ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 成長

第43話 剣気

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「司祭ロンド様がいなくなった?」

 私は報告を聞いて驚きの声を上げる。
 私の名前はエーリア。シャイン教の司祭をしている。
 教会の司祭で光魔法の使い手のロンドが行方不明になった。これは闇の勢力の仕業? それとも、私怨? 調べる必要があるわね。

「至急情報を。ラッセルさんからも情報を得るように」

「はい」

 信者の男に指示を飛ばす。彼はすぐに動いてくれる。敬虔な信者。シャイン教はジャーメイノでも高い支持を得ている。
 病気になったらすぐに住民は私達にすがり、寄付で魔法を施す。私も光魔法の使い手、ロンド様がいなくなった今。私だけが光魔法を行使できる。

「光魔法……そういえば、ロンド様は光魔法のウォッシュで商売をしている少年を教会に招いたと聞いたわ。その子はどうなったのかしら?」

 私は3階の自室を出て歩きながら考えを口にする。ロンド様は地下の自室にこもる傾向があった。私はすぐに地下へと歩みを進める。

「なにもない……。綺麗すぎる……。これは魔法で綺麗にした?」

 ロンド様の部屋に入る。鍵もされていない部屋。奴隷の首輪が落ちてる。二つに綺麗に切れている。

「何かがあったことは確かね」

 私は祈りを捧げてそう断言する。埃一つ立っていない部屋。ロンド様でも毎日ウォッシュで部屋を綺麗にすることはない。魔法の行使はMPを消費する。つまりは疲れる。歳を重ねるごとにその疲労は強くなる。億劫になって毎日は魔法を使わない。

「考えすぎなのかもしれないけど。彼が消えたのは確かだし……警戒はしておいた方がいいわね」

 そういってロンド様の部屋を出る。彼には少しきな臭い噂もあった。
 寄付の横領、金品の取得など多岐にわたる。お金のない人には体を求めたりと目に余る行為の数々。いなくなってくれれば私は喜ばしい。
 だけれど、罪は罪。彼を監禁、もしくは殺めてしまったのなら償わなくてはならない。わがシャイン教に刃を向けた罪を、償わなくてはならない。
 それにしてもおかしいわね。【光の精霊シャイン】様が侵入者が入ったと警告してきてもおかしくない。一般に配られている紋章では夜の時間は警告があるはず。なかったということは教会の内部の犯行? まあいいわ。調べていきましょう。



「はぁはぁ」

「光の精霊シャインよ。我がマナに答えて力を授けよ。そして、我が敵を穿て】【シャインアロー】」

「……はぁ~」

 ダンジョンに入ってラッドとレイブンが一緒にゴブリンと戦っていた。ユマ君が合流して三人でオークと戦う。彼の光の矢がオークの頭を貫き絶命させると、ラッドがため息をつく。

「魔法って反則だよな~。そうおもわねえかレイブン?」

「ん、反則。私も使いたい」

「そうだよな~」

 ラッドの声にレイブンが指を咥えてユマ君を見つめる。二人の視線でいたたまれない彼は頬を赤く染めて私を見つめてきた。
 私にどうしろと?

「なあなあ? 俺達も魔法使えないかな?」

「ん~、こればっかりは才能なんじゃないかな? 試しに使ってみればいいんだよ」

「ん~……」

 ラッドが質問してくる。魔法は生まれで決まる。才能がなければ一切使えない。
 彼は考え込んだ末、私の提案を受け入れて魔法を唱えてみる。

「ん~【光の精霊シャインよ。我がマナに答えて力を授けよ。そして、我が敵を穿て】【シャインアロー】。何もおこらね」

「ん、私も……」


 ラッドと一緒に魔法を使ってみるレイブン。二人とも何も起きずに肩を落とす。ステータスを爆上げして無理やりするくらいしか無理なんじゃないかな? 私がたぶんそれだから。
 イブリムおじさんに無理やり働かされていた時も魔法は使えなかった。使えないかなと試したこともあった。だけど、無理だったんだ。今は使えてる。これは完全にステータスが影響してると思う。

「は~、敵に近づかなくても倒せればもっと楽になるんだけどな~」

 ラッドはそう言って大剣を構える。そういえば、レナリスさんが【剣気解放】とか言っていたよね。それを教えてみようかな。

「レナリスさんは【剣気解放】っていって、剣で遠くから敵を倒してたよ」

「【剣気解放】? それで騎士団の隊長になったのか~」

 私の声にラッドは納得したようにうなずく。魔法が使えなくてもそういったスキルみたいなものを得られれば強くなれる。
 
「体全体に力を入れる感じで、魔力を纏うような感じ」

「感じ感じって言われてもな~。難しいな」

 見た目を伝えるとラッドは剣を構えて意識していく。力を入れてみたりしてるから汗が凄いことになってる。頑張ってる息子を応援するような気分ね。

「ハァハァ……。なんだかいつもよりも疲れるな」

 息を切らせるラッド。彼は剣を手放してその場に倒れこむ。もしかしたら魔力を外に出すことができたのかな? MPの消費で疲れたのかも?

「ん、凄い疲れる……」

 レイブンも真似してる。その場に座り込んで息を切らせてる。そんなに疲れるのか~。私もやってみよ。

「ん」

『わっ!?』

 ちょっと全身に力を入れて魔力を外に出してみる。といってもコツとかはない。感覚でやった。
 すると、ラッド達を吹き飛ばしてしまう。10メートルくらい飛んだかな?

「ほんと、何でもできるなお前……」

「はは、ファム姉さんは凄い。尊敬する」

 ラッドとユマ君がほめてくれる。無言で涙を流しながらレイブンは拍手をしてくれる。彼女の中でどんどん私が神格化されてるように感じるな~。言葉もかけられないといった感じ。
 でも、これで手を縛られても攻撃できそう。って私の手を縛れる物なんてないか。
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