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四冊目 りんごあめと白雪王子 ~絶対恋愛関係にならない二人の最後の夏休み
つまらない夏休み……①
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ファーストアルバムの制作が順調に進み、本格的な盛夏を迎える頃には一通りの撮影も録音も終わっていた。
もうすぐ夏休みだから遊べるかな、と思いきや、春からずっと鬼のように息つく暇もなく仕事を回されて、体力の尽きた今西光は、風邪を拗らせて肺炎を起こし、入院してしまった。
梅雨が明ける前に退院したい。
そう言っていたものの、元々病弱な身体の調子は芳しくなく、復活して期末テストが終わった途端、再び精密検査入院することに。 だがその間に、また熱を出して寝込む始末だ。
「今年に入ってから色々凶悪事件にも巻き込まれたし、本人が思ってる以上に身体の疲れはとれてないんだよお前」
この夏休みは『とにかく療養して体調を整えるのがお前の仕事だ』とのプロデューサー命令で、予定していた新アルバムお披露目の時期をずらし、全国遠征の興行ツアーも中止。新曲引っ提げてのストアライブは秋シーズンに延期された。結局夏休みはどこにも行けないどころか、半分以上ずっと病室のベッドで軟禁生活。それを知った光はとんでもなく落ち込んで、現在ふて寝の真っ最中だ。
――まあどうせ俺も受験だし……。
どこの大学を受けるかは自分の中で決まっているし、推薦でほぼ確定しているようなものなので、特にがり勉するつもりはない。だが油断できる状況でもないので、勝行は大人しく参考書を病室に持ち込んだ。入院すると決まって光が一人ぼっちを嫌がるので、なるべく勝行も彼の病室で生活することにしている。理由はよく知らないが、病院は嫌いらしい。まあ、好きな人などいないと思うが。
放課後の蒸し暑いひと時、空調の効いた部屋で勉強しながらのんびり過ごしていた勝行のスマートフォンのバイブが静かになり響いた。着信画面の表示を見た瞬間、思わずベッドの上で転がる光を振り返ったが、まだ眠っているようだ。
「もしもし?」
『あーもしもし、おれ、源次!』
「聞けばわかるよ」
もう一人の義弟のいたって元気な声に苦笑しながら、勝行はわざと光のベッドの端に座りこんだ。
『あのさあ、今日さあ、サッカーの試合勝ったんだ! 俺たち、優勝! インターハイ出場まであともーちょい!』
「へえすごいじゃないか。おめでとう」
『へっへへ、ありがと!』
それだけを報告したくて電話してきたのなら、もしかして久しぶりに兄の光と会話したかったのではないだろうか。ならば眠り姫を起こそうかと思い、わざと布団を撫でたり、叩いたりしていると、受話器の向こうからは急に歯切れの悪い声が聞こえてきた。
『あ、あのさー……ところでさ……』
「……? なに」
『お前ら、さ……今年の夏休み、どうしてんの? ……仕事? こっちに……帰ってくる……?」
「あ……」
『あの、ほら、去年はさあ、仕事でこっちに戻ってきてたじゃん。日帰りだったけど』
「……地方ツアーか……ごめんね、今年はそれ、やらないんだ」
『そ、そっか……わかった……。あ、いや、俺も試合ばっかでさ、夏休みあんま暇ないんだよなっ。まあ、休みの間どっかで会えたらいいなって、ちょっと思ってたけど……いや、ごめんごめんっ』
懸命に取り繕って元気な声をあげるけれど、明らかに落ち込んでいるのがわかる。双子の今西兄弟は、隠していても感情駄々洩れでわかりやすい。申し訳ないなという気持ちでいっぱいになるが、こればかりはどうしようもなかった。
ファーストアルバムの制作が順調に進み、本格的な盛夏を迎える頃には一通りの撮影も録音も終わっていた。
もうすぐ夏休みだから遊べるかな、と思いきや、春からずっと鬼のように息つく暇もなく仕事を回されて、体力の尽きた今西光は、風邪を拗らせて肺炎を起こし、入院してしまった。
梅雨が明ける前に退院したい。
そう言っていたものの、元々病弱な身体の調子は芳しくなく、復活して期末テストが終わった途端、再び精密検査入院することに。 だがその間に、また熱を出して寝込む始末だ。
「今年に入ってから色々凶悪事件にも巻き込まれたし、本人が思ってる以上に身体の疲れはとれてないんだよお前」
この夏休みは『とにかく療養して体調を整えるのがお前の仕事だ』とのプロデューサー命令で、予定していた新アルバムお披露目の時期をずらし、全国遠征の興行ツアーも中止。新曲引っ提げてのストアライブは秋シーズンに延期された。結局夏休みはどこにも行けないどころか、半分以上ずっと病室のベッドで軟禁生活。それを知った光はとんでもなく落ち込んで、現在ふて寝の真っ最中だ。
――まあどうせ俺も受験だし……。
どこの大学を受けるかは自分の中で決まっているし、推薦でほぼ確定しているようなものなので、特にがり勉するつもりはない。だが油断できる状況でもないので、勝行は大人しく参考書を病室に持ち込んだ。入院すると決まって光が一人ぼっちを嫌がるので、なるべく勝行も彼の病室で生活することにしている。理由はよく知らないが、病院は嫌いらしい。まあ、好きな人などいないと思うが。
放課後の蒸し暑いひと時、空調の効いた部屋で勉強しながらのんびり過ごしていた勝行のスマートフォンのバイブが静かになり響いた。着信画面の表示を見た瞬間、思わずベッドの上で転がる光を振り返ったが、まだ眠っているようだ。
「もしもし?」
『あーもしもし、おれ、源次!』
「聞けばわかるよ」
もう一人の義弟のいたって元気な声に苦笑しながら、勝行はわざと光のベッドの端に座りこんだ。
『あのさあ、今日さあ、サッカーの試合勝ったんだ! 俺たち、優勝! インターハイ出場まであともーちょい!』
「へえすごいじゃないか。おめでとう」
『へっへへ、ありがと!』
それだけを報告したくて電話してきたのなら、もしかして久しぶりに兄の光と会話したかったのではないだろうか。ならば眠り姫を起こそうかと思い、わざと布団を撫でたり、叩いたりしていると、受話器の向こうからは急に歯切れの悪い声が聞こえてきた。
『あ、あのさー……ところでさ……』
「……? なに」
『お前ら、さ……今年の夏休み、どうしてんの? ……仕事? こっちに……帰ってくる……?」
「あ……」
『あの、ほら、去年はさあ、仕事でこっちに戻ってきてたじゃん。日帰りだったけど』
「……地方ツアーか……ごめんね、今年はそれ、やらないんだ」
『そ、そっか……わかった……。あ、いや、俺も試合ばっかでさ、夏休みあんま暇ないんだよなっ。まあ、休みの間どっかで会えたらいいなって、ちょっと思ってたけど……いや、ごめんごめんっ』
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