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第五章 皇帝の寵姫として

第48話 レナとの交渉

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「信じてくれ」

 振り向いたアルベルトが悲壮な面持ちで言い募る。

「レナが不幸になれば、お前も不幸になってしまう。だから後宮の安全な巣の中にレナをかくまった。俺の意図は他にない」

 信じて欲しいと告げられたサリオンが瞠目する。

「だけどレナは後宮入りを断ったはずだ」
「俺とお前の間に子が授かるまでの期間を短くした。そんな短い間に子ができる訳がないとレナは侮った。だから後宮入りを承諾した」
「子供ができるまでの期間を短くした?」

 サリオンは声を裏返し、立ち上がる。

「そんな……、俺に何の断りもなく」
「レナを納得させるには、これしか手立てがないと思ったからだ」
「手立てが他にないと思った時点で、どうして俺に相談しなかった?」

 何の相談もなく事後報告では納得いかない。
 サリオンはいきり立つ。

「その短い期間にできなかったら、あんたはレナと寝るんだろう?」

 まるで出来ないことが前提で話が進められている。
 しかし、アルベルトとの間に子供ができる自信もない。
 答えもしない沈黙が、承諾したと語っている。

「あんたとレナの間に勝手に話をつけられて、はいそうですかと頷くとでも思っていたのか?」
「限られた期間だろうと、俺にはお前との子を授かる自信がある」

 決然として反論したアルベルトがサリオンの両肩を掴んで向き合った。

「お前とは、ただ子供をもうけることだけが目的にしたくない。お前を愛しているからこそ、二人の血を分けた子供が欲しい。お前はそうじゃなかったのか?」

 レナには、たとえアルベルトと何度寝ようと子供はできないと豪語した。
 信じて欲しいと言われたサリオンは、自分もアルベルトもレナも誰のことも信じ切っていない自分に気づかされ、口を噤んで伏し目になる。

 
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