ぬしに会わねば真の闇

手塚エマ

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滝の水 岩に打たれて一度は切れて 流れ行く末またひとつ

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 渉は自分と混合踊りを踊りたがってくれていた。

 本当にそうだったのなら嬉しいのに、喜び切れない自分がいた。

 たとえそうだとしても、渉はあくまで踊りたかっただけなのだ。
 女踊りの名手と うたわれ、その名を知られた 女衆おんなしの、最後のおわらを惜しんでくれているだけだ。
 渉の真意を取り違えるなと、自分を いさめる声がする。
 舞い上がるなと、胸の奥から聞こえてくる。

 あと三日経てば、おわらが始まり、三日後の夜明けとともに終わる祭じゃないか。
  八尾やつおの町は三百六十五日のうち、三日間だけ燃え上がり、祭が済めば、 山間やまあいの里の静けさを取り戻す。
 忘れ去られた宿場町の面影だけが、名所にすぎない。
 閑散とした過疎村の姿に返った時の虚しさ、哀切も、千華は毎年味わった。

 祭は魔物だ。
 理性も節度も奪い去る。

 そんな空気に呑み込まれ、のぼせた頭で心も躍らせ、夜が明ければ祭のあと。
 そこにあるのは、過ぎ去ったという 失墜感しっついかんと 落胆らくたんだ。

 わかりきったことなのだ。
 八尾では、おわらで青春を閉めくくる。

 眩しいぐらいの若さの分だけ、影も濃かった青春を。
 制御できない情動を、暴走させて恋をして、みじめに敗れた経験で、学んだこともあるはずだ。

 渉とは今のままの距離でいい。
 慕い合い、忍び逢う、男女を踊りで表現し、おわら少しでも沸かせたい。

 それを渉と出来るのだから、それでいい。
 渉もそれを望んでくれていたことを、伝えてもらえただけでいい。
 もう、それで充分だ。
 やっとこれで諦めがつく。さよならと言い、微笑んで、手を振ることができる気がした。

 おわらにも。渉にも。

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