under the kill

まいすたあ

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1章 始まりと巡

拭う

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そう。本当になんの異変もない。足も痛くないし、きっと熱も無い。

「念の為に熱測ろうか」   ピピピピ

36・7度   わたしにとっては平熱だ。
今日は本当に、運が良かっただけかもしれない

ー数分後

「えーただいまのレース、反則行為があったため、早川りん選手を失格といたします」

 どよめく会場と、落胆の声。それ以上にわたしは、ショックを感じ座り込む。あちらこちらで聞こえる囁き声。

「だよねー男子でもはやい人が12秒なのに、あんな華奢な子がそれよりはやいわけないもんね」
「ドーピング?中学生で薬はやばいw」
「レーン内側に入っちゃったのかな?特に妨害してるようには見えなかったけどな、、、残念。」

わたしはいたって健全で、もちろんフライングもしていない。体感はいつも通りだった。調子が良かったでは、収まりきらない激情が鮮明に思い出せる。練習の通り、そのまんま走った。なのに、タイムは、はやかった。
勝手に境界線が曖昧になっていく。泣くのか、わたし。しょうもない。泣きたくなんてないのに、大粒の結晶が落ちてゆく。努力がにじんだ、大きな、大きな結晶だ。

『さすがの彼女でも、これだけやってしまうとすぐにバレてしまうのか。残念だ。でもこれでよくわかった。これが一番よく効くのは中学3年生 14歳から15歳だ。今後彼女のことを無駄にしないようにしないと。』

   男は電話越しに言う。いかにも冷静で淡白であるかのように、どうでもいいといったように。でも彼女は見逃さなかった。いや、見逃せなかった。季節外れのトレンチコートを着た大柄の男性が、自分と同じくらいの涙をこぼしていたことを。
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