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五冊目 恋愛相談には危険がいっぱい!? ~えっちな先生いかがですか
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一体なにが大人の性教育、だ。
憮然とした表情のまま、光は壁に凭れて床へ座り込んだ。ベッドの上で未だ彼氏と情熱的に愛し合う上司は、楽しそうにキスを堪能しながらも「ちゃんと薬飲んだ?」と気遣ってくる。
「……ああ」
痴態を晒しすぎて、今度は精神が死にそうだ。光はぼさぼさの髪を抱えて盛大なため息をついた。
興奮しすぎたせいで持病の狭心症発作が出てしまい、二人に介抱してもらう羽目になった。今朝もらうだけもらって放置していた薬を慌てて服用し、なんとか事なきを得るも、ベッドシーツの綿埃で気管支も負けて暫く咳が止まらなかった。
ようやく落ち着き、ポイ捨てされた自分の服をかき集め、なんとか着替えるところまで至った頃、晴樹と保は仕切り直しの二回戦に突入していた。
「アアン……ハル……もっと、して……っ」
「今日は欲張りさんだなあ、タモツは。もしかして、光くんに見られてるからいつもより興奮する?」
「……そんなの関係……ないでしょ……バカ……んんっ」
何度もキスを重ね、互いを罵りながらも笑い合って身体を擦りつけ合う。もはやすっかり蚊帳の外扱いになった光は、ただただ呆然と二人の姿を見つめていた。
気持ちよかったならあげるよ、と贈呈された使いかけの潤滑ローションが隣に転がっている。甘い香りのするそれは、あんなに身体中塗りまくられたのに、さらっと乾いてもう跡形もない。むしろ汗だくになった自分の体臭の方が気になるぐらいだ。
(優しくて甘ったるくて、なんか気持ちよかったけど……でもちょっと物足りないっていうか……。勝行とか親父の方が、目がすげえギラついてて……怒ってばっかで怖い……でも激しくて……してることは変わんないし……)
いつも厳しい目で自分たちの音楽活動を指導する鬼プロデューサーは、ベッドの上では優しくリードする綺麗なお兄さん――いやお姉さんのような存在だった。ブラックモードのスイッチが入った途端、噛みつくようなキスで縦横無尽に攻めてきたり、理不尽に怒る勝行とは全く違う。
「はあ。結局全然わかんねえ」
「なあに、疑問は解決しなかったの?」
「お前らが普段仲悪そうなのに、ベッドの上ではやたら仲良しなのも意味わかんねえ。勝行とは真逆だし……」
ぽろっと呟いた愚痴はしっかり保と晴樹に聴こえていたようで、二人は抱き合ったまま部屋の隅でしょぼくれる光に視線をやった。
「まあ、光は欲求不満っぽかったもんね。なんか、察したわ。ノンケのタチは難攻不落のエリート級だから」
「そうだ、元気になったら光くんももう一回ヤろうよ」
「……は? ぜってえイヤだ!」
「えー、さっきはあんなに可愛かったのに……入れてえ♡って」
「うるせえ、誰のせいだよ蒸し返すな! もうほっとけ!」
再び恥ずかしめられた記憶を思い出し、光は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。ついでに転がっていた潤滑ローションのペットボトルを晴樹めがめて放り投げる。それは晴樹の三角巾に吊られた左腕にクリーンヒットしたが、本人は至ってケロリとしている。
この筋肉エロ親父め、と光は舌打ちした。
ふいにジーンズのポケットがぶるるっと震え始めた。携帯電話の着信バイブレーションだ。驚いてそれを取り出すと、画面には勝行の名前が表示されていた。
「おー、学校終ったのか、おつか――」
『光、お前大丈夫か⁉』
受話器に向かって話しかけた途端、ものすごい剣幕で問われて光は驚いた。そういえば、保の家に行くなんて一言も告げていない。病院にいなくて心配をかけてしまったのだろうか。光は思わず姿勢を正して座り直した。
「えと……大丈夫。保のとこにいる」
『それは保さんからちゃんと連絡をもらったから知ってるよ。でもお前、何度電話しても出なかったから……』
「え……あ、悪い……」
ジーンズのポケットに入れたままのそれは、晴樹に脱がされ放置された状態だったせいで鳴っていても気づかなかった。だが脱がされて――などと言えるはずもなく、必死に言い訳を考える。
「あの……発作、出てて……」
『発作……⁉ やっぱり、保さんも電話に出ないから、何かあったんじゃないかって心配してたんだぞ。今は大丈夫なのか? まだ保さんの家にいるのか、すぐに迎えにいく』
「え……お前、保の家知ってんの……?」
『……なんのために、お前は俺の言うことを聞いてくれてるんだ?』
電話の向こう側から意味深な言葉を告げられ、光はハッと思い出した。そうだ、いざという時のためにつけてくれと言われた発信機がある。それが一体自分のどこについたままなのか、光は知らない。思わず携帯をぐるぐる回してみたが、それらしき受信機も見当たらない。だがきっと彼は――。
「じゃあお前、今どこにいるんだ」
『保さんの家の前』
低く冷えきったその声に、光の背筋は一瞬ぞっとした。
慌てて立ち上がり、薬の袋を掴んで玄関へと向かう。きっとオートロックで内鍵がかかっているだろうから、さすがの勝行も開けられないはず。
『お前に何かがあったら俺は――もう……』
「まっ……まてまてまて早まるな、今すぐ外に出る! 出るから!!」
(こんな所でアイツらとセックスしてたのバレたら、勝行がぶっ壊れてブラック化するに決まってる……! あいつキレたらヤクザより怖えのに!)
脱いだ覚えのないスニーカーを引っかけ、光は体当たりで玄関を飛び出した。
そこには、バールのような武器を持って今にも扉ごとぶっ潰そうとしている勝行と片岡の姿があった。
一体なにが大人の性教育、だ。
憮然とした表情のまま、光は壁に凭れて床へ座り込んだ。ベッドの上で未だ彼氏と情熱的に愛し合う上司は、楽しそうにキスを堪能しながらも「ちゃんと薬飲んだ?」と気遣ってくる。
「……ああ」
痴態を晒しすぎて、今度は精神が死にそうだ。光はぼさぼさの髪を抱えて盛大なため息をついた。
興奮しすぎたせいで持病の狭心症発作が出てしまい、二人に介抱してもらう羽目になった。今朝もらうだけもらって放置していた薬を慌てて服用し、なんとか事なきを得るも、ベッドシーツの綿埃で気管支も負けて暫く咳が止まらなかった。
ようやく落ち着き、ポイ捨てされた自分の服をかき集め、なんとか着替えるところまで至った頃、晴樹と保は仕切り直しの二回戦に突入していた。
「アアン……ハル……もっと、して……っ」
「今日は欲張りさんだなあ、タモツは。もしかして、光くんに見られてるからいつもより興奮する?」
「……そんなの関係……ないでしょ……バカ……んんっ」
何度もキスを重ね、互いを罵りながらも笑い合って身体を擦りつけ合う。もはやすっかり蚊帳の外扱いになった光は、ただただ呆然と二人の姿を見つめていた。
気持ちよかったならあげるよ、と贈呈された使いかけの潤滑ローションが隣に転がっている。甘い香りのするそれは、あんなに身体中塗りまくられたのに、さらっと乾いてもう跡形もない。むしろ汗だくになった自分の体臭の方が気になるぐらいだ。
(優しくて甘ったるくて、なんか気持ちよかったけど……でもちょっと物足りないっていうか……。勝行とか親父の方が、目がすげえギラついてて……怒ってばっかで怖い……でも激しくて……してることは変わんないし……)
いつも厳しい目で自分たちの音楽活動を指導する鬼プロデューサーは、ベッドの上では優しくリードする綺麗なお兄さん――いやお姉さんのような存在だった。ブラックモードのスイッチが入った途端、噛みつくようなキスで縦横無尽に攻めてきたり、理不尽に怒る勝行とは全く違う。
「はあ。結局全然わかんねえ」
「なあに、疑問は解決しなかったの?」
「お前らが普段仲悪そうなのに、ベッドの上ではやたら仲良しなのも意味わかんねえ。勝行とは真逆だし……」
ぽろっと呟いた愚痴はしっかり保と晴樹に聴こえていたようで、二人は抱き合ったまま部屋の隅でしょぼくれる光に視線をやった。
「まあ、光は欲求不満っぽかったもんね。なんか、察したわ。ノンケのタチは難攻不落のエリート級だから」
「そうだ、元気になったら光くんももう一回ヤろうよ」
「……は? ぜってえイヤだ!」
「えー、さっきはあんなに可愛かったのに……入れてえ♡って」
「うるせえ、誰のせいだよ蒸し返すな! もうほっとけ!」
再び恥ずかしめられた記憶を思い出し、光は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。ついでに転がっていた潤滑ローションのペットボトルを晴樹めがめて放り投げる。それは晴樹の三角巾に吊られた左腕にクリーンヒットしたが、本人は至ってケロリとしている。
この筋肉エロ親父め、と光は舌打ちした。
ふいにジーンズのポケットがぶるるっと震え始めた。携帯電話の着信バイブレーションだ。驚いてそれを取り出すと、画面には勝行の名前が表示されていた。
「おー、学校終ったのか、おつか――」
『光、お前大丈夫か⁉』
受話器に向かって話しかけた途端、ものすごい剣幕で問われて光は驚いた。そういえば、保の家に行くなんて一言も告げていない。病院にいなくて心配をかけてしまったのだろうか。光は思わず姿勢を正して座り直した。
「えと……大丈夫。保のとこにいる」
『それは保さんからちゃんと連絡をもらったから知ってるよ。でもお前、何度電話しても出なかったから……』
「え……あ、悪い……」
ジーンズのポケットに入れたままのそれは、晴樹に脱がされ放置された状態だったせいで鳴っていても気づかなかった。だが脱がされて――などと言えるはずもなく、必死に言い訳を考える。
「あの……発作、出てて……」
『発作……⁉ やっぱり、保さんも電話に出ないから、何かあったんじゃないかって心配してたんだぞ。今は大丈夫なのか? まだ保さんの家にいるのか、すぐに迎えにいく』
「え……お前、保の家知ってんの……?」
『……なんのために、お前は俺の言うことを聞いてくれてるんだ?』
電話の向こう側から意味深な言葉を告げられ、光はハッと思い出した。そうだ、いざという時のためにつけてくれと言われた発信機がある。それが一体自分のどこについたままなのか、光は知らない。思わず携帯をぐるぐる回してみたが、それらしき受信機も見当たらない。だがきっと彼は――。
「じゃあお前、今どこにいるんだ」
『保さんの家の前』
低く冷えきったその声に、光の背筋は一瞬ぞっとした。
慌てて立ち上がり、薬の袋を掴んで玄関へと向かう。きっとオートロックで内鍵がかかっているだろうから、さすがの勝行も開けられないはず。
『お前に何かがあったら俺は――もう……』
「まっ……まてまてまて早まるな、今すぐ外に出る! 出るから!!」
(こんな所でアイツらとセックスしてたのバレたら、勝行がぶっ壊れてブラック化するに決まってる……! あいつキレたらヤクザより怖えのに!)
脱いだ覚えのないスニーカーを引っかけ、光は体当たりで玄関を飛び出した。
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