あのエピローグのつづきから 〜勇者殺しの勇者は如何に勇者を殺すのか〜

shirose

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第一章 勇者殺しの勇者

第9話 灼かれた贖罪とお披露目

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「さ、流石にやりすぎだよレティ」

 セルカがレティシアをいさめる。

「ごめんって~。だってこいつら壁を破壊してまで覗いて来たのよ?」

「ダイナミック過ぎてもうそれは覗きとは言えないでしょ」

 シャルロットがレティシアにツッコむ。

「まぁ確かにこの人達はやっちゃいけないことをしたけど、でもいくらなんでも焼くなんて」

「ごめんって! ほら、今もこいつらぴんぴんしてるから、ね! 許して!」

「わたしがいなかったらやばかったけどね。そうだな~、ハグで許したげる」

 そう言ってリアが手を広げる。レティシアはそれに応じて抱き合う。

 あのー、許す許さないを決めるのはこちらでは? ハグを求めているのはこちらでは? とは口が裂けても言えなかった。
 我々は罪を犯したのだ。もう何も言えまい。罪人は既に裁かれた。お互い何も心残りはないはずだ。
 もっとも、ジークヴァルトは完全に巻き添えだったが。彼はリアの能力で復活するなり黙ってフョードルを一発ぶん殴った。
 フョードルはやり返さなかった。
 そして彼は何故か謝りもして感謝もした。フョードルらしくはない、そう思ったが、ジークヴァルトがあんなことをしなければあんなダイナミックな覗きは出来なかった。それに感謝しているのだろう。
 ジークヴァルトは呆れ返ってその日はフョードルと一切口をきかなかった。

 四人みんなで平謝りすると女性陣は快く許してくれた。全身を火傷した五人を同情してのことだろう。それにフョードルが提案主だと推測出来たので他の四人は特にお咎めはなかった。

 もう絶対に覗きなんてしません。
 心に誓う。神に誓う。

 まさか半殺しにされるとは思わなかった。いや、九割は死んでた。
 今生きてるのは奇跡だ。
 生きてるって最高。
 四人の意思は固く一つに収束したのだった。



          ◇◇◇



 その後、魔人領に向かう最後の晩餐ということでパーティ全員で宿の食堂で夕飯を取っていた。
 他に客は居ないようだった。フョードルたちは他のレストランで食べているらしい。

「ノウトくん、レンくん、さっきのことは忘れるから君達も見たことは忘れてね」

「みんな、怒ってないのか……?」

「別にそれに関しては怒ってはいないかな。正直いって君達をこんがり焼いちゃったレティにわたしは怒ってるよ」

「私も怒ってはないわ。でも食事中にその話はやめましょ……」

 シャルロットはすっかりトラウマになってしまったようだ。

「というかこの話題は今後出さないようにしませんか? 誰も得しないですし」

 フウカが提案する。

「さんせー」

 リアが肯定する。

「そうだな」

「んっんー」

 レンがわざとらしく咳払いをする。

「じゃあ話題の切り替えに、シャルとリア以外の人で〈神技スキル〉披露大会にしよう」

「待ってましたー」

 リアが両手を上げていかにもな感じで喜ぶ姿勢を取る。

「よし、じゃあ俺からいくね」

 みんなの視線がレンに注がれたところで、レンはその右手をテーブルの上に置く。

 するとその右手がどんどんテーブルに呑み込まれいく。

「!?」

 既にレンの片手は消えてしまった。
 と言うよりテーブルに埋まってしまった。
 レンが手を上げるとテーブルから何事も無かったかのように手が現れる。どんな原理なんだ...?

「こんなことも出来るよ」

 そう言ってレンは床にどぽん、と沈んでいってしまう。思わず、彼の沈んでいった床に触れるがタネも仕掛けも、何もわからない。

 すると自分の肩がぽんぽん、と叩かれので振り返ると。

「やぁ」

 そこにはレンが立っていた。

「うおっ!! びっくりした」

「なるほど」

 シャルロットが腕を組んで何か推測している。

「レン。あなたは『影』に入れるのね」

「ご明察。そう俺は影に入り込み、その中を自由に動ける能力を持ってる。《影隠スニーキング》って名前の〈神技スキル〉なんだけど」

「……強いな」

ノウトは単純に感心する。攻撃にも防御にも転換して使えるいい神技だ。

「それって影の中にいる時に上から光を照らされたらどうなるんですか?」

 フウカが素朴な疑問を投げかける。確かにそれは気になる。

「入ってみたら分かるけど、影の世界は基本自由に動けて現実世界の影のある場所のみからそっちに戻れるんだ。つまり上から光を照らされて自分が入って来た影が無くなった所で大した痛手はない、ってこと。近くの他の影から出てくればいいだけだから」

「それって────」

 リアが言葉を詰まらせる。

「最強じゃない!?」

「はははっ。最強ではないよ。影がかかってるものの体積分しか影に入れないし。攻撃力、というか破壊力はそんなにないから。ただ〈ステイタス〉に神技スキル一覧、ってあるから神技って今後増えていくものなのかもしれないね」

「でも、どうやれば増えるのかみたいなのが説明されてないのよね」

「使い込めば、みたいな感じなのかな」

「いや、よく分からない。この神技も使用上限みたいなのがあるわけでもなさそうだし」

「あの暗い部屋にいた変な服の人色々と説明不足すぎるよ~」

「ほんとだよな」

「それなんですけど」

 フウカが話を切り出す。

「私たちが情報収集していた時に城に一度立ち入って、王に〈ステイタス〉のことや諸々質問したんですが、『分からない』の一点張りでしたね」

「そんなんでわたしたちを危険だっていう魔人領に放り込もうって訳? なんか無責任にも程があるなぁ」

「もう一度あの俺達が目覚めた所に行ってあの変な服の男に質問出来りゃいいんだけどね。あの場所にもう一度行くことは可能だけど、彼、一通り説明したら消えちゃったから」

「しょうがないさ。今はただ明日のことを考えればいいと思う」

「午前八時にここ王都の正門集合よね」

「あぁ。朝苦手なんだけど大丈夫かな」

「起きなかったらわたしが叩き起すから大丈夫」

「乱暴なのはやめろよ……」

「うん」

「んっんー」

 今度はフウカがわざとらしく大きく咳払いをする。

「今度は私の〈神技スキル〉を披露しますね」

「やったぁフウカちゃんの能力だ~。楽しみだなぁ」

 リアはなんだか棒読みで話す。
 尤も、既にリアの手によってフウカが〈風〉の勇者であることは知っていたのだが、その能力は如何なるものかは分かっていない。
 フウカが右手を胸のあたりに持ってきてを掌を上に向ける。

 そしてなんと、その手のひらから、小さな竜巻を作り出して見せた。机に敷いてあるテーブルクロスが微かになびく。

「どうです?」

 うん。なんか、予想通りだ。一同が同時に腕を組む。

「あ、あれ!? なんか私のだけ反応悪くないですか!?」

「いや、なんか、ね。〈風〉の勇者って事前に知ってたから予想通りだったというか。期待を裏切らないなぁ、というか」

「普通に酷いですよ、それ!」

 フウカは半べそをかいている。

「ごめんな」

「謝られると逆に辛いです、ノウト! ほら、こういうことも出来るますし!」

 そう言ってフウカはその風を自分だけに纏い、宙に浮いた。

「色々と予想通りだけどめちゃくちゃ便利だね。シンプルに強そうだ」

「予想通りだったけど攻撃力とか破壊力は高そうね」

「もう! リア達をこれで運んでやんないんですからね!」

 フウカが宙に浮きながら怒る。

「ごめんってフウカちゃん。ノウトくんがまだ披露してないけど攻撃力的には多分フウカちゃんがこのパーティ一番だよ! よっ、〈風〉の勇者!」

「そ、そうですか。それならいいですけど」

 フウカは絶対騙されやすいタイプだ。リア達と目配せする。彼女を皆で守らないと。

「最後にノウトがお披露目かしら」

 シャルロットがノウトに情報の開示を促す。
 うっ。遂にこの時が来たか。
 やばい、最初に見た時以来怖くて〈ステイタス〉を見てなかったからな。
 覚悟を決めて、ここで確認しよう。
 左手甲の《エムブレム》に二回触れ、青い長方形で半透明のそれを呼び起こす。


────────────────────────
〈殺◤〉の勇者

名前:ノウト・キルシュタイン
年齢:◤◥◣
【〈神技スキル〉一覧】
弑逆スレイ》:触れたものを殺す能力。
◥◣▆▄ル◣》:◢◢█◤◥◤◣◥
◤◣█◤█◣◤█》:◥◣◢◥◤◣◥█▟◥◤◣◢◣█◤◥◣◢。
█◤◣◢▟イ◣》:◢█▆▄◢▟◢▖◢◤◥◤◣◤。
────────────────────────


 理由は分からないが、ノウトの〈ステイタス〉は明らかに変化していた。
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