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七冊目 恋の悩みもラジオにのせて

おまけの「らじこむういんぐす」反省会

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いつまでも腹を抱えてヒイヒイ笑い続ける光の脇腹を思いっきり抓ってやった。
何もそこまで笑わなくても――。

「マジびっくりした。そこまで勝行がポンコツだったとは」
「う……うるさいうるさい!」

台本の見間違い。緊張しすぎて噛む。漢字が急に読めなくなる。
大事なコーナー説明読み飛ばし。などなど……
あれほどに事前準備万端だった勝行からは想像もつかない、初心者丸出しのカチンコチンなラジオスタートに、スタッフどころか光ですら口をあんぐりと開ける展開になった。

「本番に弱いとは聞いてたけど、そもそも勝行クンはまずあがり症をどうにかする対策が必要なんじゃないかな? カンペがあってもあれじゃちょっと」
「マイクのスイッチすら入れ忘れてしゃべってたしねえ」
「いつもライブでファンサする時は、何も見なくてもすらすら言えるのに」
「光が隣にいなかったら、一体どうなってたことか。そういう光はずっと笑いすぎね。ちゃんと喋りなさい」
「ダメだ、俺笑い上戸だから……く、くくくっ……思い出したらまた笑えてきた……」

スタジオ近くの居酒屋。打ち上げの席で、勝行はテーブルど真ん中に座らされ、本日の赤っ恥を続々と並べられ、今すぐ逃げ出したい衝動と戦いながら小さくなっていた。名目上は「カツユキお疲れ様会」らしいのだが、どう考えても「本日のカツユキのポンコツぶり暴露大会」にしかなっていない。

(こういう時に人格チェンジするなら俺大歓迎なんだけど⁉)

悔しまみれに心の奥底に話しかけてみたが、何の反応もない。自分で自分に話しかけるだなんて、ただのイカれた野郎にしか見えないじゃないかと再び頭を抱えた。

「まあいいわ、今日やってみてよーくわかった。番組の路線、変更するわ」
「どんな風に?」
「勝行の読み上げる台本はフリガナつき。もう少し文章を短く。その分、光がコーナー説明とかして……勝行が噛んだらタグ付けね。番組ではきっとバカウケするわ。あえて小難しい言葉ならべて、噛まずに言えるかな選手権とか面白そうじゃない?」

置鮎保はそう言うと、白ワインを口にしながら早速企画書の一部をペンで書き変えている。一体どうなるのかわからないが、もうなるようになれ……としか言えない。子どもの頃は、失敗して舞台を台無しにしたり、嗤われるのが死ぬほど怖かったが、失敗をここまでお笑いのネタにされるとは思いもよらなかった。
勝行は目の前にあるジョッキを手に取ると、すっくと立ちあがった。

「この度はご迷惑をおかけしてすみませんでした! はいおわり! もうこれ以上この話しないでくださいー!」
「え……あ……か、勝行ー⁉」
「やめろばか、それオレのビール!」

ありったけの声で叫び散らし、ジョッキの中身をまるっと一気に飲み出した途端、周りのスタッフが血相を変えて勝行を引き留めに入る。こんなところで未成年に飲ませたとあっては社会問題で大騒ぎだ。
騒ぎすぎで迷惑ですと店員に怒られ、打ち上げメンバー全員で頭を下げるまで、勝行はひたすらみんなのマスコットとしておちょくられ、可愛がられ続けたのであった。

やがてそれは放送界上にいつまでも残り続け、根強くディープなファンに語り継がれた『カツユキ王子の黒歴史』である。


おまけEND
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