ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 成長

第5話 出会い

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「町に入るには並ばないといけないんだね。並ぼ」

 【王都ジャーメイノ】の前までやってくると長い長い列ができてる。これに並んではいらないといけないみたい。
 なんだか東京を思い出すな~。人気のお店に入るのに1時間まった記憶がよみがえる。

「それにしても大きくて長い城壁……」

 高さ10メートル以上、長さ一キロ? ここからの目線じゃ終着が見えない。
 驚きなのがそれは半径ってこと。両端が見えないんだから、そういうことだよね。
 流石は王都、この国の中心ね。

「次、ん? 子供だけか? 両親はどうした?」

 私の番になって兵士さんが聞いてくる。5歳の私が一人でいるものだから心配してくれてるみたい。とても優しい表情で聞いてくる。

「両親は死んでしまいました。一人で来たの」

「な!? ……そうか、世知辛い世の中でごめんな」

 私の答えに驚いて泣き出しそうな表情で謝ってくれる。このおじさんはイブリムおじさんと違う。私を守ってくれそう。

「俺にも君と同じくらいの娘がいてね。おっと早く町に入らないとお金がないか。えっと、町に入るのにお金がいるんだが、もっているか?」

「あ、お金いるんだ……。金貨でいいですか?」

「き、金貨!?」

 おじさんに答えて金貨を見せる。するとおじさんは目の色を変えて金貨を見入る。
 しかし、町に入るためだけでお金が必要なんて、遊園地じゃないんだから。

「金貨は大きすぎるな~」

 おじさんは顔色を変えて仲間の兵士へと目配せする。
 おじさんは何か良くないことを考えているように思える。私は少しがっかりした。この人もイブリムおじさんと一緒、利益になると思ったら利用してくる。

「こっちに来てくれるかい?」

「……はい」

 おじさんは兵士詰所に案内してくれる。
 とても優しい口調だけど、怪しい。まあ、今のステータスなら何をされても大丈夫。不老不死だから死んでも大丈夫だしね。
 騙されてから殺す。これでいいや。

「お嬢ちゃん、貴族様の入り口はもう少し先の門だよ。普通の入り口でそんな大きなお金を見せちゃダメだ。犯罪者が狙ってくるぞ」

「あ、はい……。すみません」

 少し警戒しながら案内されて椅子に腰かける。すると兵士のおじさんが向かいの椅子に座って注意してくれる。私の早とちりだったみたい。

「俺はガストンと申します。何か王都で困ったことがあったら知らせてください」

「あ、はい。私はファムと申します」

 ガストンさんは私を貴族様だと思ってるみたい。こんな服をもらったから勘違いしてるんだろうな。

「貴族様からはお金は取らないのでこのまま入って大丈夫ですよ。では、また何かあったら」

「はい。ありがとうございます」

「はは、お礼なんていりませんよ。当たり前のことをしたまでです」

 ガストンさんはそう言って深くお辞儀をしてくる。真似してお辞儀をするとニッコリと微笑んでくれた。
 彼の同僚もニッコリと見送ってくれる。とても礼儀正しい兵士さん達。この町の治安がいいのが見受けられる。
 メリナ様もこの町で育ったならいい子なんだろうな。そんなに話していないからまだわからないけど、第一印象はいい感じだった。
 レナリスさんはとても厳しそうって感じ。お姉さまって感じね。
 
 王都ジャーメイノ。白と黒の石材で作られた家々が並ぶ町。コントラストが綺麗。景観を損なわないように高さ制限とかもついていそう。
 ある程度同じ高さで作られてる?
 なんだかイタリアとかフランスに旅行に来たみたい。

「美味しい肉はいかが~、白いパンと一緒に食べると美味しいよ~」

「皮の鎧はいかがかな。町の中でも着ていると安全だよ~」

 道路の両端に出店が出てる。果物や焼き肉串、武器防具が並んでる。
 現代じゃあり得ない品揃え。刃物が売ってるのは怖いな~。

「どれもダモクレスより弱そ」

 思わず武器を見て呟く。すると店主が顔を引きつらせる。

「嬢ちゃん! うちの武器よりも強い武器を知ってるのかい? それなら武器はいらないだろ。冷やかしならどっか行きな!」

「きゃ!?」

 店主の丸坊主のおじさんに持ち上げられて放り投げられる。冷やかしだけど、そんなことしなくてもいいでしょ。
 もう、いい町だと思った矢先にこれだもんな~。この世界は子供に厳しい。

 グ~、放り投げられてお尻をさすっているとお腹が鳴った。
 不老不死だから食べなくても生きられるんだけど、美味しいものは食べたい。何か食べようかしら。でも、大きなお金しかないのよね。

「おい! お前!」

「え? 誰?」

 お腹をさすっていると鼻に傷のある少年が声をかけてくる。いたずらっ子のような風貌の黒髪の少年。私よりは年上かな? 9歳くらいかな?

「お腹すいてんだろ? ちょっと待ってろ」

「え? なにするつもり?」

「へへ、待ってろよ」

 少年は自慢げに鼻をこすって見せてお肉の串焼きのお店の横に静かに並んだ。

「肉串を三本くれ」

「毎度!」

「いまだ!」

 少年は商品が売れたタイミングで焼いてあった肉串を盗み出す。2本盗んだ少年は1本を私に手渡してくる。

「ほら! 取ってきてやった」

「……ありがと。でも、これは窃盗よ。犯罪だわ」

 自慢げの少年を注意する。すると彼は串を口に咥えて両手を頭の後ろで組む。

「へへん。盗まれる奴が悪いのさ。それに俺は金を持ってない。持ってたら買ってたよ」

「そう……」

「お、おい。どこに行くんだよ」

 私は肉串をお店のひとに返しに行く。おじさんは肉串を探してる様子で私の手元を見て睨みつけてくる。

「お前! 盗んだのか! 返せ!」

「そのつもりです。これで許してください」

「へ!? 金貨!?」

 肉串を返して金貨を手渡す。屋台のおじさんは驚いた様子で金貨を受け取る。少年はその様子を見てポカンとしてる。
 治安がいいと思ったけど、ああいった子供はいるんだ。私のような孤児は沢山いるんだ。少し寂しくなっちゃった。両親を亡くした人がそれだけいるってことだもんね。

「お、おい。お前……。なんで金貨なんて持って」

「あれだけしかなかったわ。これから働くからね」

「働くって冒険者ギルドか? やめとけよ。子供は取り持っちゃくれないぜ」

 少年は両手を頭の後ろで組んだまま隣を歩いてくる。
 冒険者ギルドは子供でも登録できるはず、それなのに取り持ってくれない? 何かあるのかな?
 でも、村に来た冒険者は大丈夫だって言ってた。他のギルドでは子供はダメなはず。簡単な仕事は全て冒険者ギルドに卸されるから。

「働くか。な、なあ。俺も一緒に行っちゃダメか?」

「ご自由に。でも、盗みはしちゃダメよ」

「わかってるよ。冒険者に手を出す奴はいねえよ。誰でも命は大事だからな」

 少年はそう言って肉串を食い終わる。串をその場で捨てようとするから私が受け取ってインベントリにしまった。情操教育は必要ね。インベントリだと分からないようにしまったから彼にはバレていないはず。

「私はファム。あなたの名前は?」

「ああ! 俺の名前はラッド。ネズミの魔物がラットでその親玉っていう意味だ。凄いだろ!」

「……それは凄いわね」

「ふふ~ん」

 ラッドは自慢げに名乗ってきた。なんだか可哀そうになってきちゃった。でも、なんだか母性をくすぐるタイプの子供ね。
 名前を自分で決めたってことは両親は生まれてすぐにいなくなっちゃったみたいね。
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