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第八章 倍倍

第十八話 傲慢

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 時は少し遡る。

 アステラ様から助言をもらって返事をするとアステラ様からの返信が途絶えた。ダインズが向かったはずだから戦っているのかもしれない。

「急がなくちゃ!シリカさん」
「はい!ジーニ様」

 まだ正気に戻らないシリカさんの指から指輪を取ろうとするとシリカさんはいやいやと首を振った。

「ジーニ様ダメですよ。帰ってくるまでこれは上げられません」
「シリカさんそんな事言わないで、ダインズを追うにはこれしかないんだよ」
「聞き分けのない子はこうですよ!」
「アブ!」

 何だかこのやり取りも懐かしいような気がする。僕はシリカさんのお胸で気絶しそうになる。だけどこんな事している場合じゃないんだ!。

「シリカさん!」

 僕は後方に飛んで真剣な顔で名前を呼んだ。鼻血が出てるのは無視する。

「どうしたんですか?」
「ん、ジーニ様鼻血」

 アウーン、ララさん今は、無視してください。僕は一瞬ズッコケそうになり真剣な顔を作り話をつづけた。

「僕は絶対にこの世界を守らないといけないんです。だから」
「...ここで暮らせばいいじゃないですか..」
「え?」

 シリカさんは俯いて囁いた。まさかシリカさん..

「ここならジーニ様を邪魔する人も私達の邪魔をする人もいないんですよ。ここなら歳も取らないと聞きましたし...」
「シリカさん..」

 シリカさんは正気を保っていた。どの段階で治ったのかわからないけどやっぱりシリカさんは凄いや..

「シリカさん、僕もこんな平和な世界で暮らせたらいいなって思うよ」
「なら!」
「でもダメだよ」

 シリカさんは涙で腫らせた目を僕に向ける。シリカさんの顔を両手で抑えた僕はおでこをつけて囁く。

「ここじゃシリカさんの色んな姿が見えないよ。僕もシリカさんに成長を見せられないしね」
「ジーニ様..」
「ララさんも僕の成長を見たいでしょ?」
「ん、ジーニ様の16歳位が見たい」

 ララさんもいつの間にか正気を取り戻して話した。僕はとっても凄い人達の中で成長していくんだ。

「だから僕の世界はこの狭間の世界じゃない。お父様やお母さまのいる世界なんだ。僕は傲慢だから全部手放さない!シリカさんもララさんも全部ぜーんぶ救いたいんだ!」
「ジーニ様....」

 僕はそういってシリカさんの右手人差し指に指輪をとって自分の左手薬指にはめた。指輪は本来の輝きを放ち僕とシリカさんを包んだ。

「ん、待って!」

 ララさんが僕とシリカさんに抱きつくとダインズと同じように空へと昇っていく。


 
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