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化け猫騒動
3.仲間集め―クシナ・トネリ―
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配達先から戻ると、店の裏口に刀が一振り立てかけてあった。細やかな飾りのついた、綺麗な鞘。一目で上等なものだと分かる。
その横に、女が一人立っていた。長い黒髪を頭頂部で無造作に結い上げた、十二、三ほどの少女だ。やれやれとクシナ・トネリは肩を竦めた。
「こんなところで、何をなさっていらっしゃるんですか?」
「貴様を待っていた」
子供が居る時間じゃないと窘めると、少女は横柄な口調で顎をしゃくる。さらりと頬に流れる髪が、妙に色っぽかった。
「私を?何故?」
「天子様の命令だ。私の下で働け」
一瞬の間。直後、トネリは腹を抱えて笑い出した。少女は目を丸くして、笑い転げるトネリを見ている。
「なにが……おかしい」
呆然とした口調のまま問う彼女が余計可笑しい。笑い続けるトネリは、彼女が顔を真っ赤に染めているのに気付いて、こみ上げる笑いを収めた。
「失礼」
「何がおかしいんだ!」
唇を噛みしめ、少女は小刻みに震えていた。そんなところはやはり子供だ。
「私が、あなたの下で働く?一体何の冗談ですか、エキ大臣のお嬢さん」
横柄な少女の仮面が、一瞬で外れる。
「なっ、だから、どうして……!」
「なにが、だからどうしてなんです?私があなたをの下で働くことを断ること?それとも、私があなたを知っていることでしょうか?」
「どっちも、だ」
うー……と唸るマアサ。トネリはそれを笑った。
「どうして断る、天子様の命だぞ!」
「だから?」
噛みつくマアサの髪に、指を滑らせる。驚いて目を見開き、彼女は大げさに頭を振った。
「何するんだ!」
叫ぶマアサの反応が面白い。トネリは笑いを噛み殺して言った。
「いえ、綺麗な髪だと思ったら、つい」
「ついで人の髪を触るんじゃない、無礼者め!」
「無礼で結構。私は心の赴くままに生きていたいんです。それに、天子様は私のために何もしてくれないでしょう?」
そんな人の言うことを聞いて何か利益があるのか。それだけならばと言い残して裏口の戸に手をかけた瞬間。
「今の三倍の月収……」
ぼそりと落とされたマアサの呟きに、トネリの体が固まった。
「――今、何と?」
「……気にするな、独り言だ」
少女の頬に嫌な微笑が浮かぶ。トネリは振り返り、じっと少女の目を見つめた。
「月収が三倍?」
「交渉次第では、な」
月収が三倍、月収が三倍、月収が三倍、月収が…………。
トネリの頭の中を、言葉がぐるぐると廻る。
「やります!」
気が付くと彼は、マアサの手をガッチリと握っていた。
トネリがマアサに嵌められたのだと気付いたのは、ずっと後のこと……。
その横に、女が一人立っていた。長い黒髪を頭頂部で無造作に結い上げた、十二、三ほどの少女だ。やれやれとクシナ・トネリは肩を竦めた。
「こんなところで、何をなさっていらっしゃるんですか?」
「貴様を待っていた」
子供が居る時間じゃないと窘めると、少女は横柄な口調で顎をしゃくる。さらりと頬に流れる髪が、妙に色っぽかった。
「私を?何故?」
「天子様の命令だ。私の下で働け」
一瞬の間。直後、トネリは腹を抱えて笑い出した。少女は目を丸くして、笑い転げるトネリを見ている。
「なにが……おかしい」
呆然とした口調のまま問う彼女が余計可笑しい。笑い続けるトネリは、彼女が顔を真っ赤に染めているのに気付いて、こみ上げる笑いを収めた。
「失礼」
「何がおかしいんだ!」
唇を噛みしめ、少女は小刻みに震えていた。そんなところはやはり子供だ。
「私が、あなたの下で働く?一体何の冗談ですか、エキ大臣のお嬢さん」
横柄な少女の仮面が、一瞬で外れる。
「なっ、だから、どうして……!」
「なにが、だからどうしてなんです?私があなたをの下で働くことを断ること?それとも、私があなたを知っていることでしょうか?」
「どっちも、だ」
うー……と唸るマアサ。トネリはそれを笑った。
「どうして断る、天子様の命だぞ!」
「だから?」
噛みつくマアサの髪に、指を滑らせる。驚いて目を見開き、彼女は大げさに頭を振った。
「何するんだ!」
叫ぶマアサの反応が面白い。トネリは笑いを噛み殺して言った。
「いえ、綺麗な髪だと思ったら、つい」
「ついで人の髪を触るんじゃない、無礼者め!」
「無礼で結構。私は心の赴くままに生きていたいんです。それに、天子様は私のために何もしてくれないでしょう?」
そんな人の言うことを聞いて何か利益があるのか。それだけならばと言い残して裏口の戸に手をかけた瞬間。
「今の三倍の月収……」
ぼそりと落とされたマアサの呟きに、トネリの体が固まった。
「――今、何と?」
「……気にするな、独り言だ」
少女の頬に嫌な微笑が浮かぶ。トネリは振り返り、じっと少女の目を見つめた。
「月収が三倍?」
「交渉次第では、な」
月収が三倍、月収が三倍、月収が三倍、月収が…………。
トネリの頭の中を、言葉がぐるぐると廻る。
「やります!」
気が付くと彼は、マアサの手をガッチリと握っていた。
トネリがマアサに嵌められたのだと気付いたのは、ずっと後のこと……。
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