できそこないの幸せ

さくら怜音/黒桜

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第九章 VS相羽修行

14 *R

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帰宅するなり、自室ベッドに押し倒されて光は面食らった。
途中からやたら機嫌が悪くなり、強引に腕を引っ張るので何か怒らせたかなと思案を巡らせていたのだが。

「挨拶忘れてたの、そんなに悪いことだったのか」
「……相変わらず無自覚に人をたらしこむのは、お前の方がうまいよね」
「え……? っ、ぅんんっ」

静かにキレる勝行が暗闇の中で無理やり唇を奪ってくる。噛みつくような勢いで押し潰してきて、息ができなくなりそうだ。どうにか逃れ「ぷはっ」と酸素を取り込もうとした途端「今度は口輪(マズル)でもするか」と頬を捕まれ、首が不自然に持ち上がる。

「う、うっ」

力が強すぎて反抗もできない。こんなタイミングでまた凶悪な方の勝行が舞い戻ってきたのだろうか。

「俺以外の人間と容易くキスばかりするの、そろそろ我慢の限界なんだけど」
「……っ」
「お仕置きが必要?」

甘くも低い声で耳元に囁かれて、光はぶるっと全身身震いした。久しぶりの強烈な感覚に、身体がぞくぞくと期待しているのが分かる。

「なんだよ……オッサンとキスしたら、お仕置きなの……」
「嫉妬深いし、お前に自由はあげないって言っただろ。光は俺のものだ……許可なくこの唇で他人の肌に触れるな。逆にお前の肌に他人の唇をつけることも許せない」
「……ああ。晴樹のあれか。挨拶のキスにも許可がいるってか。そういうお前こそ全然キスしてくれねえくせに」
「付き合うの、後悔した?」
「まさか」

光はにんまり笑うと、暗がりの中で勝行の表情をよく見た。瞳は血走った赤ではないからケイではない。けれど表情が卑猥に歪んでいるから、こいつは間違いなくブラックサイドの勝行だ。ライブ中の降臨じゃなくてよかったと思いつつ、光は揶揄うように反論した。

「一か月以上付き合ってんのにいい子ちゃんすぎて何もしてくれねぇから。欲求不満溜まってたんだよ。ちょうどいいわ」
「……ああそう。そんなに遊んでほしかった? 罰が欲しくて悪さするなんて……とんでもないエロわんこだな」

――そういうつもりじゃないんだけどな。光は苦笑した。どうやら勝行に嫉妬心が溜まりすぎると、ブラックに豹変してお仕置きタイムが始まるようだ。途中で助けてくれるケイがいなくなった分、これは結構ハードな玩具遊びが始まる予感しかしない。光は生唾を飲み込んだ。

「どうせなら玩具じゃなくて、お前のコレがいいけどな」
「贅沢でわがままな口答えだね」

もう反抗できないことは分かりきっているので、光は跨る勝行の股間を生足で撫でさすり、その気にさせようと誘ってみる。けれど勝行はまだ余裕めいた表情で、愉しそうに光の服を脱がせていく。いつもの彼ならあり得ない光景だ。そしてまたベッド下から硬質アタッシュケースを引っ張り出してきて、色んなアダルトグッズを物色し始めた。

「はは、これとかよさげ。【前立腺直撃!ペ二締めメスイキアナニープラグ】だって」
「うっ……」

名前を聞いただけで光の背筋にぞわっと寒気が走る。それは絶対気持ちよすぎて気が狂いそうになるアイテムだ。ドス黒い変形棒の先にシリコンリングが繋がっていて、構造的にもすぐ察しが付く。ベッドの上で勝行が電動スイッチを入れた途端、激しい振動が伝わってきて光の股間が期待に膨らんだ。

「毎回思うんだけどなんでそんなモンが俺のベッドにあるんだよ」
「使い方知ってる? ああ、知ってそうだね、すごく物欲し気に見てる……使う?」
「聞いてねえし。……自分でやれってか」

すると勝行はプラグを光の内腿に当て、反応を確かめるように竿先を見つめてくる。急に微細な振動を当てられた光は「ひあぁあっ」と情けない悲鳴をあげた。

「うわ、先走りダラダラ。そんなに涎垂らして欲しがらないでよ。まるで俺より玩具の方が好きって顔してる。そんなこと言われたら、嫉妬で気が狂いそうだ」
「んっ……も……もう十分狂ってるくせに、何を今更……っ」
「狂ってる? ああそうだね、相羽家の男は全員狂ってるんだ。こういう調教をすることが『当たり前』の家で育ったからね。でも光は選ばれし人間なんだよ。俺のお仕置きに耐えられる男は……お前しかいなかった」
「……なに、それ」

ブラック勝行の饒舌な告白に、光は心臓を逸らせた。――相羽家の男は全員狂ってる?

「お前の親父さんも兄貴も……? みんな、こういうことするのか」
「そうだよ。……父さんはあまり得意じゃないみたいだけど。おじいさまの懲罰部屋はいつもカビと精液臭くて酷いもんだった。安心して、光にはあんな不衛生な場所、使わせないよ。俺たちにふさわしい、清潔なベッドと部屋を用意したからね」

さあ、お仕置きの時間だよ。
弓なりに反った勝行の目が、光の全身を舐め回して逃がさない。股間に天下の宝刀を持っているくせに、使いもしないで玩具で散々虐めて遊ぶこの性癖の理由が少し分かった気がして、光は眉間に皺を寄せ引きつり笑いを浮かべた。

(もしかして……片岡のおっさんも、経験済みだったりするのかな……?)

行き過ぎた愛情で使用人を監禁したり、罰を与えて調教するのが当たり前の家で育った男。一体いくつの時からこんな遊びを教えてもらっていたのやら。

「いいけど、コレ使ってる時に別の玩具突っ込むのはやめてくれよ……マジで死ぬから」
「ああ、俺は優しいから、逆にイキそうになったら引き抜いてあげる。リングはつけたままでね」
「くそっ、悪魔め……!」

桐吾にも強要されたことがない、玩具アナニーの刑に悔し涙を浮かべつつ、光は盛大に喘いで勝行の遊びに興じた。こんなめちゃくちゃな快感でも、満足してイッてしまう自分に呆れながら。
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