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Lv.2 濃厚接触ゲーム
8 寄り道大作戦 リベンジ
**
「マスクを外してテーブル越しに会話すると、濃厚接触扱いになるらしいよ」
随分な時間差で親からそんな情報をもらった。夕飯を食べ終わった圭太は「ふうん」とだけ返し、自室に引きこもってベッドでFCOにログインした。ちょうどサナがプレイ中だったので、久しぶりに通話しながらのチームランク戦に参加する。そこで他愛もない話をする中、放課後マックに行った話も浮上した。
「いいねえ、青春してるねえ。高校生らしいじゃーん」
「でもリア充の会話に全然ついていけなかったわ」
「いいなあ、家に引きこもりすぎて久しく行ってないなあ。安いコーヒー一杯で充電しながらゲームやるには最適よなあ、あそこ」
「……そう?」
リアル話に花咲く同級生たちに囲まれ、誰とも話さず一人ゲームしていた圭太は、あれを最適とは言い難くて閉口した。
「高校ん時の寄り道っつったら、だいたいゲーセンかカラオケっしょ」
「もともと学校周辺は田舎だからそういうのない。唯一あったフードコートとゲーセンと、駅のコンビニも閉鎖しちまった」
「マジで? 倒産とか?」
「んー……多分」
「うわあ……世知辛すぎる」
学校内ではもちろん、どこの店舗でもクラスター発生は経営の生命線を失うレベルの大事件だ。それを回避しようと営業を縮めたり無理な感染症対策を施した結果、営業不振に陥った小さな店舗が次々に閉店していく。
シャッター街になった駅前は、滅んだ世界のように静かだ。
「で、行き場に困った奴らが、マックみたいな大手チェーン店に群がるってわけね。それでクラスター発生したら元も子もないのに」
「思った。でもまあ、アクリル板があったし……」
「甘いぞケイタ。あんな陳腐な板一枚で、しゃべくり魔の攻撃を防げると思う?」
「……」
「やっぱさあ、家でネトゲしてんのが一番安全だよなー!」
確かにサナの言う通りだ。ナゲットと買い食いへの憧れに目がくらみ、不特定多数の見知らぬ人間とマスクなし至近距離で食事をとってしまったことを圭太は激しく後悔した。ああ今度こそ、濃厚接触者になってしまうかもしれない。
――という杞憂は、一週間もしないうちに消え去った。
体調を崩すことなく数日過ぎた放課後。圭太は日直のごみ捨て当番で昇降口を通った。そこには部活動の連絡掲示板が置いてある。ゴミ箱を持ったまま掲示板をぐるりと見渡し、テニス部の予定を確認した。今日は外練習、テニスコート。時間も書いてある。
この練習が終わる時間に偶然を装って下駄箱に向かえば、太一に会えるかもしれない。そうすれば一緒に帰ろうと誘ってもらえるかもしれないし、駅までは別々であっても、そこからは同じ電車便に乗れる。あいにくコンビニは開いていないが、鞄にはカントリークッキーや熱中症対策のラムネを忍ばせてある。
(まあ滝沢にはラインで誘えって言われそうだけど……そんな勇気、あったら最初っから苦労しないっつうの)
どうせ寄り道するのなら、あんな大人数ではなく太一と二人きりがよかった。今度は自分から誘ってみたいのだが、いかんせんハードルが高すぎるのだ。正直、少女漫画の主人公みたいなことをしている自覚もある。太一とのトークルームには、いまだに挨拶のスタンプしか送ったことがない。
(いきなり一緒に帰ろうとか言っても、なんでだって不審がられるにきまってる)
どうせなら待っている間、たまには真面目に部活動をしようと思い立った。部室しか使ったことのない写真部――活動日は「部員の気が向いた日のみ」。
顧問って誰だったっけと思い出しながら、ろくすっぽ書かれたことのない写真部の枠にチョークで小さく「活動あり」と書いておいた。別に悪いことをしているわけでもないのに、なんだか気恥ずかしい。圭太はチョークの粉がついたままの手でもう一度ゴミ箱を抱え、急いで教室に戻った。
「マスクを外してテーブル越しに会話すると、濃厚接触扱いになるらしいよ」
随分な時間差で親からそんな情報をもらった。夕飯を食べ終わった圭太は「ふうん」とだけ返し、自室に引きこもってベッドでFCOにログインした。ちょうどサナがプレイ中だったので、久しぶりに通話しながらのチームランク戦に参加する。そこで他愛もない話をする中、放課後マックに行った話も浮上した。
「いいねえ、青春してるねえ。高校生らしいじゃーん」
「でもリア充の会話に全然ついていけなかったわ」
「いいなあ、家に引きこもりすぎて久しく行ってないなあ。安いコーヒー一杯で充電しながらゲームやるには最適よなあ、あそこ」
「……そう?」
リアル話に花咲く同級生たちに囲まれ、誰とも話さず一人ゲームしていた圭太は、あれを最適とは言い難くて閉口した。
「高校ん時の寄り道っつったら、だいたいゲーセンかカラオケっしょ」
「もともと学校周辺は田舎だからそういうのない。唯一あったフードコートとゲーセンと、駅のコンビニも閉鎖しちまった」
「マジで? 倒産とか?」
「んー……多分」
「うわあ……世知辛すぎる」
学校内ではもちろん、どこの店舗でもクラスター発生は経営の生命線を失うレベルの大事件だ。それを回避しようと営業を縮めたり無理な感染症対策を施した結果、営業不振に陥った小さな店舗が次々に閉店していく。
シャッター街になった駅前は、滅んだ世界のように静かだ。
「で、行き場に困った奴らが、マックみたいな大手チェーン店に群がるってわけね。それでクラスター発生したら元も子もないのに」
「思った。でもまあ、アクリル板があったし……」
「甘いぞケイタ。あんな陳腐な板一枚で、しゃべくり魔の攻撃を防げると思う?」
「……」
「やっぱさあ、家でネトゲしてんのが一番安全だよなー!」
確かにサナの言う通りだ。ナゲットと買い食いへの憧れに目がくらみ、不特定多数の見知らぬ人間とマスクなし至近距離で食事をとってしまったことを圭太は激しく後悔した。ああ今度こそ、濃厚接触者になってしまうかもしれない。
――という杞憂は、一週間もしないうちに消え去った。
体調を崩すことなく数日過ぎた放課後。圭太は日直のごみ捨て当番で昇降口を通った。そこには部活動の連絡掲示板が置いてある。ゴミ箱を持ったまま掲示板をぐるりと見渡し、テニス部の予定を確認した。今日は外練習、テニスコート。時間も書いてある。
この練習が終わる時間に偶然を装って下駄箱に向かえば、太一に会えるかもしれない。そうすれば一緒に帰ろうと誘ってもらえるかもしれないし、駅までは別々であっても、そこからは同じ電車便に乗れる。あいにくコンビニは開いていないが、鞄にはカントリークッキーや熱中症対策のラムネを忍ばせてある。
(まあ滝沢にはラインで誘えって言われそうだけど……そんな勇気、あったら最初っから苦労しないっつうの)
どうせ寄り道するのなら、あんな大人数ではなく太一と二人きりがよかった。今度は自分から誘ってみたいのだが、いかんせんハードルが高すぎるのだ。正直、少女漫画の主人公みたいなことをしている自覚もある。太一とのトークルームには、いまだに挨拶のスタンプしか送ったことがない。
(いきなり一緒に帰ろうとか言っても、なんでだって不審がられるにきまってる)
どうせなら待っている間、たまには真面目に部活動をしようと思い立った。部室しか使ったことのない写真部――活動日は「部員の気が向いた日のみ」。
顧問って誰だったっけと思い出しながら、ろくすっぽ書かれたことのない写真部の枠にチョークで小さく「活動あり」と書いておいた。別に悪いことをしているわけでもないのに、なんだか気恥ずかしい。圭太はチョークの粉がついたままの手でもう一度ゴミ箱を抱え、急いで教室に戻った。
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