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第四章 ルインズガル大陸
第四話 悲しみの雨
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「キーファ、一緒に訓練にいくぞ~」
「またですか?フッティアさん」
[薔薇]のメンバーが常駐するようになってしばらくすると当たり前のようにキーファとフッティアは毎日特訓をしている。時には山へ時には森へと狩りをするのだった。
しかし訓練とは言っているもののフッティアからしたらこれはデートなのである。二人っきりで狩りをしている時はとても照れくさそうにしていた。しかしそんな時は短かった。
「フッティア、私も行く」
「マリーか....」
そう、最近マリーがちょっかいを出してくるようになったのだ。それは何故か...時は少し遡る。
「ふう、やっと終わった....」
「すいやせん。まさかこっちにいるなんて」
マリーはアステリアの付近の山で商人を護衛していたのだ。だが魔物に襲われて苦戦していた。馬車の車軸が壊されてしまったのだ。
その時偶々狩りで通りかかったキーファに車軸を直してもらったのだ。何故キーファが車軸を直せたか、それは建設を学んでいたからである。本当の馬車を直したことがあるわけではないので緊急処置なので完璧ではない。
だがその時にマリーは胸を打たれた。一目惚れという奴である。マリーはローズ以外にそんなことになるのは初めてで、最初風邪かと思ったほどである。だがアステリアに来てからキーファと再会してマリーは恋をしているとわかったのだった。
「キーファ、私も行っていいよね」
「ん?うん。いいんじゃないかな?僕とフッティアさんだと前衛だけだったから僕が投擲で引き付ける事をしていたし。狩人のマリーがいればもっといいのが狩れるかも」
「....」
キーファとマリーのやり取りを無言で見届けるフッティア。少し不満顔なのは言うまでもない。
マリーはフッティアの顔を見ると少し笑みを浮かべるのだった。その笑みをみたフッティアは更に顔をしかめている。
この時の狩りはしれつなものになった。フッティアとマリーの獲物の取り合いでそれはそれは凄い量がアステリアに届くのだった。
「おお。アルスよ。こっちにこい」
「はい....」
アルサレムではアルサレム王が病に倒れていた。会議前にも床に伏せっていたアルサレム王は今も完治していなかった。
医師などの医療の達人達も匙を投げて首を横に振った。アルサレム王の病状は刻一刻と命を削っていくのであった。
「アステリアはどうだ?」
「はい、一度魔物の襲撃を受けたようですが被害もなく撃退したようです。ヘンダークが関わっているようです」
「そうか...ヘンダークか」
アステリア防壁戦での出来事はジーニやフローラの事を隠して話している。何故アルサレムには秘匿にしているのか。それはただの信頼の証であった。
ツヴァイはとても王を信頼していた。なのでまだ言わなくてもいいだろうと思っていたのだ。だがそれが今の状況を作ってしまっている。
アルス王子はアルサレム王が危篤状態だとツヴァイに伝えなかった。
ジーニの存在を知っていれば必ず伝えただろうその情報を。
しかし今はもう、ツヴァイは別の国の者である。自国の弱みを他国に言う事を危ぶまれたのだ。
この判断はエルエスも支持したことでアルス王子も安心して事に及んでいったのだった。
「アルスや...アルサレムを頼んだぞ」
「お父様、そんな事言わないでください。まだ私には、いや、アルサレムにはあなたが必要なんです」
アルスはアルサレムの腕を両手で握り懇願する。だがそのアルサレムの手を触った時に王子は王の死期を感じた。アルスは目に涙を溜める。
アルスのそんな姿を見てアルサレムは辛そうな顔で笑顔を作り握られた手を力強く握り返した。
「アルスや、そなたはとても強い。歴代のどの王よりも。民を信じ同盟国を信じてアルサレムを守っておくれ。今日からそなたがアルサレムを名乗るのだ」
「お父様」
「ははは、今日のアルスは泣き虫だな」
アルサレムはアルスの頭を撫でた。そしてアルスはその手をとって恥ずかしそうにアルサレムを見やるとさっきまで話していたアルサレム王は目をつむり安らかな姿でこと切れた。
アルサレムは主を失い悲しみの雨が降っていく。
ジーニの事を伝えていれば回避されたであろうこの現象がのちの世を左右するとは知らずに時代は移り変わっていく。
「またですか?フッティアさん」
[薔薇]のメンバーが常駐するようになってしばらくすると当たり前のようにキーファとフッティアは毎日特訓をしている。時には山へ時には森へと狩りをするのだった。
しかし訓練とは言っているもののフッティアからしたらこれはデートなのである。二人っきりで狩りをしている時はとても照れくさそうにしていた。しかしそんな時は短かった。
「フッティア、私も行く」
「マリーか....」
そう、最近マリーがちょっかいを出してくるようになったのだ。それは何故か...時は少し遡る。
「ふう、やっと終わった....」
「すいやせん。まさかこっちにいるなんて」
マリーはアステリアの付近の山で商人を護衛していたのだ。だが魔物に襲われて苦戦していた。馬車の車軸が壊されてしまったのだ。
その時偶々狩りで通りかかったキーファに車軸を直してもらったのだ。何故キーファが車軸を直せたか、それは建設を学んでいたからである。本当の馬車を直したことがあるわけではないので緊急処置なので完璧ではない。
だがその時にマリーは胸を打たれた。一目惚れという奴である。マリーはローズ以外にそんなことになるのは初めてで、最初風邪かと思ったほどである。だがアステリアに来てからキーファと再会してマリーは恋をしているとわかったのだった。
「キーファ、私も行っていいよね」
「ん?うん。いいんじゃないかな?僕とフッティアさんだと前衛だけだったから僕が投擲で引き付ける事をしていたし。狩人のマリーがいればもっといいのが狩れるかも」
「....」
キーファとマリーのやり取りを無言で見届けるフッティア。少し不満顔なのは言うまでもない。
マリーはフッティアの顔を見ると少し笑みを浮かべるのだった。その笑みをみたフッティアは更に顔をしかめている。
この時の狩りはしれつなものになった。フッティアとマリーの獲物の取り合いでそれはそれは凄い量がアステリアに届くのだった。
「おお。アルスよ。こっちにこい」
「はい....」
アルサレムではアルサレム王が病に倒れていた。会議前にも床に伏せっていたアルサレム王は今も完治していなかった。
医師などの医療の達人達も匙を投げて首を横に振った。アルサレム王の病状は刻一刻と命を削っていくのであった。
「アステリアはどうだ?」
「はい、一度魔物の襲撃を受けたようですが被害もなく撃退したようです。ヘンダークが関わっているようです」
「そうか...ヘンダークか」
アステリア防壁戦での出来事はジーニやフローラの事を隠して話している。何故アルサレムには秘匿にしているのか。それはただの信頼の証であった。
ツヴァイはとても王を信頼していた。なのでまだ言わなくてもいいだろうと思っていたのだ。だがそれが今の状況を作ってしまっている。
アルス王子はアルサレム王が危篤状態だとツヴァイに伝えなかった。
ジーニの存在を知っていれば必ず伝えただろうその情報を。
しかし今はもう、ツヴァイは別の国の者である。自国の弱みを他国に言う事を危ぶまれたのだ。
この判断はエルエスも支持したことでアルス王子も安心して事に及んでいったのだった。
「アルスや...アルサレムを頼んだぞ」
「お父様、そんな事言わないでください。まだ私には、いや、アルサレムにはあなたが必要なんです」
アルスはアルサレムの腕を両手で握り懇願する。だがそのアルサレムの手を触った時に王子は王の死期を感じた。アルスは目に涙を溜める。
アルスのそんな姿を見てアルサレムは辛そうな顔で笑顔を作り握られた手を力強く握り返した。
「アルスや、そなたはとても強い。歴代のどの王よりも。民を信じ同盟国を信じてアルサレムを守っておくれ。今日からそなたがアルサレムを名乗るのだ」
「お父様」
「ははは、今日のアルスは泣き虫だな」
アルサレムはアルスの頭を撫でた。そしてアルスはその手をとって恥ずかしそうにアルサレムを見やるとさっきまで話していたアルサレム王は目をつむり安らかな姿でこと切れた。
アルサレムは主を失い悲しみの雨が降っていく。
ジーニの事を伝えていれば回避されたであろうこの現象がのちの世を左右するとは知らずに時代は移り変わっていく。
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