1 / 66
一章 過去と今
プロローグ
しおりを挟む
今にも消えてしまいそうな蝋燭の僅かな光しか通さない暗い、薄汚れた牢獄に身も心もボロボロになった青年がいた。
いったいアレから何年経ったんだろうかと拷問のないわずかな休息に、無駄な思考が浮かび上がる。最初こそ覚えていたがもうそんなこと考える余裕がなくて気にしていなかった。毎日来ていた人たちがここ最近は数日に一回ぐらいの頻度になっていた。
何度も折られてしまった手足は治癒魔法で無理やり治されたせいで変な向きへ向き繋がってしまった。そのため自分で体を動かすこともできない。髪の毛は真っ白に変わり、爪も剥がされすぎて生えて来なくなった。目も片方抉られ、残って居る片方の目もほとんど見えていない。この世に魔法というものが存在しなければ確実に狂って死んでもおかしくないだろうに彼はまだ生きていた。
記憶もだんだんと薄れていきたまに自分が誰なのか、なぜここにいるのか忘れてしまうことがある。でも忘れると呪いのようになぜここにいるのかと今までされてきたことが脳裏に流れた。それが拷問の一つだと知ったのは随分後だった。
ぼーっといつものようにただただ時が過ぎるのを待っていれば誰かが近づく気配を感じる。随分前は誰かが近づく気配がしただけで体が震え上がっていたがもうそんな感情すら湧かなくなってしまった。
あぁ、今日はどんな拷問をされるのだろうかと思案していると音もなく扉が開いた。音がなく扉が開く時は決まって精神を中心とした拷問が多くなる。
「、、、」
入ってきたのは想像した通りの人だ。彼は拷問する多くいる人間のうちの1人。
いつもは汚れてもいいように安っぽい服を着ていたが今日は少しだけ綺麗な服を着ていた。
「、、、今日、お前の死刑が決まった」
かすかにしか聞き取れなくなった耳にまるで天使の囁きのような言葉がかけられる。
『死刑』それは彼が心の底から願っていたことだった。明日は明日はと拷問でなく死刑が来ることを望み、打ち砕かれてきた。そこに反応を示しても、どうせ嘘だろう。ごくたまに甘い言葉を囁き、そしてすぐに絶望に落とす。初めされたときは絶望のあまり自害しかけたほどだ。すぐに治癒されてしまったが。
鎖を解かれ歩けない俺を男2人で両脇に抱えながら運びだす。地下深くにある拷問場所から上に上がっていく感覚と、上に上がってくにつれて聞こえてくる音に今日は何かが違うんだと少し前の彼なら気づき希望を見出したかもしれない。だが彼にはもうそんなことも感じるほどの気力はなかった。また絶望することがわかっているからだ。
久しぶりに肌に感じる熱に彼はわずかにも外にでたことは察することができた。先ほどから聞こえていた声が鮮明になって、音として聞こえにくくなっている鼓膜の中へと入ってくる。その声の中に自分の名や立場があり、自分はそんな名前だったと思い出すのだった。
外に出て彼が向かうのは処刑台、彼の血の繋がった家族や国民の大半がいるそんな中に置かれた処刑場に彼は向かっていた。彼の処刑を今か今かと待ち遠しくしているものたちは彼がきたとわかった瞬間に声を張り上げようとしたがそれは音として発せられることはなかった。騒がしかった空気が、一瞬のうちに凍った。
彼を見たものは怒りよりもまず恐怖が身を支配した。
彼の容姿が変わりすぎていて歪すぎて、あれが同じ人間の姿なのかと恐ろしくなってしまったのだ。恨みがあるからこそ死んでほしい、だがそんな恨みよりも哀れと思う心が大きくなってしまい何も言えなくなってしまうのだ。
「こ、これより、罪人アレリア国第三王子フラン・ルイス・ディ・アレリアの処刑を始める」
そんな処刑人からの言葉に国民は我に帰ったように処刑されるものの顔を改めて見るが考えていたであろ罵倒の一言すら浮かぶことはなかった。
後にこの処刑が最も悲惨で最も静かな処刑であり、最も受刑者を哀れに思わせた刑だったと語られることになった。
処刑された王子フランの死顔は言葉では言い表せれないほど何も感じられない無の表情だった。
そんな処刑され魂となったフランは天界へと召された。死したものは多少の差はあれど、基本的に善悪関係なく死後は転生するのを待つのがその世界のルールだった。だがそんなフランを神は許さなかった。理由はただ一つ神の愛子である子供達を傷つけてしまったからだ。
神は許せなかった、だからと言って消滅させることもできないのだ。理に背けば神は全てを統べる創造神により消されてしまう。だからこそ神は彼に機会を与えることにしたのだ。世界を救うための挑戦者として、世界を正す回帰者として、今度こそ愛子達を傷つないという機会を、過去の贖罪のため、そして今度愛子達を傷つければ魂ごと消滅させると彼と魂の契約を結ばせ彼を過去へと戻した。
誰もが耐えられるはずのないほどの拷問を受けた忌わしい記憶を持って・・・
いったいアレから何年経ったんだろうかと拷問のないわずかな休息に、無駄な思考が浮かび上がる。最初こそ覚えていたがもうそんなこと考える余裕がなくて気にしていなかった。毎日来ていた人たちがここ最近は数日に一回ぐらいの頻度になっていた。
何度も折られてしまった手足は治癒魔法で無理やり治されたせいで変な向きへ向き繋がってしまった。そのため自分で体を動かすこともできない。髪の毛は真っ白に変わり、爪も剥がされすぎて生えて来なくなった。目も片方抉られ、残って居る片方の目もほとんど見えていない。この世に魔法というものが存在しなければ確実に狂って死んでもおかしくないだろうに彼はまだ生きていた。
記憶もだんだんと薄れていきたまに自分が誰なのか、なぜここにいるのか忘れてしまうことがある。でも忘れると呪いのようになぜここにいるのかと今までされてきたことが脳裏に流れた。それが拷問の一つだと知ったのは随分後だった。
ぼーっといつものようにただただ時が過ぎるのを待っていれば誰かが近づく気配を感じる。随分前は誰かが近づく気配がしただけで体が震え上がっていたがもうそんな感情すら湧かなくなってしまった。
あぁ、今日はどんな拷問をされるのだろうかと思案していると音もなく扉が開いた。音がなく扉が開く時は決まって精神を中心とした拷問が多くなる。
「、、、」
入ってきたのは想像した通りの人だ。彼は拷問する多くいる人間のうちの1人。
いつもは汚れてもいいように安っぽい服を着ていたが今日は少しだけ綺麗な服を着ていた。
「、、、今日、お前の死刑が決まった」
かすかにしか聞き取れなくなった耳にまるで天使の囁きのような言葉がかけられる。
『死刑』それは彼が心の底から願っていたことだった。明日は明日はと拷問でなく死刑が来ることを望み、打ち砕かれてきた。そこに反応を示しても、どうせ嘘だろう。ごくたまに甘い言葉を囁き、そしてすぐに絶望に落とす。初めされたときは絶望のあまり自害しかけたほどだ。すぐに治癒されてしまったが。
鎖を解かれ歩けない俺を男2人で両脇に抱えながら運びだす。地下深くにある拷問場所から上に上がっていく感覚と、上に上がってくにつれて聞こえてくる音に今日は何かが違うんだと少し前の彼なら気づき希望を見出したかもしれない。だが彼にはもうそんなことも感じるほどの気力はなかった。また絶望することがわかっているからだ。
久しぶりに肌に感じる熱に彼はわずかにも外にでたことは察することができた。先ほどから聞こえていた声が鮮明になって、音として聞こえにくくなっている鼓膜の中へと入ってくる。その声の中に自分の名や立場があり、自分はそんな名前だったと思い出すのだった。
外に出て彼が向かうのは処刑台、彼の血の繋がった家族や国民の大半がいるそんな中に置かれた処刑場に彼は向かっていた。彼の処刑を今か今かと待ち遠しくしているものたちは彼がきたとわかった瞬間に声を張り上げようとしたがそれは音として発せられることはなかった。騒がしかった空気が、一瞬のうちに凍った。
彼を見たものは怒りよりもまず恐怖が身を支配した。
彼の容姿が変わりすぎていて歪すぎて、あれが同じ人間の姿なのかと恐ろしくなってしまったのだ。恨みがあるからこそ死んでほしい、だがそんな恨みよりも哀れと思う心が大きくなってしまい何も言えなくなってしまうのだ。
「こ、これより、罪人アレリア国第三王子フラン・ルイス・ディ・アレリアの処刑を始める」
そんな処刑人からの言葉に国民は我に帰ったように処刑されるものの顔を改めて見るが考えていたであろ罵倒の一言すら浮かぶことはなかった。
後にこの処刑が最も悲惨で最も静かな処刑であり、最も受刑者を哀れに思わせた刑だったと語られることになった。
処刑された王子フランの死顔は言葉では言い表せれないほど何も感じられない無の表情だった。
そんな処刑され魂となったフランは天界へと召された。死したものは多少の差はあれど、基本的に善悪関係なく死後は転生するのを待つのがその世界のルールだった。だがそんなフランを神は許さなかった。理由はただ一つ神の愛子である子供達を傷つけてしまったからだ。
神は許せなかった、だからと言って消滅させることもできないのだ。理に背けば神は全てを統べる創造神により消されてしまう。だからこそ神は彼に機会を与えることにしたのだ。世界を救うための挑戦者として、世界を正す回帰者として、今度こそ愛子達を傷つないという機会を、過去の贖罪のため、そして今度愛子達を傷つければ魂ごと消滅させると彼と魂の契約を結ばせ彼を過去へと戻した。
誰もが耐えられるはずのないほどの拷問を受けた忌わしい記憶を持って・・・
110
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる