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第1章
60. 証言
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「僕の名前はフェンネル・ローランドと言います。ここにタジェット・ローランドという人がいると思うんですが、僕はその弟です。今日は兄に会いに来たのですが、どうしても僕が来たことを知られずに姿だけを見て帰りたかったんです…。すみませんでした。」
僕は潜入した理由を素直に説明した。
僕はこれで納得してもらえるかと思っていたが、光魔法の先生は渋い顔をして、
「…わかりました、と言いたいところですが、あなたがローランド君の弟である証拠がありません。身分証があればいいのですが、あなたくらいの年齢では身分証はお持ちではないでしょう?…なので、あなたの言い分を聞くことは出来ません。あなたがここの生徒を助けて下さったことは感謝しています。ですが、それとこれとは話は別です…今からあなたを上層部のところへ連れて行きます。宜しいですね?」
と有無を言わさぬ雰囲気で言ってくる。
僕は「証拠!証拠ならあります!(こんなこともあろうかと持ってきたんだー!)」とポケットに入れていたローランド家の紋章を差し出した。
光魔法の先生はローランド家の紋章を受け取ると確認し始める。
それが終わると、
「…たしかにローランド家の紋章ですね…。しかし、私はローランド君に弟がいることを知りません。ですから、あなたのことをどなたかに確認を取らなければなりません…。」
と困り出した。
僕は咄嗟に「ライム君をお願いします!1-IIIクラスのライム君です!」と叫んだ。
「…分かりました。今からその生徒をここに呼び出します。その間、大人しくしていて下さい。」
先生はそう言うと保健室にある魔法で作られた放送設備のようなものでライム君を呼び出した。
暫く待っていると扉をノックする音がし、
「失礼します、ライムですが何かご用ですか?」
とライム君が部屋に入ってくる。
あの魔獣討伐の出来事から二月近く。彼は少し髪は短くなったもののほとんど変わらない姿で僕の目の前に姿を現した。僕は父様に彼の安否を聞いてはいたが実際に元気な姿を見れてテンションが上がり「ライム君~!」と彼に抱き着いた。
彼は「えっ!?」と驚き固まったが、僕だと分かるとバッと身体を離し、僕の肩に手を置いた。
「お前、身体は大丈夫なのか!?俺…お前が運ばれてからお前のことが心配で心配で…俺のせいで怪我したから…。それにキチンとお礼も言えてないし…。」と、僕の身体を労わる言葉を掛けてくれる。
しかし、今はそれどころではない。
「ライム君、君には黙っていて悪かったと思ってるんだけど、この前の件で僕がタジェット兄様の弟だってことがわかったよね…?だから、この光魔法の先生に証言してくれないかな…?」
とお願いする。
彼は目を丸くし、状況がよくわかっていないようだったが僕の必死な様子に察してくれたのだろう…
「えっ…?ああ…そうだったな…。タイン先生、この人はタジェット・ローランド様の弟で間違いありません。この前の魔獣の討伐で光魔法の使い手としても活躍してくれました。そして俺の兄も救ってくれました。決して怪しい人物じゃありません。」
と、とても説得力のある証言をしてくれた。
そのおかげで僕の疑いは晴れたのだが…
先生は僕が騎士団に不法侵入をしているのは事実なのでどうするべきか迷っている。
暫く考え込んでいた先生だったが、
「フェンネル君、あなたが不審者ではないのはわかりましたが、私はここの教員としてあなたが不法侵入したことを上層部に報告しなければなりません。申し訳ありませんが、一緒に来てくれますか?…決して悪いようにはしませんので…。」
と言ってきた。
「(そうだよね…流石に先生には報告義務はあるか…。ここで内緒にしたら先生の立場が悪くなるもんね、仕方ない…兄様に会いに行こう。)
わかりました。」
僕はそう返事をすると先生と共に兄様のところに行くことを決心した。
「フェル…大丈夫か…?」
とライム君が心配してくれたが「なんとかなるよ。ライム君、ありがとう。」とお礼を言って先生と副隊長室へと向かった。
副隊長室へと向かう道中、タイン先生が自己紹介してくれる。
「先程は疑ってすみません。私はタイン・ウィードです。ここで医官をしています。」
「いいえ、僕が悪いんですから謝らないで下さい。先生は当たり前のことをしただけですから。」
「…不思議ですね…フェンネル君の話し方は年相応ではなく、同い年の方と話してるみたいです。」
そこは「そうですか?」と誤魔化しておいたが、内心ドキリとした。
それからタイン先生に案内されるがまま着いて行くと、ある扉の前で止まる。
「ここが副隊長室です。正直言うと最近、ローランド君は気が立っているようで、いくら弟だからと言ってすんなり通るかは分かりません。しかし、私がなんとかお会いするようにしますから安心して下さい。」
そうタイン先生は言うと、扉をノックした。
僕は潜入した理由を素直に説明した。
僕はこれで納得してもらえるかと思っていたが、光魔法の先生は渋い顔をして、
「…わかりました、と言いたいところですが、あなたがローランド君の弟である証拠がありません。身分証があればいいのですが、あなたくらいの年齢では身分証はお持ちではないでしょう?…なので、あなたの言い分を聞くことは出来ません。あなたがここの生徒を助けて下さったことは感謝しています。ですが、それとこれとは話は別です…今からあなたを上層部のところへ連れて行きます。宜しいですね?」
と有無を言わさぬ雰囲気で言ってくる。
僕は「証拠!証拠ならあります!(こんなこともあろうかと持ってきたんだー!)」とポケットに入れていたローランド家の紋章を差し出した。
光魔法の先生はローランド家の紋章を受け取ると確認し始める。
それが終わると、
「…たしかにローランド家の紋章ですね…。しかし、私はローランド君に弟がいることを知りません。ですから、あなたのことをどなたかに確認を取らなければなりません…。」
と困り出した。
僕は咄嗟に「ライム君をお願いします!1-IIIクラスのライム君です!」と叫んだ。
「…分かりました。今からその生徒をここに呼び出します。その間、大人しくしていて下さい。」
先生はそう言うと保健室にある魔法で作られた放送設備のようなものでライム君を呼び出した。
暫く待っていると扉をノックする音がし、
「失礼します、ライムですが何かご用ですか?」
とライム君が部屋に入ってくる。
あの魔獣討伐の出来事から二月近く。彼は少し髪は短くなったもののほとんど変わらない姿で僕の目の前に姿を現した。僕は父様に彼の安否を聞いてはいたが実際に元気な姿を見れてテンションが上がり「ライム君~!」と彼に抱き着いた。
彼は「えっ!?」と驚き固まったが、僕だと分かるとバッと身体を離し、僕の肩に手を置いた。
「お前、身体は大丈夫なのか!?俺…お前が運ばれてからお前のことが心配で心配で…俺のせいで怪我したから…。それにキチンとお礼も言えてないし…。」と、僕の身体を労わる言葉を掛けてくれる。
しかし、今はそれどころではない。
「ライム君、君には黙っていて悪かったと思ってるんだけど、この前の件で僕がタジェット兄様の弟だってことがわかったよね…?だから、この光魔法の先生に証言してくれないかな…?」
とお願いする。
彼は目を丸くし、状況がよくわかっていないようだったが僕の必死な様子に察してくれたのだろう…
「えっ…?ああ…そうだったな…。タイン先生、この人はタジェット・ローランド様の弟で間違いありません。この前の魔獣の討伐で光魔法の使い手としても活躍してくれました。そして俺の兄も救ってくれました。決して怪しい人物じゃありません。」
と、とても説得力のある証言をしてくれた。
そのおかげで僕の疑いは晴れたのだが…
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「フェンネル君、あなたが不審者ではないのはわかりましたが、私はここの教員としてあなたが不法侵入したことを上層部に報告しなければなりません。申し訳ありませんが、一緒に来てくれますか?…決して悪いようにはしませんので…。」
と言ってきた。
「(そうだよね…流石に先生には報告義務はあるか…。ここで内緒にしたら先生の立場が悪くなるもんね、仕方ない…兄様に会いに行こう。)
わかりました。」
僕はそう返事をすると先生と共に兄様のところに行くことを決心した。
「フェル…大丈夫か…?」
とライム君が心配してくれたが「なんとかなるよ。ライム君、ありがとう。」とお礼を言って先生と副隊長室へと向かった。
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「…不思議ですね…フェンネル君の話し方は年相応ではなく、同い年の方と話してるみたいです。」
そこは「そうですか?」と誤魔化しておいたが、内心ドキリとした。
それからタイン先生に案内されるがまま着いて行くと、ある扉の前で止まる。
「ここが副隊長室です。正直言うと最近、ローランド君は気が立っているようで、いくら弟だからと言ってすんなり通るかは分かりません。しかし、私がなんとかお会いするようにしますから安心して下さい。」
そうタイン先生は言うと、扉をノックした。
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