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白うさぎと黒うさぎの物語
オメガの病気は面会謝絶?
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**
ある日、元気に家事をしていたはずのヒカルが突然倒れた。
その時のぼくは王様の外交仕事に付き添って遠征していたから、その場にいなくて何もできなかった。
じいやが傍にいてくれたらしいんだけど、ぼくには彼と会わない方がいいと忠告される。
どうして?
心配して飛んで帰ってきたのに。会わせてもらえないの?
「ヒカル様は、オメガが一か月に一度訪れる病気で」
「病気⁉ じゃあぼくが看病する」
「いけません……これは人々を惑わす毒のような甘い香りを放ち、高熱を出して何もできなくなるオメガ特有の病気です。我々にはお薬を飲ませてあげる以外に看病できることはありません。オメガという性別は、この病気になると凶悪な兵器にすらなります」
「兵器……? どういうこと」
「詳しいことは言えませんが、彼はきっとこの症状を悪用して国を陥れようとした人間どもに捕まっていたのです。むしろ傍にカツユキ様やアルファの誰かがいれば、ヒカル様がお困りになります」
「どうして困るの……?」
じいやは困った顔をしながら、「ヒカル様がそう望んでいるからですよ」と告げた。
あんなに懐っこかったヒカルが、ぼくにすら会いたくないと言っているのだろうか。にわかには信じられなかった。
「大丈夫です、今はお薬を飲んで眠っていらっしゃいますから。三日後には、お元気になって再び会えますよ」
同じお城に住んでいるのに、三日も会えないなんて辛すぎる。
おまけにヒカルは病気で苦しんでいるというのに、ぼくはその間、またつまらない帝王学の勉強ばかりして退屈な時間を過ごさなければいけないのか。
けれど、ヒカルの部屋の前で仁王立ちして動かないじいやには、どうしたって勝てない。
すごすご引き上げて自分の部屋に閉じこもったけれど、納得できないぼくは行動に出た。
それは一国の王子という立場では、怒られるかもしれない……。
**
――プシュウッ!
しゅわしゅわ……しゅわしゅわ……
深夜の廊下にそっと置いた睡眠剤入りの催涙スプレーが巻かれる音がした。しばらくわあわあと喧噪が響き、やがて物音ひとつしなくなる。
ぼくはそっとストールで作ったマスクをして部屋の外に出た。
誰もいない――いや、数人の使用人が廊下で横たわっている。大丈夫、殺したりなんかしない。ちょっとお疲れのみんなにたっぷり眠ってもらうだけだ。作り方は、お城の書架にある蔵書で見かけて、覚えていた。野草と科学装置を組み合わせて作る、籠城戦闘時の兵器。
ヒカルの部屋の前で、漆黒の耳を垂らしてじいやが眠っていた。
ごめん、じいや。
どうしてもヒカルに会いたいんだ。眠っている姿でもいい、ちゃんとそこにいるかどうか、確かめて。熱にうなされてしんどそうにしていたら、手を握り締めて子守歌を歌ってあげたい。
ぼくはそっと部屋の扉を開けて、中に入った。そこだけふわりと香る甘い匂いに、引き寄せられるように。
ある日、元気に家事をしていたはずのヒカルが突然倒れた。
その時のぼくは王様の外交仕事に付き添って遠征していたから、その場にいなくて何もできなかった。
じいやが傍にいてくれたらしいんだけど、ぼくには彼と会わない方がいいと忠告される。
どうして?
心配して飛んで帰ってきたのに。会わせてもらえないの?
「ヒカル様は、オメガが一か月に一度訪れる病気で」
「病気⁉ じゃあぼくが看病する」
「いけません……これは人々を惑わす毒のような甘い香りを放ち、高熱を出して何もできなくなるオメガ特有の病気です。我々にはお薬を飲ませてあげる以外に看病できることはありません。オメガという性別は、この病気になると凶悪な兵器にすらなります」
「兵器……? どういうこと」
「詳しいことは言えませんが、彼はきっとこの症状を悪用して国を陥れようとした人間どもに捕まっていたのです。むしろ傍にカツユキ様やアルファの誰かがいれば、ヒカル様がお困りになります」
「どうして困るの……?」
じいやは困った顔をしながら、「ヒカル様がそう望んでいるからですよ」と告げた。
あんなに懐っこかったヒカルが、ぼくにすら会いたくないと言っているのだろうか。にわかには信じられなかった。
「大丈夫です、今はお薬を飲んで眠っていらっしゃいますから。三日後には、お元気になって再び会えますよ」
同じお城に住んでいるのに、三日も会えないなんて辛すぎる。
おまけにヒカルは病気で苦しんでいるというのに、ぼくはその間、またつまらない帝王学の勉強ばかりして退屈な時間を過ごさなければいけないのか。
けれど、ヒカルの部屋の前で仁王立ちして動かないじいやには、どうしたって勝てない。
すごすご引き上げて自分の部屋に閉じこもったけれど、納得できないぼくは行動に出た。
それは一国の王子という立場では、怒られるかもしれない……。
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――プシュウッ!
しゅわしゅわ……しゅわしゅわ……
深夜の廊下にそっと置いた睡眠剤入りの催涙スプレーが巻かれる音がした。しばらくわあわあと喧噪が響き、やがて物音ひとつしなくなる。
ぼくはそっとストールで作ったマスクをして部屋の外に出た。
誰もいない――いや、数人の使用人が廊下で横たわっている。大丈夫、殺したりなんかしない。ちょっとお疲れのみんなにたっぷり眠ってもらうだけだ。作り方は、お城の書架にある蔵書で見かけて、覚えていた。野草と科学装置を組み合わせて作る、籠城戦闘時の兵器。
ヒカルの部屋の前で、漆黒の耳を垂らしてじいやが眠っていた。
ごめん、じいや。
どうしてもヒカルに会いたいんだ。眠っている姿でもいい、ちゃんとそこにいるかどうか、確かめて。熱にうなされてしんどそうにしていたら、手を握り締めて子守歌を歌ってあげたい。
ぼくはそっと部屋の扉を開けて、中に入った。そこだけふわりと香る甘い匂いに、引き寄せられるように。
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