異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
84 / 252
第四章 ルインズガル大陸

第二十二話 お帰りと言わせて

しおりを挟む


 デシウスとギールは街の中央の広場で剣を交えていた。その戦いはギールに分があるのだがギールは手加減をしているように見えた。

「守ったとはどういうことだ?」
「気にするなお前は俺へ不満をぶつければいいんだ」

 デシウスの攻撃を難なく受け流すギール。実はこんなに強かったんだね。瞬時にのした僕が強すぎたみたい。

「ぐ、勝手なことを言って!私の不満をぶつけろだと!。私はあの戦争のあと奴隷に落ちたんだぞ。大陸を渡りそこの!ロクーデの奴隷にされたんだ」
「ロクーデの...」

 ギールはロクーデを見る。ロクーデはキョロキョロしていたのをやめてギールを見つめた。

「それは本当か?」
「...デシウスは元、私の奴隷だ」

「...そうだったか」

 ギールは残念そうに俯いた。デシウスも剣をおろして成り行きを見守る。

「ロクーデ、俺はお前とシュミットからこのアステリアまで一緒に旅をしてきて少し楽しいと感じていたんだ。だがエルフを奴隷にしている奴とは思わなかった。それにロクーデお前は金を持っていないんだろ?」
「・・・・金は..ない。だが」

「もういい!。お前はここで奴隷になるんだ。過去を悔い改めろ」

 ギールは悲しいのか俯いてそう言い放った。そしてアステリアの北門へと歩き出すがそれをデシウスに止められる。

「お前達の事情なんか興味ない!。私と勝負しろ」
「・・・黙っていかせてくれないのか」
「それは無理だよ。ギール...」

「な!お前は!!」

 僕はギールの前に姿を現した。するとギールは驚き戸惑い剣を僕に向ける。

「いやだな~、久しぶりにあったんだからここはハグくらいあってもいいんじゃないかな?」
「何を白々しい。お前は俺を肥溜めに放り込んだ犯人だろ」

 ギールは怒りで剣を握る手がプルプル震えていた。それほど屈辱的だったんだろうね。

「今までは黙って見ていたけど僕は怒っているんだよ。ここは僕のお父様の国。こんな往来で剣の稽古何て許したつもりはないよ」

 僕の言葉にデシウスは俯く。ギールは周りをみやりニヤリと笑った。

「お前があの有名なアステリアのジーニだったのか。それを捕まえようとした私は滑稽だったな。だが俺はまだ捕まるわけにはいかない」
「何か事情がありそうだけど、言う気はないの?」

「ああ、これは俺がなす事だ。その為に金が必要だったんだがな。失敗した」

 何だか色々事情がありそうだけど、言わないなら聞かないよ。だって今僕はフローラちゃんの事を考えるだけでせいいっぱいだもん。

「ジーニ様、そんなことはどうでもいいんです。私はエルフを代表してギールを討たないといけないんです」
「デシウス、僕は君のそんな顔は見たくないよ。いつもの笑顔のデシウスでいて」

「...ジーニ様。でも今回はそうもいきません」

 デシウスは唇を噛んで血を流した。僕を抱きたい心に負けないように我慢しているみたい、でも僕を抱きしめたい心は下唇を噛まないとダメなくらいなんだね、僕って愛されてるな~。それだけデシウスの怒りは深いんだろうね。ギールに対して睨みをきかせてる。

「怒りはごもっともだ。だがここで私は討たれるわけにはいかん」

 ギールはそう言い放つと野次馬の子供を人質に取り北門へとあるきだした。

「ギール...それはやっちゃダメだよ」
「黙れ。私は手段を選んでいる暇はないんだ」

 人質の子供が泣き出しているがギールは子供を脇に担ぎ剣を這わせる。

 北門の前まで歩きつくとギールは子供を解放した。

「ではアステリアの者達よ。さらばだ」

 ギールはそう言って[フラッシュ]の魔法を放ち閃光と耳鳴りのような音が辺りを包む。その隙に一瞬にしてその場からいなくなったギールは北のアドスバーンへの道を少し外れて身をひそめる。

「何とか撒けたか」

 デシウスがキョロキョロと辺りを見回している姿を見ながら呟くギール。ギールはデシウスが感知スキルを持っていることも考慮して隠密の魔法の[ハイド]を唱えてある。

「これで本当にさらばだ」

 ギールは道なき道を歩いて行く。しばらく歩くとギールは装備を軽装に変えて歩き出していった。

 だけど僕はそのまま行かせるわけにいかない。

「遅かったね」
「な!お前は....」

 すでにギールには[コンパス]の魔法でマーク付けしてるので僕はギールがどこにいるのかわかっちゃうんだよね。

「ギールが食べ物とかを買っている所にデシウスが見つけちゃったから買えなかったでしょ?。それに先立つ物もないんでしょ。貸すよ。だから帰ってきて罪を償いな」
「....小さい癖によく喋る。だが正直助かる。子憎たらしいだけの子供かと思ったが何とも」

 ちょっと口の悪いギールは悪びれもなく僕の悪口を言ってくる。だけど僕の出した革袋と少しの燻製肉を手に取ると嬉しそうに涎を見せる。

 相当お腹が空いてたみたい。この世界のエルフは残念さんが多いね。折角美形なのに。

「エルフってみんな残念さんなの?折角の美男子何だからもうちょっと」

 僕がそんなことを言っているとギールが首を傾げて口を開いた。

「何を言っているんだ?俺は女だぞ」
「ええ!?」

 僕はギールの言葉に驚愕した。僕は女の子を肥溜めに落としちゃったのか....反省しよう。でもデシウスもそうだけど美形すぎて正直どっちかわからないんだよね。

「ははは、そういえばデバイアも驚いていたな。しかしそんなにへこんでくれると一矢報いたような気になれて爽快だな」

 ギールは豪快に高笑いしている。何だか僕は負けた気分になったけど思ったよりもいい人みたいだね。

「所で俺はアドスバーンにいくつもりなんだが、こっちで合ってるか?」
「え?ああ、大丈夫だよ。この道沿いに行けば行けるはずだよ」

「そうか。いやなに、俺はこう見えて方向音痴でな。助かる」
「ブフ!、方向音痴ってエルフが...プッ!クスクス」

「笑うな。全く最後までむかつく子供だ。だが食べ物の礼をしないとな。金に換えられなかったアイテムだ、とっておいてくれ」

 ギールは僕へと革袋を放り投げた。僕はその革袋をキャッチすると首を傾げる。

「これは?」
「入る量の少ないアイテムバックだ。そのバックの5倍ほどしか入らない。中途半端なレアアイテムだから売れなかったんだ。この食べ物と金の礼だ。とっておいてくれ」

 どうやら袋に入る量が中途半端で冒険者には高くて貴族にとっては入る数が少なくとても半端な値段になってしまったみたい。このバックの5倍って事は2メートルほどの物かな。天雷の剣とあと数個しか入らなさそう。天雷の剣って切っ先が錨のように広がってるからかさばるんだよね~。

 それでどちらにも売れないから使ってたらしい。もっと入るアイテムバックを持っているから要らないんだってさ。何だか凄い事言ってるね。

「何だ....デシウスを守ってもらったようだしな。その礼でもあるんだ。受け取ってくれ」
「結構高価な物だけどそう言う事なら受け取らせてもらうね。でも必ずやる事をやったらうちに来てよね。今度は剣で迎える事はさせないからさ、お帰りと言わせてね」

 ギールは僕の言葉を聞いてすぐに頷いた。僕へと背を向けると腕で目を擦るような仕草をしていた。

 ギールは嬉しかったのだ。裏切り者と言われてきたギールは仲間を持てなかった。彼女はジーニの言葉が胸に刺さり涙を流した。

 ギールはアドスバーンへと歩いて行く。だが彼女の目的の人物はそこにはいないのだが。
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...