巻き戻った王子は幸せを掴む【三章完結】

そろふぃ

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一章 過去と今

1話

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いくつかある大陸の中でも武力・知力・領土など、どれをとっても他国よりも突出している王国があった。代々優秀な王を出してきたことも国が大きくなることに繋がっただろう。そして七代目の国王が統べるアレリア国には誰もが知るだろう話があった。それは「見目麗しい王子・王女がいる」だった。

皇太子である、第一王子アルディナ・ルイス・ディ・アレリア。文武両道であり全てにおいて完璧。若かりし頃の国王に似ておりよく城下へ降りて対話をしていることで国民からの評判もいい。

第一王女である、ミーシャ・ルイス・ディ・アレリア。その優しさと慈悲深さに聖女の再来と言われている。隣国の王子との結婚が決まり自国の貴族子息たちは皆涙を流したと言われている。

第二王子レイドルト・ルイス・ディ・アレリア。隙のない繊細な戦略を立てるのがうまく。多くの武功を立てている。少し体が弱く戦闘には参加しないがそれでも騎士たちのことを考えた戦略を立てることで自国民、騎士団からも好かれている。

第二王女のベルリア・ルイス・ディ・アレリア。音楽や芸術に秀でており彼女の出す歌声は戦争を止め、彼女の書いた絵画は戦争を起こすと言われるほどに素晴らしいものだ。

第四王子ルディアン・ルイス・ディ・アレリア。頭は悪いが戦闘力がずば抜けており幼いながらすでに何度も戦争で武功をあげている。また魔法も使えることから騎士団・魔法士団ともに好かれている。一部から戦闘強と囁かれることもある。

最後に第三王子フラン・ルイス・ディ・アレリア。アレリア国の汚点と言われる存在だ。
国民からは嫌われ、恐怖され、なぜあのようなものが生まれているのか疑問に思われている。優しい兄弟たちからも嫌われており、なぜ国王が見捨てないのか不思議に思っているほどにだ。

フランは王子らと比べると文武には秀でておらず。鍛錬も勉強もしない。唯一王子と並べるのは容姿の良さだけだった。ただただ国の金を娯楽に使うだけの王子だ。貴族からは嫌われ、メイドたちからはその横暴さから恐れられている存在だった。

そんな噂の王子の体に数年分の記憶が流れ込む。神の罰という名の加護がなければ精神が破壊されてもおかしくないほどの残酷な記憶が、、、。数分か数時間か流れこんだ記憶が少し整理され、王子の想いにあるのは神からなされた罰を受け入れることだった。

急に流れ込んできた記憶に気絶することもできずただただ受け入れた。えぐられた目もストレスと恐怖で白くなった髪も、剥がされた爪も、歯も、折れた腕も全て元通りだった。

今がいつで自分が何歳かわからない。おそらく10代前半だ。すでに自分が皆から嫌われていることは理解している。だからこそ自分がするべきことはわかると。神の望むままに、嫌われたまま愛子が幸せになれるように、尽くせばいいのだ。

この拷問された記憶のおかげでどのようなことも受け入れることはできるだろう。愛子が幸せになれば俺はいらない。それまで生きていけばいい。

過去の罪を背負った王子は日が昇るとともにそう決意をする。



* * *



その後、久しぶりの(未来の記憶からしてみれば数年ぶり)ベットに違和感しかなく、仕方なく地面に座りながら朝日が昇るのを待った。七の刻になればメイドが自分の支度をしに来るはずだ。遠い昔の記憶をなんとか思い出しながらまだ自分が王子だった頃にどんなことをしていたのか思い出そうとしても思い出すのは人々を虐げる自分しか思い出せず考えるのをやめた。
体の痛みが一切ないということがこれほどまでに素晴らしいことなのだと改めて認識し今まで暴力を振るってきたものたちに心から謝罪をする。そうこうするうちに7の刻になったのかメイドが訪ねてきた。

「ふ、フラン王子、ちょ、朝食の時間です。は、入ってもよろしいでしょうか」

声を震わせながら言うメイドになんとも言えない思いが込み上げてくる。変に思われないように、ベットに横になり起きあがる。

「あぁ」

「し、失礼します。、、、!ふ、フラン王子か、か、髪が!?」

「?」

髪?驚いたように言うメイドに何を言われたのかわからなかったが、手鏡を見せてもらいなぜ彼女が驚いたのかがわかった。漆黒の髪が一部分だけ白くなっていた。数年分の記憶が急に入ってきたのだからだろう。未来では全部の髪が白くなっていたのだから、一部であるのならまだいい方だろう。

「、、、、、、」

「ふ、フラン王子?」

鏡を見続けている俺に何かあったのかと不安そうにしているメイドに目線を向けるとビクッとし少し震え出していた。

「、、、このままでいい、支度を」

「え、あ、はい!」

怒鳴られると思っていた彼女は思いもよらない言葉をかけられ困惑したがすぐに仕事に取り掛かる。準備を終え本当なら家族での朝食だ。ふと、彼女のことが気になった。フランが牢獄に入る前まではずっと彼女が自分の専属侍女だった。だが、その時のフランは興味がなく顔も微かにしか覚えておらず名前なども覚えていなかった。

「名は?」

「へ?」

「君の名前は?」

「あ、え、は、はい!アリアと申します。王子」

急な問いかけに顔面を蒼白にしながらも答える彼女に段々と申し訳なってくる。

「今日は、、、ここで朝食を食べる。、、、その旨を伝えてきて欲しい」

「え?は、はい。すぐにお伝えいたします。失礼します」

一瞬目を見開いたがすぐに元に戻り部屋を出て行った。驚くのは当たり前だろう。拷問をされるまで俺は何がなんでも家族と、陛下とともに食事を取ろうとしてた。この国の王であり自分の父に気に入られようとしていたのだ。今ならとても迷惑そうにしていたのがわかるが、、、。前までは自分より権力のある存在は父だけだと思っていたのだから仕方ないといえばそうなんだろうが。

10分ほどで部屋に食事が運び込まれ、役目を終えたアリアがそそくさと出ていくのをとめ今が何年のいつなのか聞いた。

「?今は帝国暦498年3の月14日目です」

帝国暦498年なら自分は今14歳ということになる。久しぶりの体からすれば前日ぶりだろう朝食を食べるが思っていた通り味がしない。拷問が始まって1年ぐらいで味覚がなくなり、3年目ぐらいで痛覚がなくなった。見た目が綺麗になったとしても味覚や痛覚などは過度なストレスと恐怖で脳が感じなくなるようにしたのだから記憶が流れ込んでしまった以上感覚がないのは必然だろう。

食事が終わり特にすることがなく、部屋の外に出たとしてもどうせ怯えられ、邪魔者扱いされるだけだ、だったら部屋にこもっていた方が皆のためになるだろう。本でも読めれば多少いいのかもしれないが自分が本を部屋に置くはずもなく仕方なく窓に腰掛けただただ外を眺めるだけにした。

その後は昼食と夕食も部屋で取るようにして一日中部屋で過ごすこと1週間ほど経った。
今日もいつものように支度し部屋で朝食を食べることをアリアに伝えようとすると。

「す、すいませんフラン王子。今日は国王陛下より、ご一緒にお食事を取るようにと申し付けられております」

「!、、、わかった」

何もしなければ嫌いな自分のことは放置して好きな家族と一緒に食事をするだろうと思ったんだが、逆に急に食事の席に行かないのは不自然だったかもしれない。

記憶が入ってきて1週間ぶりに部屋の外に出る。前を歩くアリアについていきながらたびたびあうものたちの顔は一様に怯えの表情だった。俺を見て怯えすぐに頭を下げる。これが第一王子、皇太子ならば笑顔で挨拶をして頭を下げるのだろう。そのあとは軽く会話をするはずだ。

「第三王子フラン様をお連れしました」

アリアがそういうとすぐに扉が開く。中にはすでに他の家族が集まっていた。

「、、、、」

俺を見る家族の目は蔑んだような目をしていた。前の俺は気づかなかっただろうが、この目は嫌というほど見ているので今ならわかる。第二王子と第四王子の間の空いた席に座り、朝食が始まる。静かな食卓の中に少しだけ嫌な空気が流れる。いつものフランならば陛下に媚を売りだし、宝石をねだったりとそれはもう煩わしいからだろう。それが今日は静かにしかも数日朝食も夕食も訪れないのだから王子たちも陛下も皆フランが何か企んでいると思っているのだ。

何も話さないフランに痺れを切らした第四王子、ルディアンが話を切り出した。

「フランお兄様。この1週間なぜ食事を一緒に取らなかったんだ?何かしてた?」

親しみ深い笑顔を向けながらフランに問う。もちろん目は笑ってない。
他のものたちも気になるのだろうフランの返答を待っていた。

「特に、、、何も」

「、、、じゃあなんでこなかったの?あとその髪染めた?」

「、、、特に理由はない」

淡々と答え、目も合わそうとしないフランにルディアンは段々と苛立ちを感じていた。
話を終わったかのように食事を再度始めるフランにそれを見守っているものたちは温度が数度下がるのを感じた。

「食事は好きなところで取ればいい。今日は一月後に来るシルベニア国についての話だ」

陛下の言葉に食事をしていたフランの手が止まる。不確かな記憶の中でもその時のことは、はっきりと覚えている。隣国のシルベニア国の第一王子がこの国の第一王女との結婚をするためにこちらに来るのだ。フランは過去、犯してはならない罪を犯した。そのせいでアレリア国はシルベニア国に多くの謝礼金を渡す羽目になり、埋めることのできない溝が出来てしまったのだ。

「ミーシャとの結婚のためベイル王子が来る。また第2王女のミレイ王女も付き添いとしてくる。失礼のないようにしろ。滞在は一ヶ月ほど、その間に婚姻を済まし、結婚式にはアルベリアたちも参加する。それまでに各自準備をしなさい」

アルベリア様はシルベリアの女王陛下で、陛下と王妃の古い友人だ。

「わかりました。父上、ハルト様も来るのですか?」

「いや、王族が全て国を離れるわけには行かないからな、アルベリアたちが来ることになって国に残るそうだ」

「そうですか、、、」

「ふふ、アルはハルト様と仲がよろしいですものね」

和やかな空気に少しずつ戻っていく中ルディアンだけはフランを睨み続けた。
フランはその視線に気づいていたが反応したらまた何か言ってきそうなので気づかないふりをした。

(結婚式には出席しなければならないけどそのあとのパーティーには別に参加しなくてもいいはずだ。神様の言う愛子のなかにベイル王子も含まれていたはずだからできれば合わない方がいいんだけど、流石にそれはできないからできるだけ接触しないようにしないと、、、)

黙々と食べ続け最後のデザートを食べ終わったところで席をたち部屋に戻ることにした。

「フラン」

扉を通る寸前に陛下に呼び止められる。

「、、、なにか」

「、、、、隣国のものたちに失礼なことをするな。その時は「わかった」!?」

普通なら陛下の言葉を妨げるのは不敬なのだがその先は聞かなくても何が言いたいのかわかるので遮り、部屋に来てからできるだけ顔を合わせないように皆の首だけを見ていたが、俺は久しぶりに陛下の目を家族たちの顔を正面からちゃんと見た。

「迷惑は、、、かけ、ません」

「、、、、そ、そうか」

陛下はなぜか驚いた顔をしていたが、そこで話は終わったのでフランは部屋に戻った。






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