11 / 12
白うさぎと黒うさぎの物語
白うさぎと黒うさぎの、おわりを告げる物語
しおりを挟む
気が付いた時はもうお日様がてっぺんに上がっていて、ぼくは自分の部屋のベッドで泥のように眠りこけていた。
睡眠薬、自分でもうっかり吸ってしまったのかな。
ううんそれよりも。
……
無意識にヒカルにしてしまったことを思い出して、白い耳が真っ赤に染まった。
それから部屋の扉に重い鍵をかけられていることに気づいて、ぼくはしでかした過ちをやっと認識した。
「お父様、じいや。ごめんなさい」
二人が自分の部屋に来たのがわかって、ぼくは身を起こした。
げんこつの一発や二発は覚悟していたし、王子という立場で浅はかな行動をとった自分への処罰はもっと重いに違いない。
「お前の身体はもう何ともないのか」
「……え?」
開口一番怒鳴られると思っていたのに、王様の言葉はそれとは全然違った。よく見れば、じいやも心配そうな顔をしてぼくを見つめていた。
「お前はオメガに襲われ、瘴気に当てられて昏睡状態に陥っていたのだ。お前が無事でよかった」
「……瘴気……?」
「ご無事でなによりです、カツユキ様。私が至らないばかりに、オメガの毒から貴方様を御守りすることができず、申し訳ありません」
どうして?
ぼくが言いつけを守らないで、ルールを破ってヒカルの部屋に入って、自ら会いに行ったのに。まるでヒカルが悪者になったような、そんな言葉にすり替わっているんだろう。
――そうだ、ヒカルは。
「ヒカルはどうなったんですか!? あの子は今どこに」
「カツユキ」
その名を告げるなとばかりに制され、首を横に振られ、ぼくは何もかもすべて察した。
「ちが……違う、ぼくは、ぼくが悪かったのに……あの子は何も悪い事なんてしてない!」
王族だけが何もかも優遇されるなんてそんな世界は許されない。これはぼくの過ちだ。
けれどその言葉こそ封じ込められ、きつく怒られ、ぼくの目からは初めて涙がぼろぼろ零れ落ちた。その姿をみても、父王は毅然としたまま冷たい事実を突きつけてきた。
「……カツユキ。あの黒うさぎのことは二度と口にするな。そして忘れるんだ」
「……運命の番なのに?」
「あれはお前の番なんかじゃない。ただの醜悪な奴隷オメガだ。人間とうさぎ獣人の混血種。転生してきた人間が、アルファうさぎの親戚筋を下町で犯して産まれた気の毒な――怪物だ。城に来てから調査した結果、出自と素性は全て判明した、詳細はすべてじいやに聞くがいい」
「……奴隷……って……」
「オメガの瘴気で惑わされ、まだその花の香りを知らなかった子どものお前が、あれを運命の番だと勘違いして思い込んだだけだ。いいか、番というものはそんな簡単に見つかるものじゃない。間違っても二度とあれを番だと発言してはならぬ」
勘違い?
あんなに可愛いと思って、ずっと傍にいたいと願った暖かい感情も、おいしいスープの味も全部。
全部……間違っていたの?
けれどそれは、最初に外出できる年齢を待たず「街に出たい」とじいやにせがんだ、ぼくのせいだ。そんな悲しい事実は、知りたくなんてなかった。
王様はベッドに突っ伏して泣き崩れたぼくに背を向けて、静かに部屋を出て行った。
「たとえお前が、あのうさぎに何かをしたと言い張ったとしても、わしはそれを見ておらぬから一切認めない」
ぼくの犯罪と、初めて経験した「ヒート」は、こうやってすべて隠蔽された。
そしてヒカルは、知らない間にいなくなっていた。
睡眠薬、自分でもうっかり吸ってしまったのかな。
ううんそれよりも。
……
無意識にヒカルにしてしまったことを思い出して、白い耳が真っ赤に染まった。
それから部屋の扉に重い鍵をかけられていることに気づいて、ぼくはしでかした過ちをやっと認識した。
「お父様、じいや。ごめんなさい」
二人が自分の部屋に来たのがわかって、ぼくは身を起こした。
げんこつの一発や二発は覚悟していたし、王子という立場で浅はかな行動をとった自分への処罰はもっと重いに違いない。
「お前の身体はもう何ともないのか」
「……え?」
開口一番怒鳴られると思っていたのに、王様の言葉はそれとは全然違った。よく見れば、じいやも心配そうな顔をしてぼくを見つめていた。
「お前はオメガに襲われ、瘴気に当てられて昏睡状態に陥っていたのだ。お前が無事でよかった」
「……瘴気……?」
「ご無事でなによりです、カツユキ様。私が至らないばかりに、オメガの毒から貴方様を御守りすることができず、申し訳ありません」
どうして?
ぼくが言いつけを守らないで、ルールを破ってヒカルの部屋に入って、自ら会いに行ったのに。まるでヒカルが悪者になったような、そんな言葉にすり替わっているんだろう。
――そうだ、ヒカルは。
「ヒカルはどうなったんですか!? あの子は今どこに」
「カツユキ」
その名を告げるなとばかりに制され、首を横に振られ、ぼくは何もかもすべて察した。
「ちが……違う、ぼくは、ぼくが悪かったのに……あの子は何も悪い事なんてしてない!」
王族だけが何もかも優遇されるなんてそんな世界は許されない。これはぼくの過ちだ。
けれどその言葉こそ封じ込められ、きつく怒られ、ぼくの目からは初めて涙がぼろぼろ零れ落ちた。その姿をみても、父王は毅然としたまま冷たい事実を突きつけてきた。
「……カツユキ。あの黒うさぎのことは二度と口にするな。そして忘れるんだ」
「……運命の番なのに?」
「あれはお前の番なんかじゃない。ただの醜悪な奴隷オメガだ。人間とうさぎ獣人の混血種。転生してきた人間が、アルファうさぎの親戚筋を下町で犯して産まれた気の毒な――怪物だ。城に来てから調査した結果、出自と素性は全て判明した、詳細はすべてじいやに聞くがいい」
「……奴隷……って……」
「オメガの瘴気で惑わされ、まだその花の香りを知らなかった子どものお前が、あれを運命の番だと勘違いして思い込んだだけだ。いいか、番というものはそんな簡単に見つかるものじゃない。間違っても二度とあれを番だと発言してはならぬ」
勘違い?
あんなに可愛いと思って、ずっと傍にいたいと願った暖かい感情も、おいしいスープの味も全部。
全部……間違っていたの?
けれどそれは、最初に外出できる年齢を待たず「街に出たい」とじいやにせがんだ、ぼくのせいだ。そんな悲しい事実は、知りたくなんてなかった。
王様はベッドに突っ伏して泣き崩れたぼくに背を向けて、静かに部屋を出て行った。
「たとえお前が、あのうさぎに何かをしたと言い張ったとしても、わしはそれを見ておらぬから一切認めない」
ぼくの犯罪と、初めて経験した「ヒート」は、こうやってすべて隠蔽された。
そしてヒカルは、知らない間にいなくなっていた。
10
あなたにおすすめの小説
モブなんかじゃ終わらない!?
MITARASI_
BL
気がつけばそこは、人気BLゲームの世界。
けれど与えられた役割は、攻略対象でも悪役でもない――ただのモブ。
本来なら物語の外でひっそりと生きていくはずだった。
だが、そんな彼の存在が、少しずつ“運命のルート”を揺さぶっていく。
選ばれないはずのモブが紡ぐ、新たな恋の物語。
ゲームの定めを超えて、彼が辿り着く未来とは――。
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
冤罪で追放された悪役令息、北の辺境で幸せを掴む~恐ろしいと噂の銀狼将軍に嫁いだら、極上の溺愛とモフモフなスローライフが始まりました~
水凪しおん
BL
「君は、俺の宝だ」
無実の罪を着せられ、婚約破棄の末に極寒の辺境へ追放された公爵令息ジュリアン。
彼を待ち受けていたのは、「北の食人狼」と恐れられる将軍グリーグとの政略結婚だった。
死を覚悟したジュリアンだったが、出会った将軍は、噂とは真逆の不器用で心優しいアルファで……?
前世の記憶を持つジュリアンは、現代知識と魔法でボロボロの要塞を快適リフォーム!
手作りスープで将軍の胃袋を掴み、特産品開発で街を救い、気づけば冷徹将軍から規格外の溺愛を受けることに。
一方、ジュリアンを捨てた王都では、破滅の足音が近づいていて――。
冤罪追放から始まる、銀狼将軍との幸せいっぱいな溺愛スローライフ、ここに開幕!
【オメガバース/ハッピーエンド/ざまぁあり/子育て/スパダリ】
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
無自覚オメガとオメガ嫌いの上司
蒼井梨音
BL
ベータとして生きてきた無自覚オメガの小国直樹は、オメガ嫌いの白鷹課長のいる部署に異動になった。
ビクビクしながら、なるべく関わらないように仕事をしてたのに、
ペアを組んでいた先輩が倒れてしまい、課長がサポートすることに。
そして、なぜか課長にキスされてしまい…??
無自覚オメガ→小国直樹(24)
オメガ嫌いの上司→白鷹迅(28)アルファ
第一部・完
お読みいただき、ありがとうございました。
第二部
白鷹課長と一緒に住むことになった直樹。
プロジェクトのこととか、新しくできた友だちの啓さんのこととか。
相変わらず、直樹は無自覚に迅さんに甘えています。
第三部
入籍した直樹は、今度は結婚式がしたくなりました。
第四部
入籍したものの、まだ番になってない直樹と迅さん。
直樹が取引先のアルファに目をつけられて……
※続きもいずれ更新します。お待ちください。
直樹のイラスト、描いてもらいました。
娼館で死んだΩですが、竜帝の溺愛皇妃やってます
めがねあざらし
BL
死に場所は、薄暗い娼館の片隅だった。奪われ、弄ばれ、捨てられた運命の果て。けれど目覚めたのは、まだ“すべてが起きる前”の過去だった。
王国の檻に囚われながらも、静かに抗い続けた日々。その中で出会った“彼”が、冷え切った運命に、初めて温もりを灯す。
運命を塗り替えるために歩み始めた、険しくも孤独な道の先。そこで待っていたのは、金の瞳を持つ竜帝——
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
溺愛、独占、そしてトラヴィスの宮廷に渦巻く陰謀と政敵たち。死に戻ったΩは、今度こそ自分自身を救うため、皇妃として“未来”を手繰り寄せる。
愛され、試され、それでも生き抜くために——第二章、ここに開幕。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる