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五冊目 恋愛相談には危険がいっぱい!? ~えっちな先生いかがですか
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一文無しで節操もない元恋人をけちょんけちょんに貶しながらも、しっかり片腕の代わりを介護し、マイカーに乗せて連れ帰っている保を見る限り、やはり二人は恋仲なのではないだろうか。嵐のような二人を見送り、そんな野次馬推察を議論しながら、光と勝行も共同生活のマンションに帰宅した。
「はー……保の恋人ってどんなんだろうと思ってたけど……想像以上に強烈な奴だったな……」
「中身もさることながら、あの肉体もすごかった」
「お前露骨に筋肉見すぎだろ」
「やっぱ憧れるよなあ」
「……ムキムキの勝行なんか、かわいくないからイヤだ……」
目を輝かせ、「どうすればあんなに綺麗に鍛えられるのかな」と呟きながらも早速鉄アレイを上げ下げする勝行に閉口した光は、夕食の支度に取り掛かっていた。
今夜のおかずは照り焼きチキンと卵スープ。湯がいたパスタを添え、勝行の好きなバジルソースのかかったサラダに仕上げる。勝行の雇い家政夫として台所に立つようになってから早四年。彼の嗜好はほぼ把握済みだし、凝った洋食もそれなりに作れるようになった。
「うわ、いい匂いしてきた。今日のご飯も美味しそう」
好物が食卓に並んでいるのを見た勝行は、あどけない表情を綻ばせて素直に喜んだ。だが手に持っているものが少々物騒である。
「なあそういえば、GPSなんとかって俺のどこについてるの」
「……言ったら外すだろ。秘密だよ」
「なにそれ。それってプライバシーの侵害ってやつじゃねーの」
拗ねた声でぼやいた途端、ダイニングの椅子を引きかけた勝行の手がぴたりと止まった。微妙な沈黙の中、てりやきソースの香りだけが二人の間を漂う。
「……そんなに嫌?」
「えっ」
不安気に眉をひそめてこちらを見つめてくる勝行に、光はどきっとした。いつもの勝行とは少し様子が違う気がする。
「今日の保さんと晴樹さんを見ていて、余計外したくなくなったんだ。俺の預かり知らぬ場所でお前が倒れてたり、誰かと喧嘩してたり……あんな風にケガをしたりしていたらって考えたら……俺……おれは」
「……か……」
「とても正気じゃいられない」
その重い一言を吐き出した勝行の目は明らかにすわっていて、急に声も低くなった。
(お、怒ってる……? さっきまで機嫌よく筋トレしてたくせに、いきなりブラック化)
光は突然人格豹変するその勝行の姿を一人で勝手に『ブラック勝行降臨』などと揶揄していた。
「それに、お前が勝手にフラフラ出かけて、また変な男に捕まってやしないかって思うたびに気が狂いそうだ。なのに丸腰のお前を野に放つなんてそんな愚かなことをしでかしたら、きっと俺は毎日後悔ばかりで死にたくなる」
「んな……大げさな……」
「現実に何度もあった事実だろ?」
「うっ……」
そう言われてしまうと身もふたもない。何かと心配ばかりかけてしまっているのは自分でも嫌というほどわかっているつもりだ。
「だ……だから……発信機みたいのつけるのか……?」
「そうだよ」
眉間に皺を寄せたまま。だが口元は笑っている。支離滅裂な表情を浮かべた勝行はたじろぐ光に近づき、その左耳をやんわりと撫でた。どことなく優しいような……くすぐったいような蠢きに、思わず首をすくめる。
「……っ」
「何かあったら絶対お前を守るから……駆けつけるから……お願いだから、何があってもつけていて。……俺が側にいられないかわりに」
こりっと撫でるのは片耳にだけ付けたフープピアス。そこを舐めるように囁きながら、勝行は甘ったるい言葉をいくつも連ねていく。
耳にかかる吐息が熱くてじれったい。光はじわじわ火照っていく身体に異変を感じて、生唾を飲み込んだ。
(……んあ……)
言葉よりその感触に意識を奪われ、思わず変な声が漏れそうになる。だが勝行は期待していたことなど何もしないまま、ただじっと自分を見つめているだけ。
やがて勝行は元通りの穏やかな表情に戻って光の髪を撫でた。
「いつも俺の好きなご飯、作ってくれてありがとう。さ、食べよう。俺もうお腹ペコペコ」
「え……? あ、ああ……うん……食べて……」
「どうかしたのか?」
「あっ、いや……何でもないっ」
思わず飛び出そうになった言葉を慌てて呑み込むと、光は大急ぎでキッチンに逃げ込んだ。
一文無しで節操もない元恋人をけちょんけちょんに貶しながらも、しっかり片腕の代わりを介護し、マイカーに乗せて連れ帰っている保を見る限り、やはり二人は恋仲なのではないだろうか。嵐のような二人を見送り、そんな野次馬推察を議論しながら、光と勝行も共同生活のマンションに帰宅した。
「はー……保の恋人ってどんなんだろうと思ってたけど……想像以上に強烈な奴だったな……」
「中身もさることながら、あの肉体もすごかった」
「お前露骨に筋肉見すぎだろ」
「やっぱ憧れるよなあ」
「……ムキムキの勝行なんか、かわいくないからイヤだ……」
目を輝かせ、「どうすればあんなに綺麗に鍛えられるのかな」と呟きながらも早速鉄アレイを上げ下げする勝行に閉口した光は、夕食の支度に取り掛かっていた。
今夜のおかずは照り焼きチキンと卵スープ。湯がいたパスタを添え、勝行の好きなバジルソースのかかったサラダに仕上げる。勝行の雇い家政夫として台所に立つようになってから早四年。彼の嗜好はほぼ把握済みだし、凝った洋食もそれなりに作れるようになった。
「うわ、いい匂いしてきた。今日のご飯も美味しそう」
好物が食卓に並んでいるのを見た勝行は、あどけない表情を綻ばせて素直に喜んだ。だが手に持っているものが少々物騒である。
「なあそういえば、GPSなんとかって俺のどこについてるの」
「……言ったら外すだろ。秘密だよ」
「なにそれ。それってプライバシーの侵害ってやつじゃねーの」
拗ねた声でぼやいた途端、ダイニングの椅子を引きかけた勝行の手がぴたりと止まった。微妙な沈黙の中、てりやきソースの香りだけが二人の間を漂う。
「……そんなに嫌?」
「えっ」
不安気に眉をひそめてこちらを見つめてくる勝行に、光はどきっとした。いつもの勝行とは少し様子が違う気がする。
「今日の保さんと晴樹さんを見ていて、余計外したくなくなったんだ。俺の預かり知らぬ場所でお前が倒れてたり、誰かと喧嘩してたり……あんな風にケガをしたりしていたらって考えたら……俺……おれは」
「……か……」
「とても正気じゃいられない」
その重い一言を吐き出した勝行の目は明らかにすわっていて、急に声も低くなった。
(お、怒ってる……? さっきまで機嫌よく筋トレしてたくせに、いきなりブラック化)
光は突然人格豹変するその勝行の姿を一人で勝手に『ブラック勝行降臨』などと揶揄していた。
「それに、お前が勝手にフラフラ出かけて、また変な男に捕まってやしないかって思うたびに気が狂いそうだ。なのに丸腰のお前を野に放つなんてそんな愚かなことをしでかしたら、きっと俺は毎日後悔ばかりで死にたくなる」
「んな……大げさな……」
「現実に何度もあった事実だろ?」
「うっ……」
そう言われてしまうと身もふたもない。何かと心配ばかりかけてしまっているのは自分でも嫌というほどわかっているつもりだ。
「だ……だから……発信機みたいのつけるのか……?」
「そうだよ」
眉間に皺を寄せたまま。だが口元は笑っている。支離滅裂な表情を浮かべた勝行はたじろぐ光に近づき、その左耳をやんわりと撫でた。どことなく優しいような……くすぐったいような蠢きに、思わず首をすくめる。
「……っ」
「何かあったら絶対お前を守るから……駆けつけるから……お願いだから、何があってもつけていて。……俺が側にいられないかわりに」
こりっと撫でるのは片耳にだけ付けたフープピアス。そこを舐めるように囁きながら、勝行は甘ったるい言葉をいくつも連ねていく。
耳にかかる吐息が熱くてじれったい。光はじわじわ火照っていく身体に異変を感じて、生唾を飲み込んだ。
(……んあ……)
言葉よりその感触に意識を奪われ、思わず変な声が漏れそうになる。だが勝行は期待していたことなど何もしないまま、ただじっと自分を見つめているだけ。
やがて勝行は元通りの穏やかな表情に戻って光の髪を撫でた。
「いつも俺の好きなご飯、作ってくれてありがとう。さ、食べよう。俺もうお腹ペコペコ」
「え……? あ、ああ……うん……食べて……」
「どうかしたのか?」
「あっ、いや……何でもないっ」
思わず飛び出そうになった言葉を慌てて呑み込むと、光は大急ぎでキッチンに逃げ込んだ。
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