疑わしきは

青木倫

文字の大きさ
2 / 3

狂想曲

しおりを挟む
僕に対する視線の軽蔑化と同時に僕に対するみんなの態度も大きく変わっていった。
人間というものは共通の敵があれば、より強い結束が築かれる。僕はその共通の敵になってしまったわけだ。
最初こそは嫌がり、反対する人もいたが、室見が裏に呼び出せば、すぐに態度を翻した。室見のやり方は根っからの覇道だったが、圧倒的支配力をもつ室見には反抗するものも現れなかった。
罰である掃除期間が終わった後でも、その仕打ちは続いた。今まで友達と話すことが一番の楽しみだった僕にとっては無視されることは非常に耐え難いことだった。
結局、卒業までそれは続き、僕は私立の中学に受験し、それ以来小学校の誰にも会っていない。
いじめを受けているときは全くもって何故僕がいじめられないといけないのかと毎日考えていた。
でも今なら分かる。単に邪魔だったのだ。うるさかったのだ。煩わしかったのだ。
今の僕がその場にいればきっと僕もいじめるだろう。現に、高校生の僕はクラスのうるさい男子の息が止まるまでいじめてやりたい。クラスの中で騒がしくすることでストレスを発散させるなんて今時子供でもしないだろう。
だが、いじめることで自分の欲求不満を満たすのも他人の迷惑を顧みない。まさに子供の権化のようなものである。僕はそのような低俗な発散はしたくない。他人に、すなわち人間に迷惑を掛けない行為だけを行えばよいのだ。

じめじめしている。学校の裏庭は人で溢れた教室と似ている気候をしているが、全く違う不快感を感じる。無数に生い茂る雑草を足で踏み倒しながら周りを気にせずただひたすら進むと、目的地に辿り着いた。
裏庭のビオトープには太陽光が届かないからか草花の成長が遅れている。背丈がくるぶしに満たないものばかりだ。そして計画性の無さによって数年で形骸化したビオトープからは生命の香りは漂わず、腐敗臭だけがその場を取り巻いていた。
そんな場所にこそ奴カエルは潜んでいる。僕は腰を降ろして静かに息を止めた。
すると、すぐに近くの草影の揺れを認知した。それを合図に僕はその影に手を伸ばした。
ビンゴ。僕はその生暖かいカエルを捕まえると、持っていたハンカチでカエルの足をきつく縛り上げ、その足を強くつまんだ。カエルの動きが激しくなる。じたばたと、あがき、もがくように動く。
堪らない。この生き物の生殺与奪の権を握っている感覚、道徳的教えに背く背徳感。全てが最高値に達している。
カエルの動きが弱まり始めた。それはただ体力の限界なのか。それとも自分の死期を察し、潔く死を受け入れたのか。どちらにしても僕の不快感を増幅させた。カエルを地面に向かって叩きつけると、動きが止まりかけているカエルに側にあった岩を思いっきり投げつけた。汚い汁が飛び散る。一瞬にして蒸し暑い現実に引き戻される。不快だ。
その時背中に視線を感じた。これは小学生のときに感じた畏怖が混ざったものだった。あいつだ。クラスのうるさい男子だ。まずいところを見られた。この事をばらされると、今後の行動の範囲が狭まってしまう。どうする?どうする?
そんな自問自答を繰り返していたが、最初から次の行動は決まっていた。ただ、自分の中の数少ない善意がお節介にもブレーキをかけていただけだった。
僕はその善意を体から溢れ出す殺意で圧し殺し、あいつの後を追った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

処理中です...