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狂想曲
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僕に対する視線の軽蔑化と同時に僕に対するみんなの態度も大きく変わっていった。
人間というものは共通の敵があれば、より強い結束が築かれる。僕はその共通の敵になってしまったわけだ。
最初こそは嫌がり、反対する人もいたが、室見が裏に呼び出せば、すぐに態度を翻した。室見のやり方は根っからの覇道だったが、圧倒的支配力をもつ室見には反抗するものも現れなかった。
罰である掃除期間が終わった後でも、その仕打ちは続いた。今まで友達と話すことが一番の楽しみだった僕にとっては無視されることは非常に耐え難いことだった。
結局、卒業までそれは続き、僕は私立の中学に受験し、それ以来小学校の誰にも会っていない。
いじめを受けているときは全くもって何故僕がいじめられないといけないのかと毎日考えていた。
でも今なら分かる。単に邪魔だったのだ。うるさかったのだ。煩わしかったのだ。
今の僕がその場にいればきっと僕もいじめるだろう。現に、高校生の僕はクラスのうるさい男子の息が止まるまでいじめてやりたい。クラスの中で騒がしくすることでストレスを発散させるなんて今時子供でもしないだろう。
だが、いじめることで自分の欲求不満を満たすのも他人の迷惑を顧みない。まさに子供の権化のようなものである。僕はそのような低俗な発散はしたくない。他人に、すなわち人間に迷惑を掛けない行為だけを行えばよいのだ。
じめじめしている。学校の裏庭は人で溢れた教室と似ている気候をしているが、全く違う不快感を感じる。無数に生い茂る雑草を足で踏み倒しながら周りを気にせずただひたすら進むと、目的地に辿り着いた。
裏庭のビオトープには太陽光が届かないからか草花の成長が遅れている。背丈がくるぶしに満たないものばかりだ。そして計画性の無さによって数年で形骸化したビオトープからは生命の香りは漂わず、腐敗臭だけがその場を取り巻いていた。
そんな場所にこそ奴カエルは潜んでいる。僕は腰を降ろして静かに息を止めた。
すると、すぐに近くの草影の揺れを認知した。それを合図に僕はその影に手を伸ばした。
ビンゴ。僕はその生暖かいカエルを捕まえると、持っていたハンカチでカエルの足をきつく縛り上げ、その足を強くつまんだ。カエルの動きが激しくなる。じたばたと、あがき、もがくように動く。
堪らない。この生き物の生殺与奪の権を握っている感覚、道徳的教えに背く背徳感。全てが最高値に達している。
カエルの動きが弱まり始めた。それはただ体力の限界なのか。それとも自分の死期を察し、潔く死を受け入れたのか。どちらにしても僕の不快感を増幅させた。カエルを地面に向かって叩きつけると、動きが止まりかけているカエルに側にあった岩を思いっきり投げつけた。汚い汁が飛び散る。一瞬にして蒸し暑い現実に引き戻される。不快だ。
その時背中に視線を感じた。これは小学生のときに感じた畏怖が混ざったものだった。あいつだ。クラスのうるさい男子だ。まずいところを見られた。この事をばらされると、今後の行動の範囲が狭まってしまう。どうする?どうする?
そんな自問自答を繰り返していたが、最初から次の行動は決まっていた。ただ、自分の中の数少ない善意がお節介にもブレーキをかけていただけだった。
僕はその善意を体から溢れ出す殺意で圧し殺し、あいつの後を追った。
人間というものは共通の敵があれば、より強い結束が築かれる。僕はその共通の敵になってしまったわけだ。
最初こそは嫌がり、反対する人もいたが、室見が裏に呼び出せば、すぐに態度を翻した。室見のやり方は根っからの覇道だったが、圧倒的支配力をもつ室見には反抗するものも現れなかった。
罰である掃除期間が終わった後でも、その仕打ちは続いた。今まで友達と話すことが一番の楽しみだった僕にとっては無視されることは非常に耐え難いことだった。
結局、卒業までそれは続き、僕は私立の中学に受験し、それ以来小学校の誰にも会っていない。
いじめを受けているときは全くもって何故僕がいじめられないといけないのかと毎日考えていた。
でも今なら分かる。単に邪魔だったのだ。うるさかったのだ。煩わしかったのだ。
今の僕がその場にいればきっと僕もいじめるだろう。現に、高校生の僕はクラスのうるさい男子の息が止まるまでいじめてやりたい。クラスの中で騒がしくすることでストレスを発散させるなんて今時子供でもしないだろう。
だが、いじめることで自分の欲求不満を満たすのも他人の迷惑を顧みない。まさに子供の権化のようなものである。僕はそのような低俗な発散はしたくない。他人に、すなわち人間に迷惑を掛けない行為だけを行えばよいのだ。
じめじめしている。学校の裏庭は人で溢れた教室と似ている気候をしているが、全く違う不快感を感じる。無数に生い茂る雑草を足で踏み倒しながら周りを気にせずただひたすら進むと、目的地に辿り着いた。
裏庭のビオトープには太陽光が届かないからか草花の成長が遅れている。背丈がくるぶしに満たないものばかりだ。そして計画性の無さによって数年で形骸化したビオトープからは生命の香りは漂わず、腐敗臭だけがその場を取り巻いていた。
そんな場所にこそ奴カエルは潜んでいる。僕は腰を降ろして静かに息を止めた。
すると、すぐに近くの草影の揺れを認知した。それを合図に僕はその影に手を伸ばした。
ビンゴ。僕はその生暖かいカエルを捕まえると、持っていたハンカチでカエルの足をきつく縛り上げ、その足を強くつまんだ。カエルの動きが激しくなる。じたばたと、あがき、もがくように動く。
堪らない。この生き物の生殺与奪の権を握っている感覚、道徳的教えに背く背徳感。全てが最高値に達している。
カエルの動きが弱まり始めた。それはただ体力の限界なのか。それとも自分の死期を察し、潔く死を受け入れたのか。どちらにしても僕の不快感を増幅させた。カエルを地面に向かって叩きつけると、動きが止まりかけているカエルに側にあった岩を思いっきり投げつけた。汚い汁が飛び散る。一瞬にして蒸し暑い現実に引き戻される。不快だ。
その時背中に視線を感じた。これは小学生のときに感じた畏怖が混ざったものだった。あいつだ。クラスのうるさい男子だ。まずいところを見られた。この事をばらされると、今後の行動の範囲が狭まってしまう。どうする?どうする?
そんな自問自答を繰り返していたが、最初から次の行動は決まっていた。ただ、自分の中の数少ない善意がお節介にもブレーキをかけていただけだった。
僕はその善意を体から溢れ出す殺意で圧し殺し、あいつの後を追った。
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