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第二章 蹉跌の涙と君の体温
第8話 遠く、遠く、哀惜の彼方へ
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ナナセが一通り話し終えると、フウカは心底安心したような顔を見せた。
「二周目とかは、正直よく分からなかったんですけど……とにかく、ノウトのせいじゃないってことですか?」
「そういうこと。もちろん、俺の事を信じて貰えるなら……だけど」
「信じますよ、そんなの」
「っていやいやいや、もっと人を疑った方が───」
「ナナセはアイナとヴェッタに信じられてます。それなら、私もナナセを信じられますよ」
「その理屈は、うん、ちょっとよくわかんないけど……。取り敢えず、一緒にノウトを探してくれるってことで大丈夫?」
「はい、もちろん」
フウカは無垢な笑顔を見せる。そして、彼女は「でも」と付け加えた。
「一つだけ聞かせてください。フェイが言っていた、リアが魔皇の協力者って言っていたのは間違い、ですよね?」
「え、ああ、ごめん。そのこと忘れてた。うん。多分……というか百パーセント嘘だよ」
「ですよね。安心しました」
「フェイは嘘つきなんだ。どの世界でも、多分そう。一周前の世界でも嘘をつきまくってた。でもそれが本当に聞こえるのがあいつの凄いところでさ」
「ナナセは、フェイのことが好きなんですね」
「す、きではないと思う、けど。まあこの世界じゃ一番付き合い長いしね。嘘さえつかなけりゃ良い奴なんだよ、多分ね」
フウカはあどけなく笑った。
彼女だって辛いはずなのに、そんな顔が出来るなんて凄いな、なんて思ってしまった。俺達の中で辛くないやつがいるはずがない。みんながみんな被害を受けている。
これを起こしてしまったであろうフェイのことは許せない。絶対に許すことは出来ないだろう。
でも、フェイのおかげで得たものもたくさんある。
アイナやテオ、ヴェティと会えた。そのおかげでフェイを完全に嫌うことがなかなか出来ない。
それに、フェイを憎んでいる、というよりはフェイを止められなかった自分を恨んでいた。
今更、悔いたって仕方ないのは分かっている。だから今はノウトを探すことだけ考えよう。前に進むしか、ないんだ。
「でも、ならなんでリアは魔皇の協力者だって認めたんでしょう」
「おそらくだけど、リアはノウトと仲が良かっただろ? だから裏で繋がっていて、リアがノウトの肩を持ったとかそんなんじゃないのかな。あくまで推測だけどね」
「はあ……。まぁよくわからないですけど、リアとノウトは悪くなかった、ってことですよね?」
「ま、まあ端的に言えばそういうこと、かな」
「分かりました。それなら、ナナセ達に協力します。シャルも、いいですよね?」
フウカが問うとシャルロットは静かに頷いた。
「……ええ、もちろん。リアとノウトに……会いたいもの」
「そう言って貰えて良かった」
ナナセが微笑む。するとアイナが口を開いて、
「じゃあ、臨時パーティ結成ということでいろいろ情報交換しよう」
「分かりました」
まずはお互いが何の勇者かを言い合い、〈神技〉を教え合った。もはやナナセたちのパーティは半壊していて、魔皇を倒すという勇者本来の目的も理由を失っている。
そのため〈神技〉をお互いに伝えるデメリットも既に存在しない。
「じゃあ、アイナの能力があればすぐに会えるってことですか!?」
フウカにアイナの〈神技〉のことを教えると彼女は子供のように飛び跳ねた。
「えっとごめん、先に言っておくと、私の《瞬空》は視界に映ってる場所にしか飛べない。だからいきなりノウトの目の前に瞬間移動することは出来ないの」
「ほ、ほお。なるほど。ということはどうやってノウトとリアに会おうとしている訳で……?」
「ミカエル達に聞いたんだけどノウトは西に向かって飛んで行ったらしい」
そう言ってナナセは背中に背負った背嚢からスクロールマップを取り出した。
人間領南レーグ大陸の地図だ。改めて見ると、かなり歪な形をしているな、と思ってしまう。
ナナセがみんなに見せるように地図を向けて、真ん中に指を指す。
「今俺らがいるのはシェバイアの都フリュード。で、ノウトが飛び立ってから20時間くらいだから、遅くても今彼らはニールヴルトの国境は越えていると思う」
ミカエルやダーシュの言っていたノウトの翼が如何程のものかは分からないが、どれだけ速かったとしても〈封魔結界〉を超えているということはないだろう。
アカロウトからフリュードまでは竜車で一日以上かかったのだ。ここからロークラントはそれ以上の時間を要するはずだ。
「だから俺達はニールヴルトで情報を集める。人くらいの大きさの何かが飛んでいるのは夜ならともかく、昼ならめっちゃ目立つと思う。目撃情報はどこかに転がっているはず」
「な、なるほど」
フウカは分かっているのか分かっていないのか、曖昧に頷いた。するとアイナが泡を食ったような顔で、
「ナナセ、あんた意外といろいろ考えてるんだね」
「俺はこう見えて頭脳派だからね」
「頭脳派は頭脳派って言わないから」
ナナセの言葉をアイナが一蹴する。
「じゃあ、善は急げだ。早速ニールヴルトに向かおう」
「え? も、もうですか?」
「うん。ダーシュ達にノウトを殺されたくないだろ?」
「そりゃ……そうですけど」
「アイナ、行けるよな」
「うん、任せて」
アイナがシャルロットの手を取った。
「シャルロットも行くでしょ?」
「い、行くわよ。もちろん」
「何かあったら無理せず言ってね。私達、もう仲間だから」
アイナの科白にシャルロットが一瞬だけ目を見開いたが、その後はさっきまでと同じような無機質な表情になってしまった。
ナナセ達は全員天幕から出て、外を仰いだ。そしてアイナが面々と目配せしてから、
「じゃあ、抱き合おっか」
「……え?」
「ほら、触れてないと私の《瞬空》が反応しないから」
そう言ってアイナがシャルロットとヴェッタの腰に手を回した。フウカも同様に彼女らを包むようにする。
「あの、俺は……?」
「じゃあ、ナナセは───はい」
アイナはナナセに向けて右手を出した。
「握れ~的な?」
「そ」
「……了解っす」
ナナセはアイナの手を遠慮がちに握った。
あったかいな、なんだこれ。細いのに、なんか柔らかいし。
アイナは顔を上げて、顎で示した。
「あっちでいいんだよね?」
「そうそう」
ナナセはそれぞれと目配せしてから、決意を固める。
「────それじゃ、行こう」
────────────────────────
〈空間〉の勇者
名前:クガ・アイナ
年齢:17歳
【〈神技〉一覧】
《瞬空》:目に映る場所に瞬間移動する能力。接触し
ているものも対象にできる。
《空断》:目に映る物体を瞬間移動させる能力。
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