ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 成長

第36話 ダンジョンの主

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「むふふ、まさかマスターを得られるなんて。これで私が一番になれる日も近い」

 イーターの祠のダンジョンに触れるとインベントリの中に祠が入っていく。彼女は下品に笑ってる。

 祠のダンジョンは別次元につながる扉のような役目をしてるみたい。ダンジョン自体はその別次元に存在してる。実質インベントリには祠だけが入っている状態になってる。
 
「私に指示をしてくれば魔物を作ったり鉱物を作ったりできるよ。いつでも言ってねマスター」

「とりあえずゴーレムは回収して」

「え? できないよ。ダンジョンの入り口を回収しちゃったから繋がりが切れちゃってる」

「へ? そういうことは早く行ってよ!」

 イーターが今更そんなことを言ってくる。回収する前に言ってくれればゴーレムを回収したのに。

「因みに何体くらいいるの?」

「えっと10体が限界だった。人間は一人いれれば100ポイント入るからゴーレム10体でも安い買い物なんだよね~」

「100ポイント?」

「うん! 【ダンジョンポイント】だよ。これからマスターも使うようになるから説明するね」

 イーターが嬉しそうにそう言うと説明を始める。

「ダンジョンにはマナをポイントにする仕組みがあるの。人の死骸は一律100ポイント。小動物は10ポイント。熊とか大きな動物は人と同じ100ポイントになってる。ポイントを使って鉱物を作ったり、魔物を作ったりできる。因みにゴーレムは5ポイントで作れる」

「え!? 5ポイント?」

 騎士団を圧倒する量のゴーレムを簡単に量産できるってことじゃない。恐ろしい……。
 それも人の死骸が一番ポイントが高い。明らかに人を殺めることを勧めてる。神様って言ってるけど、この世界の神は悪神なのかな?

「簡単に人を連れてこれると思ったんだけどね~。なんだか大きな町の隣に作っちゃったみたいで騎士とかが邪魔してきちゃった。ゴブリンやトロールなんかも作ったんだけど、簡単にやられちゃったみたいなんだよね~」

「やっぱりあなたが原因だったんだね……」

 今までの魔物が多い問題はイーターのせいだったみたい。彼女は私が呆れているのを見ると首を傾げてる。

「はぁ~、とりあえず、ゴーレムを片付けないと。レナリスさんの迷惑になる」

 フードを再度目深くかぶってゴーレムを討伐する。まずは探さないと。

「結構バラバラに向かわせたよ」

 イーターが私の肩に乗って話す。木々を渡り走ってゴーレムを見つける。問答無用に切り捨てて魔石を回収。あと9体。

「2! 3! 4! 5! っと」

 集団で歩いていたゴーレムを見つけて切り捨てる。魔石を回収していると足元にまとわりつく感触を感じる。これは探知の奴だ。
 そう思っていると木が飛んでくる。躱す暇もない。剣で払い、飛んできた方向へ跳躍する。

「あ! アイアンゴーレム! 気を付けてマスター! 強いよ!」

「あなた! ただのゴーレムだけじゃなかったの!?」

 跳躍して姿が見えるとイーターが名前を呼んだ。月光で黒く輝く体を持つゴーレムが拳を構えて振りぬいてくる。
 宙に浮いている私は避けられずにダモクレスの刃で受ける。それでも衝撃は消せずに私は強く吹き飛ばされた。

「いたたた。相打ちってところかな?」

 衝撃で痛くもないのに口から言葉が出る。癖みたいなものね。
 アイアンゴーレムの拳にダモクレスの刃が傷をつける。ひび割れて中が見える。
 悠長に観察しているとアイアンゴーレムじゃない方向から木々が投げ込まれる。残りのストーンゴーレムかな……。

「先に雑魚を狩る」

 木々を切り捨てて森に逃げ込む。木の飛んできた方角へと木々を避けて進む。

「壱!」

 ゴーレムを黙視するとすぐに切り捨てる。今は速度が大事、魔石はあとにしよう。

「二! 参!」

 更に2体のゴーレムを倒してすぐに移動を開始する。
 探知の感触が足に触れる。移動も考慮した方角に木がなげこまれてくる。それを躱し、ストーンゴーレムが見えてきた。振り切ってくる拳を駆け上がり、ゴーレムの頭から唐竹割に切り捨てる。

「あとはあなただけ……」

 ドスドスと重い巨体で走ってくるアイアンゴーレムに言い放つ。仲間がやられて怒っているのかな。残念だけど、みんなの命を狙う子は生かしちゃおけないの。

「誰だお前は!」

「え? きゃ!?」

 ダモクレスを構えてアイアンゴーレムの攻撃を待った。すると声がかけられて振り返るとそこにはレナリスさんがいた。月明かりでも綺麗な金色の髪。
 その一瞬の隙で私はアイアンゴーレムの拳を横腹に受ける。吹き飛ばされる私を目で追うレナリスさん。彼女は一人でゴーレム討伐に戻ってきたんだ。魔法が使えないから圧倒的に不利なはずなのに、みんなを守るために一人で。
 私は宙を舞い、月明かりを受け止める。木の上の更に上に吹き飛ばされてる。凄い威力。こんなものを普通の人が受け止めたら死んでしまう。

「アイアンゴーレムだと!? 自然に生まれるはずがない! ダンジョンが生まれたんだな!」

 レナリスさんの声が聞こえる。剣を構える彼女が下に見える。お願いだから逃げてほしい。こんな攻撃を受けたら彼女でも死んでしまう。

「【剣気解放】」

「え?」

 着地を今か今かと焦りながら見下ろしていると、レナリスさんが青白く輝きだす。【剣気解放】ってなに?

「はぁぁぁぁぁ! 【バースト】」

 レナリスさんがけたたましい声を上げて剣を振り上げる。青白い輝きが剣に集まり、大きな光の剣へと形を変えていく。そして、声と共にアイアンゴーレムへと振り下ろされていく。光の剣はその大きさをアイアンゴーレムと地面に刻む。アイアンゴーレムは抵抗する暇もなく魔石を残して絶命する。

 魔法がなくても騎士になれる。彼女の言葉は本当なんだろう……。それはもう魔法だよ。

「ふぅ……。静かになった……。吹き飛ばされたものは何者だったんだ? 女のような声を上げていた、それにあの剣。どこかで見たような」

 私は木陰に隠れて様子を見ることにした。彼女は私だとは気づいていない様子。剣も少し見せただけだから気づいていないかな? とにかく、ここら辺は安全になったみたい。とりあえず、私は宿屋に戻ることにする。
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