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二冊目 腐女子泣かせのアイドル ~WINGSのライブ潜入レポ
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「お、もう帰るのか」
「すみません、光の体調がまだ完全じゃないみたいなので」
「そうか、まあしょうがないな。今日のパフォーマンスも楽しかったぞ。女子ファンが無駄に増えたみたいで、外で待ち構えてるようだから気を付けて」
「ありがとうございます」
どのみち高校生である以上、大人たちにアルコールが回る深夜帯までは居座れない。ここでのバイトや出場を許されている時間は22時まで。すでに時計の針はその時間を指していたし、激しいキスに無我夢中になった結果、やはり立てなくなってしまった光は気絶したように寝落ちてしまった。
オーナーやライブハウスのスタッフ数人に解散の挨拶を交わし、勝行は乱れたスーツの襟元をしゅっと手直しながら、入り口の重い扉を少しばかり開けた。
「きゃあああ、カツユキ!」
「今日のライブよかったよお!」
「ありがとう」
ドアの向こうが見えないくらいの出待ちファンの数に驚きつつ、勝行はいつも通りの笑顔を見せた。
「今日はもう遅いから、みんなも気を付けて帰ってね」
「ヒカルはまだー?」
「ああ……光は、暴れすぎたから疲れたみたい。いつも挨拶にこなくてごめんね」
「そんなこと気にしないよぉ!」
「ヒカルはぶっきらぼうだから好きなのっ」
「ねーっ」
「今日のライブもめちゃくちゃ楽しんでたね」
「カツユキのこと、大好きなんでしょー」
「あ……ははは……そう、かな」
「キスしても怒らないであげてねカツユキ!」
あんなに偉そうな俺様で、無茶苦茶なパフォーマンスでも、その求心力は半端ない。まあ、自身もその魔性の魅力に憑りつかれたうちの一人だけれど。勝行は苦笑しながら女子ファンたちの話相手を適当に切り上げると、じゃあねと扉を閉めかけて、ふと手を止めた。
目の前にいたファンたちから、発狂のような悲鳴が上がる。
「きゃあああっ」
「やだあああー!」
「なー、何やってんの勝行……」
「ひ、光っ。起きたのか?」
いつの間にか起きてきた光が、勝行の後ろから思いきり抱きついて、肩に顔をのせていた。気だるげに凭れたまま、仏頂面の口を尖らせる。
「まーた女たらしこんでんの……?」
「そんなことしないよ。ファン相手に何言ってんだ、お前」
「ふーん……」
背後から勝行にべったりくっつく光を見た目の前にいるファンのほとんどが目をハートにして黄色い雄叫びを上げている。二人の甘ったるい光景をみて「ごちそうさまです……」と倒れそうになる女子もいれば、「鼻血でるうう」と抱き合う者まで。
「ほら……みんな光と話がっていたお前のファンの子なんだよ、ちゃんとお礼の挨拶くらいしていきなよ」
「はあ……そうは見えねえけどな……」
勝行はどうやら男同士のいちゃいちゃを楽しむ女子ファンをあまりよく理解していないらしい。むしろ昔から身近に腐女子の知り合いがいたせいで、こういう対応には慣れている光は、すっとぼけたことを言い出す勝行の顔にわざと頬を摺り寄せながら、甘ったれた声をあげた。
「なあ、そんなことより早く帰ろ」
「ちょ、近いって、ヤメロ! お前、挨拶は!」
「……勝行が冷たい……」
しょぼん、と光が寂し気にぼやいた途端、目の前のファンの群れから更なる悲鳴が飛び上がった。頭を抱えて泣き叫ぶ者、目が潰れそうじゃとのけぞりながらもがっつり二人を凝視する者。
ファンはみんな、光の味方だった。
「あああっ、なんて美味しいシチュエーションなのおお!」
「甘えてるヒカルがかわいすぎてつらいいいい」
「なにこれツンデレわんこ受け!? 甘々!? カツユキ優しくしてあげてえっ」
「は、はあ……?」
ファンの言っている意味が分からないまま首を傾げる勝行に抱き着いたまま、光はファンをしっしと追い払うような仕草で手を振った。
「じゃーな、お前ら。またライブで遊ぼうな」
「ヒカルありがとおおお!」
「おー」
言うが早いか、バタン、と無遠慮にドアは閉められた。
「お、もう帰るのか」
「すみません、光の体調がまだ完全じゃないみたいなので」
「そうか、まあしょうがないな。今日のパフォーマンスも楽しかったぞ。女子ファンが無駄に増えたみたいで、外で待ち構えてるようだから気を付けて」
「ありがとうございます」
どのみち高校生である以上、大人たちにアルコールが回る深夜帯までは居座れない。ここでのバイトや出場を許されている時間は22時まで。すでに時計の針はその時間を指していたし、激しいキスに無我夢中になった結果、やはり立てなくなってしまった光は気絶したように寝落ちてしまった。
オーナーやライブハウスのスタッフ数人に解散の挨拶を交わし、勝行は乱れたスーツの襟元をしゅっと手直しながら、入り口の重い扉を少しばかり開けた。
「きゃあああ、カツユキ!」
「今日のライブよかったよお!」
「ありがとう」
ドアの向こうが見えないくらいの出待ちファンの数に驚きつつ、勝行はいつも通りの笑顔を見せた。
「今日はもう遅いから、みんなも気を付けて帰ってね」
「ヒカルはまだー?」
「ああ……光は、暴れすぎたから疲れたみたい。いつも挨拶にこなくてごめんね」
「そんなこと気にしないよぉ!」
「ヒカルはぶっきらぼうだから好きなのっ」
「ねーっ」
「今日のライブもめちゃくちゃ楽しんでたね」
「カツユキのこと、大好きなんでしょー」
「あ……ははは……そう、かな」
「キスしても怒らないであげてねカツユキ!」
あんなに偉そうな俺様で、無茶苦茶なパフォーマンスでも、その求心力は半端ない。まあ、自身もその魔性の魅力に憑りつかれたうちの一人だけれど。勝行は苦笑しながら女子ファンたちの話相手を適当に切り上げると、じゃあねと扉を閉めかけて、ふと手を止めた。
目の前にいたファンたちから、発狂のような悲鳴が上がる。
「きゃあああっ」
「やだあああー!」
「なー、何やってんの勝行……」
「ひ、光っ。起きたのか?」
いつの間にか起きてきた光が、勝行の後ろから思いきり抱きついて、肩に顔をのせていた。気だるげに凭れたまま、仏頂面の口を尖らせる。
「まーた女たらしこんでんの……?」
「そんなことしないよ。ファン相手に何言ってんだ、お前」
「ふーん……」
背後から勝行にべったりくっつく光を見た目の前にいるファンのほとんどが目をハートにして黄色い雄叫びを上げている。二人の甘ったるい光景をみて「ごちそうさまです……」と倒れそうになる女子もいれば、「鼻血でるうう」と抱き合う者まで。
「ほら……みんな光と話がっていたお前のファンの子なんだよ、ちゃんとお礼の挨拶くらいしていきなよ」
「はあ……そうは見えねえけどな……」
勝行はどうやら男同士のいちゃいちゃを楽しむ女子ファンをあまりよく理解していないらしい。むしろ昔から身近に腐女子の知り合いがいたせいで、こういう対応には慣れている光は、すっとぼけたことを言い出す勝行の顔にわざと頬を摺り寄せながら、甘ったれた声をあげた。
「なあ、そんなことより早く帰ろ」
「ちょ、近いって、ヤメロ! お前、挨拶は!」
「……勝行が冷たい……」
しょぼん、と光が寂し気にぼやいた途端、目の前のファンの群れから更なる悲鳴が飛び上がった。頭を抱えて泣き叫ぶ者、目が潰れそうじゃとのけぞりながらもがっつり二人を凝視する者。
ファンはみんな、光の味方だった。
「あああっ、なんて美味しいシチュエーションなのおお!」
「甘えてるヒカルがかわいすぎてつらいいいい」
「なにこれツンデレわんこ受け!? 甘々!? カツユキ優しくしてあげてえっ」
「は、はあ……?」
ファンの言っている意味が分からないまま首を傾げる勝行に抱き着いたまま、光はファンをしっしと追い払うような仕草で手を振った。
「じゃーな、お前ら。またライブで遊ぼうな」
「ヒカルありがとおおお!」
「おー」
言うが早いか、バタン、と無遠慮にドアは閉められた。
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