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四冊目 りんごあめと白雪王子 ~絶対恋愛関係にならない二人の最後の夏休み
つまらない夏休み……②
しおりを挟む「うん……俺も会いたかったけど、ちょっと厳しいかな」
その時、光がごそごそと寝がえりを打ちながら少し目を開けた。
「あ、光、起きた?」
「ん……」
「源次と電話中なんだけど、話す?」
「……なに……源次……?」
弟の名前を聞いて、寝ぼけ眼のまま光はその腕を伸ばした。その声を久しぶりに受話器越しに聞いて嬉しくなったのか、弟の張りのいい声が遠ざかった受話器からビイインと響き渡る。
『なんだよ光ー、オマエこんな真昼間から寝てんのかよっ。元気ねえなあ、おきろおきろっ』
眉間に縦皺を思いっきり寄せて、光は機嫌の悪い低い声を零した。
「源次……超うっせー……頭に響く……」
そんなセリフを全く聞きもせず、源次はペラペラと楽し気に語り始める。
『なあ、お前らもう夏休み入った? 俺、まだ試合と合宿があってさ、けっこう遠征も多いんだけどさあ。お前らは夏休みどうしてんのかなと思って』
「……なに……そういうのは勝行に言え」
光は面倒くさそうに告げると、「返す」と言って勝行のスマホを突き返した。
「え、もういいの? 源次と話さないの」
「もういい……」
寝起きとはいえ、相当機嫌は悪そうだ。受話器越しに弟もそれを感じたらしく、ごめんねと言って電話口に出直した勝行に気の毒そうな言葉を漏らした。
『なに……元気ないなア、光。もしかして、また熱出して寝込んでる?』
「ああ、うん……ちょっと、ね。今はしんどいからやめとくって。ごめんね、また今度にしてやって」
『わかった。夏休み、お前らなんかやっぱ忙しそうだな』
「そうだね……次、そっちに行けそうな時があれば連絡するよ」
『あ、うん。待ってっから! 新しいCDもいっぱい売れるといいな! 俺、もう予約したぞ』
「え、そうなのか? 言ってくれたら完成品送るのに」
『だめだめ、ちゃんと売り上げ枚数に貢献しねーとなっ』
「そっか……ありがとう。源次こそ、試合がんばってね」
『おうっ! じゃあなっ』
気合の入った明るい声と共に、通話を終了する音が流れてくる。
(あいつ、本当は光に会いたかったんだろうな)
わざわざ電話までしてきてこんなことを聞いてくるなんて、普段の彼の行動的に珍しい。スマホを置くついでに放置していた参考書を鞄の中にしまい込みながら、申し訳ない気分に苛まれていた。
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