巻き戻った王子は幸せを掴む【三章完結】

そろふぃ

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一章 過去と今

11話 

フランはその後3日ほど寝込んだが一旦熱が下がればその後は早く直ぐに体調はいつも通りに戻った。少し変わったことといえば、本を読むのが部屋ではなく庭になったことやなぜか陛下や王子、王女らが遊びに来るようになった。
ミーシャは風邪が治るまで隣国には行かず、治った後も数日はこちらに残っていてくれ十分にお別れを言うことができた。
また会いにくると、いつでもこちらに来てもいいと言ってくれてまた胸がポカポカと暖かくなって嬉しく思った。

庭園にはアリアと2人で来ることもあればみんなで来ることもある彼らはこちらが話さずとも色々と話を振り話しは途切れることを知らず本を読む暇がないほど話し合うことだってある。嫌ではない、むしろ嬉しくあるのだはフランはそんな急な行いに若干の戸惑いを隠せなかった。

「フラン様、今日は少し日差しが強いので水分をきちんとお取りくださいね」

「ん、、、」

アリアにそう言われて少し喉が渇いていることに気づく、目の前にある冷たいレモンティを飲み喉を潤すとスッと満たされた気持ちになった。

「失礼致します」

「何ようですか?」

もう一度本に目線を向けようとした時誰かがやってくる。
サッとアリアが間に入ってくれる。

「第三王子フラン様へお手紙を預かっております」

「わかりました、ご苦労様です」

そう言ってアリアは手紙を受け取りフランの元へと持ってくる。
手紙の主はアルベルト伯爵だ。
内容はいつもなら多くて週に一度、少なくとも月に2度は屋敷に来ていたであろうフランがぱたりとこなくなり、フランに罪を被せることができそうにないので自らフランを屋敷に招待する旨が書かれた手紙であった。

何をするかなど明確に描いていないが『新しいおもちゃ』と書いてあることからまた珍しい奴隷を手に入れたのだろう。奴隷はこの国で基本非合法であり、唯一認められているものは罪人の労働奴隷だけだ。その労働奴隷であっても罪状の分の労働を終えれば労働奴隷ではなくなり平民として戻ることができる。それなのに、罪が一切ない、しかもその多くは幼い子供たちであり、それらを多く飼っているアルベルト伯爵はバレて仕舞えば処刑にされてしまうだろう。

「、、、、アリア、便箋を」

「はい、すぐお持ちしますね」

告発するのは簡単だが何かがフランを止めてしまう。彼を告発すれば今までフランがしていたことがわかってしまうことだろう。そうすれば今、親しく接してくれているあの人たちはもう2度と優しい目で自分を見てくれない。フランはそれが恐ろしいのだ。

アリアに持ってきてもらった手紙には、行けないこと、今まで自分がしてきたことがどれだけ愚かだったか、そしてもう奴隷を買うのをやめるようにと簡潔に書きアルベルトの元へ送った。

これでもう大丈夫だと安心していたのが間違えだった。

手紙を送り返したから1週間ほどでまたフランの元に手紙が届いた。今度はプレゼントと共にだ。

プレゼントをアリアが一度開き危険物ではないことを確認後フランの元へ持ってくる。

「こちらです」

「?、、、!?」

箱に綺麗に包装され、しまわれていたのはとても美しい宝石だった。しかしその宝石はただの宝石ではない。一眼で違いがわかるものも多くはないがフランには身に覚えがあったためすぐに分かった。記憶に何度も刻まれてきた自分の行いの中でこの宝石はとても見覚えがあった。

セイレーンと呼ばれる、希少種の種族が身に埋め込んであるものだ。実際は宝石などではなく魔力が塊ったものだ。それは魔法石と呼ばれていた。セイレーンはその身も魔法石も美しさゆえに大昔は多く狩られていたが。今では意思疎通ができることから『人』と同等と言う考えから狩ることは禁止されている。そして、フランが記憶を思い出さなければ殴り、罵倒していたであろう人たちだ。色も形もそのまま、そしてこの魔法石がここにあると言うことはそのセイレーンは殺されてしまったのだろう。魔法石を抜かれてしまうと言うことは魔力を循環させていた器官を取られていたと言うことだ。魔物に近いセイレーンたちは魔力がなければ生きていけない。人間で言えば心臓を抜き取られるような物だ。フランは震える手で手紙を開ける。

そこには一文だけ書かれていた。


『来ていただけることを、心待ちにしております。フラン王子』


「っ!」

「!王子、大丈夫ですか?」

手紙を握りしめて震えるフラン王子に不思議に思い声をかける。あからさまにびくつき怯えながらも瞳はアリアの眼を見ていた。

「、、、あ、、、。アリア」

「はい?」

「馬車の、、、準備を、、、」

「!?しかし、、、」

「へい、、、父様には自分で言うから、、、」

「、、、わかりました」

渋々と言った感じでアリアは馬車の準備へ向かった。

行きたくなくてしばらくぼーっとしていたがアリアに自分で言うと言った以上いかなければならないだろう。

自分から陛下、父様の元へ向かうのはここに来て初めてではないだろうか、ゆっくりと、しかし着実に向かっていて少し鼓動が早くなる。アルベルト伯爵の元へ行くと言うことの意味を陛下はおそらく知っているだろう。知っていてしばらく放置し確実な証拠を着実と集めていたのだ。

そして今回、フランが伯爵の元へ自ら行くとなればあの優しい目はもうむけてくれないだろう。胸の辺りがちくちくと痛む。これは何なのだろうか、たまになるこの感覚は、、、。
またアリアに聞いてみようかと考えているうちに部屋の前まで来てしまう。

護衛は俺の姿を見るや否やまるでゴミを見るような蔑んだ目で見てくる。こんなあからさまな視線になぜ昔は気づかなかったんだろうか。

「第三王子様、ご用件は?」

「、、、、」

ここで行って伝えて貰えば直接言わなくても済むんじゃないのかと少し心が軽くなった。

「陛下に、出かける旨を「フランか?」、、、」

「陛下!?」

「入りなさい、話があるんだろう?」

「、、、、はい」

優しく声をかけられながら中に一緒に入る。
中には皇太子も一緒に仕事をしていたのかいた。そしてもう1人、城下へ降りた時に出会ったあの時の騎士ロイドだった。

「やぁ、フランじゃないか。ここにくるなんて、、、もしかして俺に会いに来てくれたのかな?」

「、、、、この場合、ここはわたしの部屋なのだから、わたしに会いに来たんだろう?」

「?、、、えっと、、、」

なにやら見つめ合っている2人の気迫に何と返せばいいのかわからず狼狽えていると騎士が話しかけてくる。

「第三王子様、お久しぶりでございます。お二人のことは無視して構いませんので、何か御用があったのでしょう?」

「あ、、、、えっと、外に、、、」

「あぁ、アルベルト伯爵の家に行きたいんだろう?」

「え!?」

言う前にまさかの陛下に先に言われた。なぜ知っているのか眼を大きく開いて陛下をじっと見てしまう。

「フラン、基本個人的な手紙などはね一度なにが書かれているのかを確認してから、俺たちのところに回ってくるんだ。もちろん送る手紙もね」

「そ、っか、、、あの、、、」

「わかっているよ。今までお前がしてきたことは絶対許されないことだ。だからこそこれからの態度で示していくしかない。これは分かるね?」

「、、、、うん」

「一人で行かせるのは危険だ。そいつを護衛に連れてけ、無駄に頑丈にできているから盾だと思えばいい」

「え?ごえい??」

「はい、改めましてロイドヴァルトと申します。長いのでロイドとお呼びください。フラン王子、伯爵家までは距離がありますので道中なにがあるかもわかりません。ご一緒いたします」

「??うん」

「フラン、要件終わったらすぐ戻ってくるんだよ?」

肩を掴まれマジかでそう言われれば頷くしかないだろう。

外にはすでに場所の用意ができていて、近くにはなにやら荷物を持ったアリアがいる。

「フラン王子わたしもご一緒してもよろしいですか?」

「!、、、いいの?」

「えぇ、アルベルト伯爵様にはあまりフラン様に近づいて欲しくないので」

「?」

本来なら行けないだろうがいつのまにか陛下から許可をもらっていて同じ馬車に乗った。ちなみにロイドは馬に乗ってついてきていた。
不安だった心が少しだけ軽くなり、フランは目的地に向かった。






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