両翼少年協奏曲~WINGS Concerto~【腐女子のためのうすい本】

さくら怜音/黒桜

文字の大きさ
64 / 106
五冊目 恋愛相談には危険がいっぱい!? ~えっちな先生いかがですか

……④

しおりを挟む
**
一文無しで節操もない元恋人をけちょんけちょんに貶しながらも、しっかり片腕の代わりを介護し、マイカーに乗せて連れ帰っている保を見る限り、やはり二人は恋仲なのではないだろうか。嵐のような二人を見送り、そんな野次馬推察を議論しながら、光と勝行も共同生活のマンションに帰宅した。


「はー……保の恋人ってどんなんだろうと思ってたけど……想像以上に強烈な奴だったな……」
「中身もさることながら、あの肉体もすごかった」
「お前露骨に筋肉見すぎだろ」
「やっぱ憧れるよなあ」
「……ムキムキの勝行なんか、かわいくないからイヤだ……」

目を輝かせ、「どうすればあんなに綺麗に鍛えられるのかな」と呟きながらも早速鉄アレイを上げ下げする勝行に閉口した光は、夕食の支度に取り掛かっていた。
今夜のおかずは照り焼きチキンと卵スープ。湯がいたパスタを添え、勝行の好きなバジルソースのかかったサラダに仕上げる。勝行の雇い家政夫として台所に立つようになってから早四年。彼の嗜好はほぼ把握済みだし、凝った洋食もそれなりに作れるようになった。

「うわ、いい匂いしてきた。今日のご飯も美味しそう」

好物が食卓に並んでいるのを見た勝行は、あどけない表情を綻ばせて素直に喜んだ。だが手に持っているものが少々物騒である。

「なあそういえば、GPSなんとかって俺のどこについてるの」
「……言ったら外すだろ。秘密だよ」
「なにそれ。それってプライバシーの侵害ってやつじゃねーの」

拗ねた声でぼやいた途端、ダイニングの椅子を引きかけた勝行の手がぴたりと止まった。微妙な沈黙の中、てりやきソースの香りだけが二人の間を漂う。

「……そんなに嫌?」
「えっ」

不安気に眉をひそめてこちらを見つめてくる勝行に、光はどきっとした。いつもの勝行とは少し様子が違う気がする。

「今日の保さんと晴樹さんを見ていて、余計外したくなくなったんだ。俺の預かり知らぬ場所でお前が倒れてたり、誰かと喧嘩してたり……あんな風にケガをしたりしていたらって考えたら……俺……おれは」
「……か……」
「とても正気じゃいられない」

その重い一言を吐き出した勝行の目は明らかにすわっていて、急に声も低くなった。

(お、怒ってる……? さっきまで機嫌よく筋トレしてたくせに、いきなりブラック化)

光は突然人格豹変するその勝行の姿を一人で勝手に『ブラック勝行降臨』などと揶揄していた。

「それに、お前が勝手にフラフラ出かけて、また変な男に捕まってやしないかって思うたびに気が狂いそうだ。なのに丸腰のお前を野に放つなんてそんな愚かなことをしでかしたら、きっと俺は毎日後悔ばかりで死にたくなる」
「んな……大げさな……」
「現実に何度もあった事実だろ?」
「うっ……」

そう言われてしまうと身もふたもない。何かと心配ばかりかけてしまっているのは自分でも嫌というほどわかっているつもりだ。

「だ……だから……発信機みたいのつけるのか……?」
「そうだよ」

眉間に皺を寄せたまま。だが口元は笑っている。支離滅裂な表情を浮かべた勝行はたじろぐ光に近づき、その左耳をやんわりと撫でた。どことなく優しいような……くすぐったいような蠢きに、思わず首をすくめる。

「……っ」
「何かあったら絶対お前を守るから……駆けつけるから……お願いだから、何があってもつけていて。……俺が側にいられないかわりに」

こりっと撫でるのは片耳にだけ付けたフープピアス。そこを舐めるように囁きながら、勝行は甘ったるい言葉をいくつも連ねていく。
耳にかかる吐息が熱くてじれったい。光はじわじわ火照っていく身体に異変を感じて、生唾を飲み込んだ。

(……んあ……)

言葉よりその感触に意識を奪われ、思わず変な声が漏れそうになる。だが勝行は期待していたことなど何もしないまま、ただじっと自分を見つめているだけ。


やがて勝行は元通りの穏やかな表情に戻って光の髪を撫でた。

「いつも俺の好きなご飯、作ってくれてありがとう。さ、食べよう。俺もうお腹ペコペコ」
「え……?  あ、ああ……うん……食べて……」
「どうかしたのか?」
「あっ、いや……何でもないっ」

思わず飛び出そうになった言葉を慌てて呑み込むと、光は大急ぎでキッチンに逃げ込んだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー

夏目碧央
BL
 強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。  一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

処理中です...