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第三章 建国

第十四話 月夜の涙

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 僕とフローラちゃんは寄り道をせずにシュミットへと帰ってきた。

 寄り道をしなかったからとても早く帰ってきたよ。

「ジーニ様おかえりなさい!!」

 帰ってくると早速デシウスに捕まった。デシウスは今日の出来事を話す。

「今日、私頑張ったんですよ。ベンジャミンに絡んでくる人を次々と改心させていったんです」
「昨日からのデシウスさんは凄かったんですよ。褒めてあげてください」

 デシウスは褒めてほしそうに今日の成果を話す。ベンジャミンも褒めてあげてほしいと促して来た。

「デシウスはいい子!これからも頑張ってね」
「えへへ、頑張ります....ってこれからってまだここにいなくちゃいけないんですか?。だいぶベンジャミンを邪魔する人達もいなくなったと思うんですけど」

 デシウスは驚いている。確かにだいぶ減ったんだろうけど絶対安全とは言いきれないと思うんだよね。

「え~、だって...ね~?」

 僕はみんな賛同してくれると思ってみんなに視線を送る。だけどみんな僕と目をあわせてくれない。そしてデシウスは泣きそうな顔で僕に近づいてきた。

「ジーニ様、どうかお慈悲を」
「そんな事言ったって....」

 僕は再度みんなを見たんだけどみんな視線を逸らす。みんな薄情だよ!!。ひどいわん。

「わかりました。これ以上いってもジーニ様を困らせるだけですよね....じゃあこうしましょう。今日私と一緒に寝てください!!」
「ええ~」
「そうしてくれないんだったら....泣きます」

 今にも涙が溢れそうなデシウス。僕は仕方なく頷いた。その後デシウスは子供のようにはしゃぐのだった。

 



「ん、ジーニ様から手紙」
「え!ジーニ様から?」

 ララがテレパシーメールを見てシリカに話す。ララはそのまま手紙の内容を話し始めた。

「ん、ジーニ様今日はデシウスと寝るんだって」
「ええ!?」

 シリカはララの言葉に驚愕した。そして目に涙を溜める。

「大丈夫よシリカ。今のはララの冗談よ。私のジーニがシリカ以外の人を選ぶはずないわ」
「そう・・そうですよね。私はジーニ様を信じています」

 メリアの言葉にシリカは自分を取り戻していく。

「ん、シリカごめんね。今のは冗談だけど。ジーニ様、今日はあっちに泊まるみたい」
「・・・」

 バタッ!

「シリカ!!」

 シリカは卒倒したのだった。




 そしてその夜。

「ジーニ様、寝ましょうね~」
「ごめんねデシウス。ちょっとお外で遊んでくるから待っててね」
「ええ~」

 僕はやる事があるので少しデシウスをなだめて外に出ていった。

「ぐふふ、今日こそは」

 そんな声が聞こえる。そうですここは皆さんご存知のロクーデのいる家でございます。僕はロクーデが諦めていないと思って様子を見に来ました。

 やっぱり思った通りのようです。

「私の持っている最高の酒にこの最高の媚薬を入れてっと。ふふふ、ガルドの奴ももう帰したしな...ぐふふ」

 ロクーデは妄想で下品に笑う。そしてローズと一緒に飲もうと階下へと降りる。

「ローズ、ローズ!」
「なんだロクーデ?だから前にも言っただろう。私はお前のお母さんではないぞ」
「いやすまん、一緒に飲もうと思ってな。これは私の持つ最高の酒だぞ。どうだ一緒に?」

 ローズは断ろうと思ったが最高の酒という言葉に負けて一緒に飲むことにした。そして、

「このしゃけはおいしいにゃ~」
「そうだろうそうだろう。ぐふふ」

 ローズはロクーデの思惑通り酔い始めている。ろれつが回らなくなってきたローズを見てロクーデはよだれを垂らした。

「なんにゃか、ねむきゅなってきにゃ~」
「お~お~。そうかそうか、ではベッドに連れて行ってやろう」

 テーブルにもたれかかったローズの肩を持ってベッドへと運ぶロクーデ。その顔はとても紳士とは言えない顔である。

 ローズは自分のベッドへと無防備に横たわる。その姿を見てロクーデはタガが外れた。

「もう我慢できん!!」
「は~い!しゅうりょ~」
「モガ!!、またこの感触!!.....ガバッ」

 僕はロクーデの顔にダイブして気絶させる。ロクーデをまた教会の大きな鐘に括り付けて僕はローズさんの元に帰ってきた。

 ローズさんは服も乱れて布団も被っていなかったので風邪をひくと思い戻ってきたのだ。

 そして僕はローズさんに布団をかぶせていく。

「やはり君だったんだな」
「え!?」

 布団を首元までかけていた時、ローズさんの目が開き口が開いた。僕は驚いて後ずさる。

「半信半疑だったがこの間の君の自供で確信に変わったよ。この間も君は私を助けてくれたんだね」

 ローズさんは前回のロクーデに薬を盛られた話をしているのだろう。ローズさんは僕の返事も聞かずに話し続ける。

「もう帰ってきたという事はもうグリンベイルンへ行って帰ってきたのか?」
「うん、そうだよ。その証拠に、はい!これ」

 僕はシスターから受け取った手紙を渡した。その手紙を見たローズさんは泣いてしまった。

「...ははは、すまない。シスターも変わっていないみたいで安心したよ」
「うん、とてもローズさんに感謝してたよ」
「感謝何て要らないのにな。私はシスターのおかげで生きてこられたのだから」

 ローズさんは酔ったふりをしてロクーデの出方を見ていたようだ。飲んだふりをしてレアアイテムのアイテムバックへと流し込んでいたみたい。

「しかし、今回の事で納得した。君はとても強いのだな」

 ローズさんは僕を見て頬を赤くした。そして僕の顔へ、手を伸ばして頬を触る。

「赤ん坊を好きになってしまっていいのだろうか。確実に私よりも強い、それだけはわかる」

 ローズさんは全く僕から視線を外さずに呟いている。その呟きは僕にも聞こえるんだけど何て反応したらいいのかわからずに聞こえないふりをした。

「シリカには悪いが印をつけさせてもらうよ」

 チュ!

 ローズさんは僕の頬へとキスをした。僕はキスされた頬をさする。

「君が結婚できる歳になったその時、私は33歳ほどか...その時までに私よりも強い者がいなかったとき、私は君を物にする」

 わ~とっても男前。好きになっちゃうよ。でも僕にはシリカさんがいるからダメだってば。と思い僕は首を横に振った。

「....ふふ、そうせくな。時間はまだまだある。本当にその時がくるまでに決めてくれればいいんだよ」
「アウ~」
 
 僕はやっぱり女ったらしになる運命なのかな。シリカさんごめんなさい。

「今日はありがとう、君はもう帰りなさい」

 ローズさんはそう言って僕を帰そうと促す。急に話が変わった事に僕は違和感を感じた。僕は帰ろうとローズさんの後ろの窓に向かうとローズさんのすすり泣く声が聞こえた。

「これが失恋という奴か...中々痛いものなのだな」

 ローズさんの呟きを僕は聞いてしまった。男らしい言葉からは思いもよらなかったけど傷ついていたみたい。

 僕は後ろからローズさんを抱きしめた。

「大丈夫だよ。みんなローズさんを愛してるから。だから元気をだして」

 自分でふっておいていう言葉じゃないけど僕はローズさんを元気づける言葉をかけた。するとローズさんは抱きしめた僕の手を取って口を開いた。

「そうやって女をたぶらかしているのか...。普通の女ならばイチコロだろうな。私もやられてしまったよ」

 再度僕の頬にキスをしたローズさん。僕は流石に何度もキスをされた事でドギマギしてしまう。そんな僕をみてローズさんは笑みをうかべた。

「ふふ、もう大丈夫。私は大丈夫だよ。この間と今回、助けてくれてありがとう。できればこれからも助けてくれると嬉しいな」

 ローズさんは満面の笑みで笑った。

 その時のローズさんは月夜に照らされてとても綺麗だった。


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