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しおりを挟む「さぁ?こんな森の中に逃げ込んだのを見つけるのは大変そうだね。もう、いいでしょ?早くカバンを─」
「まるで俺が飼ってて逃がしたって言い方だな」
「え」
「いや~、そのトカゲに頑丈な首輪や鎖を付けてたんだけど、何故かその欠片がそこに落ちてるんだよな~。それも粉々に。あれは並大抵の魔法じゃ壊れないんだけどさー…」
「何が言いたいんです…?」
男はニタァっと不気味な笑みを浮かべたと思った一瞬の隙に、俺の首元に冷たいものが押し当てられた。それは鋭く、とてつもなく冷たい。こんなことははじめてでそっと首元を見ると、月光に照らされて短剣の刃だけ綺麗に輝いていた。
「ッ!?」
「なぁ、正直に吐いてくれよ。さもないと」
まるで悪魔のような冷酷な声が耳元で囁いた。男の手に力が込められ、俺の首に強く押し付けられる。切り傷が徐々に開いていくような鋭い痛み。温かい血がゆっくりと首をつたっていく感覚に恐怖を覚えずにはいられなかった。
「まさかあの首を壊せるなんて凄い魔力の持ち主だと思っちゃーいたが子供だったとね。貴族様はそんな高度な技も習得済みか?」
「…」
「俺も子供を殺す趣味は無いが、世の中にはしょうがないという言葉もあるんでね。何処に逃がしたか言えば許してやるかもしれないよ??」
「うっ……」
震えてる俺に男はまた不気味な笑みを浮かべ、見下ろしていた。しょうがなく俺はこいつに殺されて幕を閉じるのか…?まだ、まだ俺は生きていたい。俺自身、龍がどこに行ったのか本当に知らない。それに、俺が逃がしたといえば確実に殺されるのは目に見えてる。絶対、逃がしたことは言えない…。それを証明するには…!
「お、俺は…」
「なんだ?」
「俺にそんなもの壊せないよ…!」
「ハッ、それには俺も驚いて─」
「だって、回復魔法しか使えないんだッ!」
「は?」
突然森の中に男の呆れた声が広がり、静まり返った。そして、長い沈黙の時間がずっーと続く。男も逆に驚いている様だ。俺の首に強く当てられていた短剣は少しだけ離れ、次は俺を軽蔑するような目で見てくる。
ただ回復魔法しか使えないといっただけなのに、この態度変化っぷり。内心はもう男の顔面を思いっきり殴ってボコボコにしてやりたいくらい怒っている。まぁ、そんなことを出来るはずもなく、再び可愛いルシオくんで男の人に話す。
「俺…、公爵家の次男なのに回復魔法しか使えなくて、それで、母上と父上に怒られてこの森にきてたんです。だ、だから俺、首輪とか鎖とかそんなもの壊せっこないんだ…、本当は、な、内緒にして欲しかったんですけど…」
「ま、まさかお前、ルシオとか言うやつか?あの無能で有名な?」
まさか無能と噂されているのは知らなかった。これには流石に腹が立ったが、何も言い返せる状況じゃないのは目に見えて分かっている。それに逆にその噂が役に立って、無能な俺が首輪を壊して逃がすことができないことを証明しているのは良かった。でも、結構傷付いたな…。かなり悔しいがグッ~と堪え、取り敢えず頷く。まだ幼い可愛いルシオくんを演じる。
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