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第一章 勇者殺しの勇者
第24話 ときには流れゆく雲のように
しおりを挟む誰か他のパーティが先んじて向かっているんだ。
まずい。一斉に封魔結界を越えるってルールを破ろうとしてるのか?
そのルールはこっちとしてはありがたかったが魔皇を我先にと殺そうとしている側からすれば邪魔な誓約だ。
急いで他の竜車を見て回る。
さっき、ミカエルはいたから彼等以外だろう。
見回って察する。
……フョードルたちだ。
あいつらの竜車がない。くそ。いつ出発したんだ。
昨日の晩どうして気付けなかったんだよ、俺。
後悔しても仕方ない。レティシアやジークヴァルトたちが制止してくれるはずだから先に封魔結界を越えようとすることはないだろうが。
「───やられた」
万が一にも俺たちを待たずに封魔結界を越えて魔皇を殺しに行くならば、かなり危険だ。
ヴェロアは殺されてしまうかもしれない。
かつての仲間である魔皇直属護衛兵の彼らのことを信頼してない訳では無いが、もしものことがあっては困る。
リアやシャルロット達を見ていて分かるように勇者の神技は底が知れない。不死身やら星を造れるやら、勇者は予想の範疇を軽く超えてくる。
「やぁ、ノウト君」
俺が頭の中で試行錯誤しながら自分達の竜車に戻ろうとしているとフェイに声を掛けられた。居るのはフェイ一人だけのようだ。
テオやナナセあたりといつも一緒にいるイメージだったけど珍しいな。
「おはよう、フェイ」
「何やら悩んでいたようだけど」
「いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ」
「フョードル達なら心配いらないよ。おれたちと別行動するだけみたいだから。封魔結界を越える時は同じだよ」
フェイはさも当然のように話す。俺は不本意ながらも泡を食ってしまった。
「──っ!? ど、どうして考えていることが分かったんだ?」
「はははっ。そりゃあ血相変えて一人でみんなの竜車を確認してるんだ。さすがに分かるよ、ノウト君」
「それも、そうだな」
相手の考えていることが分かる神技、みたいなのを疑ったが考え過ぎか。
「それでなんでフョードル達が単独で封魔結界を越えないって分かるんだ?」
「本人に聞いたからね」
「なるほど。いつここを出たか分かるか?」
フェイは腕を組み、考えるポーズを取りながら、
「確か3時間くらい前かな。午前四時くらいだったと思う」
「そうか。ありがとう、助かった」
「力になれて良かったよ。───あと」
フェイは少し言い淀んでから、
「一人でいると魔皇の協力者だと疑われちゃうから気を付けた方がいいよ」
「それはお互い様じゃないか?」
「はははっ。確かにそれもそうだ。そろそろおれは仲間たちのとこに戻るよ。バイバイ」
彼は手を振って自分たちの竜車へと戻って行った。一瞬ビビったがなんてことはない。
フェイはフョードルたちの情報を教えるためだけに俺に話しかけてきたのか? いまいち行動の動機が分からないな。まぁ今はそんなこと考えていても仕方ないか。教えてくれたことに感謝しなくては。
俺はやっとの思いで竜車に乗り込む。
「ごめん、遅れた」
「おはようございます、ノウト」
「ノウトくん遅いよ~」
「ごめんって」
死角になっていたために一瞬分からなかったが、レンの隣にパーティの仲間ではない人物がいることに気がついた。
彼は先日死刑を執行されそうになった時にリアが助けたあの少年だ。
あの時とは違い、生気のある表情でこちらを見ていた。
「お、おはようございます」
俺は少年が想像している以上に落ち着いていることに軽く衝撃を受けた。
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