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第二章 信仰と差別

第十三話 塔の美女

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「バ~ブ」

 ソーアさんに聞いたフェリアさんのいる塔を目指している。

 シュミットから歩きで五日ほどの塔を僕は30分ほどで着いた。塔は5階ほどの高さがある。塔と言うよりも灯台のような形をしている。

「ア~イ」

 僕は塔の一階から入ろうと前へ降りる。見張りもいないので自由に入れそうだ。

 バチ!バチン!

「アイ?」

 塔の扉に手を掛けた時何か火花が散って塔の周りにあった松明のような物が壊れていった。

 これってまさか警報装置か罠?。僕は痛くもかゆくもなかったのでそのまま入ることにした。

 確かにこんな所に見張りもなしにしていたら盗賊とか来ちゃうもんな。住むところを選ぶときはやっぱ防犯だよね。

 ペタペタペタと階段を上がっていく。外から見て思った通りの螺旋状の階段を登っていく。手すりのない階段は吹き抜けのようになっているのでとても危ない。

 しばらく登っていくと扉が一つ。たぶん頂上だと思うんだけどその頂上の全部が一つの部屋になっているようだ。そして僕は扉の取っ手に手を掛けると再度。

 バチ!バチン!

 と電気が走り今登ってきた階段の松明のようなものの火が消えていく。

 これはやっぱり僕に負けてブレーカーみたいなのが落ちた感じなのかな?。僕はそう思い申し訳ない思いになったが致し方ない、フローラちゃんのお母さん、フェリアさんがいるであろう扉を開けていく。

 ギギギ~!

 という音と共に扉が開くと思っていた通り全体が一つの部屋で前面窓の10畳ほどの部屋が現れた。トイレとお風呂以外の壁はすべてガラス張りになっている。なので中々の絶景である。

「だ~れ?」

 少し間延びした声が聞こえる。扉の裏手から声が聞こえたのでそちらにハイハイで向かうとフローラちゃんに似た綺麗なブロンド髪の女性がネグリジェのような薄地の服でソファーに座っていた。

「あら?あなたも加護なしなのね・・・」

 ソファーに座る女性はそう言うとソファーから立ち上がり僕を抱き上げる。

「こんなに小さいのにどうやってこの塔を上ってきたの?一人なのでしょ?」
「アイ!」
「あら?手紙?何かしら」

 女性は僕を抱いたままソファーに座りなおすと心配して話しかけてきた。僕はソーアさんにもらった手紙を渡した。

「アイ!」
「まあ、元気なお返事。私はフェリアよ。ソーアの知り合いなのね。なるほどそれで・・・。だから加護なしなのにマナオーバーにならなかったのね。確かあの罠は大人10人分のマナが放たれるはずよ」

 ソーアさんの手紙を見た事で僕の秘密を少し共有した。フェリアは身振り手振りを加えて罠の話を細かく説明してくれた。

 あの罠はマナを注いでくるのか・・・。大人10人ってまさかステータス上がってたりして・・・後で確認しとこう。

「あら?あなた、フローラの知り合い?あの子の匂いがするわ」

 僕を首筋辺りの匂いを嗅ぐフェリアさん。いやんくすぐったいよ~。

「はじめましてフェリアしゃん、ぼくはフローラちゃんのともだちだよ」
「あら~、こんなに若いのにお喋りがお上手ね」

 フェリアさんはパチパチと手を叩き僕を褒めてくれた。この人もメリアお母様のように加護なしを生んだショックでここにいると思ったのだけど何だか違うみたい。

「フェリアしゃん、フローラちゃんのためにもフェリアしゃんにベンジャミンをせっとくしてほしいんです」
「え!、ベンジャミン様を?何故?」

 僕は首を傾げるフェリアさんに今回のシュミットでの事を話した。戦争と言うワードに悲しい顔をしたフェリアさんは肩を落として話し出した。

「ジーニちゃん・・・ごめんなさいね。フローラの友達のお願いは聞いてあげたいんだけど。私はここからは出られないのよ」

 フェリアさんは悲しい顔のままそう話す。僕は何で出られないのと聞いたんだけどそれはとても悲しい理由だった。

「ジーニちゃんも加護なしならわかるでしょ・・・ジーニちゃんのお母さんがそうだったように私も迫害されたのよ。ベンジャミン様は優しく私の頭を撫でて私だけに聞こえる声でこう言ってくれたの。『世界は君に厳しい声をかけるが僕はいつまでも愛を囁いているよ』って」

 わ~お。あまぁぁ~~~~い!!!とと人のネタ使っちゃだめだよね。シリカさんにもそんな言葉言ってみたいな~。いやいつか言う!絶対にだ!。

 僕は感心しているとフェリアさんの顔が真っ赤になっていって頬を抑えてそっぽ向いちゃった。照れてるのかな。

「えへへ、それで私はここにとどめる呪いでここから出られないの。でも私はベンジャミン様さえ会いに来てくれればそれでいいの・・・・フローラに会えないのは寂しいけどね」

 フェリアさんは遠くのシュミットのある方向を見てそう話した。う~やっぱり娘に会えないのは悲しいよね・・・あれ?呪い?。僕なら治せるだろうけど。

「フェリアしゃんはフローラちゃんにあいたい?」
「え?そりゃあ、会いたい・・・でもここからは出られないわ」
「のろいならぼくがなおせるよ」
「え!?」

 フェリアさんはびっくりして僕を見据える。フェリアさんはしばらく考えて首を横に振った。

「ここに居ればベンジャミン様は私を愛してくれる。それだけで私は・・・」
「じゃあ、フローラちゃんはだれがあいしてくれるの?」
「え!?」

 僕の言葉にフェリアさんは困った顔で考え込んだ。悩ませるつもりはないけどどうしてもフローラちゃんの事を考えるとフェリアさんに会わせてあげたくなっちゃう。

「ベンジャミン様はフローラも愛しているはずです!。・・・私はいなくて・・も」

 フェリアさんは自分で言って悲しくなり涙を目に溜めていく。

 悲しいな・・・自分を殺してまでベンジャミンを正当化しようとしている。だけどダメだよ・・。

「こどもっておとうさんおかあさんがあわさってはじめてあいをかんじるんだよ・・・・おかあさんもいなくちゃだめなんだよ!」
「・・・・」

 子供の僕の言葉にどれほどの力があるのかはわからないけど僕は黙っていられなかった。僕の言葉にフェリアさんは俯く。顔は見えないけど涙がこぼれるのが見えた。やっぱり無理をしているんだよ!。何か僕もメリアお母さんと前世のお母さんを思ってしまう。

 涙がこの部屋を包み込みフェリアさんは顔をあげると凛々しく強いお母さんの物になり僕にお願いをした。

「私はフローラに会いたい!!。あなたが会わせてくれるのなら何だってするわ!!」
「アイ!!」

 僕はすぐに[ピュア]の魔法を唱えると呪いは消え去った。そしてフェリアさんを連れてフローラちゃんと同じように宙に浮いて行く。

 フェリアさんはとてもいい笑顔で空を楽しんでくれた

 僕らはまずソーアさんにフェリアさんを会わせようと思い3人の待つ馬車へと空をかける。
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