王子様はΩのうさぎに恋をする

さくら怜音/黒桜

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白うさぎと黒うさぎの物語

白うさぎと黒うさぎの、おわりを告げる物語

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気が付いた時はもうお日様がてっぺんに上がっていて、ぼくは自分の部屋のベッドで泥のように眠りこけていた。
睡眠薬、自分でもうっかり吸ってしまったのかな。

ううんそれよりも。
……
無意識にヒカルにしてしまったことを思い出して、白い耳が真っ赤に染まった。
それから部屋の扉に重い鍵をかけられていることに気づいて、ぼくはしでかした過ちをやっと認識した。


「お父様、じいや。ごめんなさい」

二人が自分の部屋に来たのがわかって、ぼくは身を起こした。
げんこつの一発や二発は覚悟していたし、王子という立場で浅はかな行動をとった自分への処罰はもっと重いに違いない。

「お前の身体はもう何ともないのか」
「……え?」

開口一番怒鳴られると思っていたのに、王様の言葉はそれとは全然違った。よく見れば、じいやも心配そうな顔をしてぼくを見つめていた。

「お前はオメガに襲われ、瘴気に当てられて昏睡状態に陥っていたのだ。お前が無事でよかった」
「……瘴気……?」
「ご無事でなによりです、カツユキ様。私が至らないばかりに、オメガの毒から貴方様を御守りすることができず、申し訳ありません」

どうして?
ぼくが言いつけを守らないで、ルールを破ってヒカルの部屋に入って、自ら会いに行ったのに。まるでヒカルが悪者になったような、そんな言葉にすり替わっているんだろう。
――そうだ、ヒカルは。

「ヒカルはどうなったんですか!? あの子は今どこに」
「カツユキ」

その名を告げるなとばかりに制され、首を横に振られ、ぼくは何もかもすべて察した。

「ちが……違う、ぼくは、ぼくが悪かったのに……あの子は何も悪い事なんてしてない!」

王族だけが何もかも優遇されるなんてそんな世界は許されない。これはぼくの過ちだ。
けれどその言葉こそ封じ込められ、きつく怒られ、ぼくの目からは初めて涙がぼろぼろ零れ落ちた。その姿をみても、父王は毅然としたまま冷たい事実を突きつけてきた。

「……カツユキ。あの黒うさぎのことは二度と口にするな。そして忘れるんだ」
「……運命の番なのに?」
「あれはお前の番なんかじゃない。ただの醜悪な奴隷オメガだ。人間とうさぎ獣人の混血種。転生してきた人間が、アルファうさぎの親戚筋を下町で犯して産まれた気の毒な――怪物モンスターだ。城に来てから調査した結果、出自と素性は全て判明した、詳細はすべてじいやに聞くがいい」
「……奴隷……って……」
「オメガの瘴気で惑わされ、まだその花の香りを知らなかった子どものお前が、あれを運命の番だと勘違いして思い込んだだけだ。いいか、番というものはそんな簡単に見つかるものじゃない。間違っても二度とあれを番だと発言してはならぬ」

勘違い?
あんなに可愛いと思って、ずっと傍にいたいと願った暖かい感情も、おいしいスープの味も全部。
全部……間違っていたの?
けれどそれは、最初に外出できる年齢を待たず「街に出たい」とじいやにせがんだ、ぼくのせいだ。そんな悲しい事実は、知りたくなんてなかった。

王様はベッドに突っ伏して泣き崩れたぼくに背を向けて、静かに部屋を出て行った。

「たとえお前が、あのうさぎに何かをしたと言い張ったとしても、わしはそれを見ておらぬから一切認めない」


ぼくの犯罪と、初めて経験した「ヒート」は、こうやってすべて隠蔽された。
そしてヒカルは、知らない間にいなくなっていた。


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