死か降伏かー新選組壬生の狼ー

手塚エマ

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第一章 OBEY

第十九話 彼は特別

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「宮迫さん! 宮迫さんは確か、蘭語らんごがおわかりでしたよね?」
 
 沖田は沓脱岩くつぬぎいわで草履を引っかけ、中庭に出て呼び止めた。


「ええ、少しですが。それが何か?」
「ちょうど良かった。それでは『どんまーだー』とは、どういう意味になりますか?」
「沖田さん。それは蘭語ではなくて英語です」


 宮迫は苦笑いして訂正し、引いていた大八車を足元に置く。
 剣の腕もさることながら、豊富な知識と語学力を買われ、諸士取調役兼監察方に就任した精鋭だ。

 米粒に、目と鼻と口を一筆書きをしたような品のいい顔の汗を手ぬぐいで拭き、人懐こく微笑みながら沖田に答えた。


「『どんまーだー』とは、『殺すな』という意味です」
「では、『えくせぷしょん』とは?」
「『例外』。もしくは『特別』の意味合いでしょう」
「でしたら、『ひーずえくせぷしょん』では、どうなりますか?」

「『彼は例外、もしくは特別だ』ということになります」
「ありがとうございます。助かりました」


 満足した沖田は縁に戻ってあぐらをかき、指の爪を神経質に噛み出した。

 宮迫は、切断された手足が入った盥を台車に乗せながら、感嘆の目で沖田を眺める。


「すごいな。沖田さんは英語を全くご存じないのに、完璧に聞き取れているじゃないですか。よほど耳がいいんでしょう」
「総司。英語がどうした」
 

 土方は沖田の隣にしゃがみ込む。

「蔦屋の主人は、私は『特別な存在だから殺すな』と、言ったんです」
「蔦屋が、か?」
「彼らは私達に聞かれたくないことは、英語でしゃべったんだと思います」

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