(いやいや!これで良かったんだよ!兄様の恋人の代わりになるなんて僕だって嫌だったし、僕も違う人を見るいい機会だ!それに僕、思ったんだ!兄様の恋人について聞いたとして、それが僕の勘違いだったとしても今の僕には兄様の気持ちを受け止めることはできない。それで返事を先延ばしにしたら兄様に悪いだけだし、万が一、僕が違う人を選んだらそれこそ兄様に顔向けできないよ。とりあえずこのまま兄様の様子を伺うことにして、僕からは動かないようにしよう!)」

と僕は心に決めた。

そして反対にディル兄様だが、2人きりのディル兄様の様子を知らないエリーからすると今までのディル兄様では考えられないくらい寝ている僕にベッタリだったらしい。

あっ!タジェット兄様とは被らないようにしてたみたい。今日1日の出来事を僕に話し掛けたり頭や頰を撫でたり、しまいには頰にキスして部屋に戻ったりしていたらしい…。「何、色々勝手にしちゃってんの!?」って思ったよ。まぁディル兄様には覚悟しといてね、と言われていたからそんなのは序の口なんだろうけど。

まぁ僕が意識を失っている間、家族にはかなり心配をかけちゃったから眠っている間の行動に関しては目を瞑ることにしよう…。

それから僕は長期間、学院を休んでしまっていることを思い出した。エリーに慌てて聞くと"持病が悪化した"ということになっているらしい。「(僕はいつから持病持ちなんだ…。)」と思ったが、これから何かある度に"持病"に助けられるんだろう。





そして僕が目覚めてから10日後、トータルでいうと45日。いよいよ明日、学校へ復帰する日、僕は少し不安な気持ちになっていた。入学初日から悪目立ちをしてしまいクラスメートから遠巻きに注目されいた為、皆に忘れられていたらどうしよう…と思っていた。かといって、そこまで親しい友人は数人しかいないのだが。そう思いながらも明日の準備をしていると扉の向こうから、

「フェルー!!!」

という叫び声がした。

「(この声は…。)」と思っていると扉がバンッ!と開いてカラマス君が勢いよく入って来た。カラマス君は「フェル、心配したぞ!」と僕を力一杯抱き締める。

「カッ…カラマス君、苦しいよ…。」と言うと「ゴメン、ゴメン。」と笑いながら離れてくれた。

「お見舞いが遅くなってゴメンな。お祖父様と色々あってな…。」

とカラマス君は一瞬、暗い表情となったが、直ぐにパッと明るくなりいつものカラマス君に戻る。

「それより、お見舞いにこれを持ってきた。」

とカラマス君は僕に小さな包装袋を渡してくる。

「これ…僕に?」と聞くと無言で頷かれた。

「ありがとう…開けてもいい?」

「ああ、むしろ開けてくれ。」

とカラマス君の表情はウキウキしていた。

早速、中を開けると革でできた真っ黒でシンプルなブレスレットが入っていた。よく見るとセイボリー家の紋章が入っている。

「カラマス君、これって…?」

「またフェルが危険な目に遭わないように造らせた。そのブレスレットには魔力が込められている。もし次またフェルに何かあった時に発動してフェルを守ってくれるはずだ。本当は次なんてことはない方がいいし、俺が側にいてやりたいんだが、難しいときもあるからな。それぐらいしとかないと俺が不安なんだ。フェルには悪いけど俺の為に付けておいてくれないか?」

とお願いされる。

「いいの…?こんな高価な物。」

この世界でもオーダーメイドは相当高価である。

「いいんだよ。俺が勝手に用意したんだ。遠慮無く付けてくれ。」

カラマスはニコリとして言った。

「ありがとう…大切にするね。」

「ああ、俺が付けてもいいか?」

「うん、お願いします。」

僕はブレスレットをカラマス君に渡し手首を差し出した。

カラマス君はブレスレットの留め具を触りながら「これが婚約指輪ならいいんだけどな…。」と苦笑する。

僕はそれに対して申し訳ない気持ちがあり何も言えず押し黙る。

「あれ…?うまく留めれないな。フェル、もう少し手首を上げてくれないか?」

「…うん?」と言いながら手首をカラマス君の目線の高さに持ち上げると手首をグッと握られ引き寄せられた。

僕の身体がカラマス君の方に傾き、僕が「わっ!」と声をあげながら見ると唇にチュッとキスされた。
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