異世界転生したら【スキル】が【グミ】でした 【魔王】の友達もできたので世界を平和にしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
12 / 50
第一章 新たな地で

第12話 シャドウ

しおりを挟む
「そんなことを言ってる場合じゃないんですよ、シャドウさん」

 僕は思わず声をあげる。シャドウさんは何を言っているのか分かっていない様子だ。

「何を怒っているんだシン?」

「ブラックゴブリンが外に出て人を襲ったんですよ」

「ん? 魔物なのだから人を襲うのは当たり前だろう? 魔族領でブラックゴブリンなど、大人が一人いれば倒せるのだから大丈夫だっただろ?」

 え? 魔族領? シャドウさんは何を言ってるんだ?

「シャドウさん。洞窟の外はシーレイクラインの近くです」

「ん? シーレイクラインと言うとオルデーナ王国の領地か? ということは人族の領地? ふむ、おかしいな」

 僕の説明を聞いてシャドウさんは顎に手を当てて考え込む。魔族領にいると思っていたってことはブラックゴブリンを放ったのは故意じゃなかったってことか。

「私は確かに魔族領の洞窟に入った。シーレイクラインは海の向こうのはずだ。しかし、シンが嘘をついているような様子はない。ということは本当のことを言っている。私はその距離を瞬間移動してしまったのか……」

 ブツブツと呟きながら再度考え込むシャドウさん。彼は本当に魔族領の洞窟に入ったみたいだな。

「……ではシン。私と奥の通路から出口に行くか」

「え?」

「魔族領と繋がっていたら歴史的大発見になるぞ」

 シャドウさんは考えるのをやめて奥の扉に入って行く。仕方なく僕もついていくことにした。

「湿気が凄いですね」

「ああ、この湿気が魔素を作り出してゴブリンを進化させる薬を作り出せたのだよ。まあ、それは言うことを聞かなくなるから失敗作だがな」

 奥の通路は僕が通ってきた通路とは違ってじめじめしていた。シャドウさんは嬉しそうに解説してくれる。

「じめじめしてるってことはこの外は海?」

「うむ、そうかもしれないがそんなに長い通路ではないのだよ。私の入った洞窟は魔国マルグリアの港町、シーグリアだ。シーレイクラインには二日は船に揺られないとつかない。どう考えても瞬間移動しているとしか思えん」

 水が天井から滴るほどの湿気、思わず疑問を呟くとシャドウさんが推測を話す。瞬間移動かそんなことありえるのかな。

「謎ではあったのだよ。ただの湿気で魔物を進化させる薬が作れるのは。しかし、研究に没頭するあまり、深く考えていなかった。まさか、海の魔素が含まれていたとは、それも深海の」

「深海の海は魔素が強いってことですか?」

「うむ、海は命のゆりかごであり、棺桶でもある。命が集まるところには魔素が集まるものだよ」

 そうか、生まれるところであり、死ぬところでもあるわけか。魔物はもちろんだけど、僕ら人間にも魔素は含まれてる、MPが魔素と同義だから。
 動植物にも含まれているから海は魔素の塊と言っても過言じゃない。深海は更に濃い魔素が溜まっているからこの外が海なら深海と言ってもいい深度だ。かなり濃い魔素が染み出てるってことだな。

「ここで湿気の多い通路は終わる。私の歩幅で100歩と言ったところだ。どうだ? 海を越えられると思うか?」

「あり得ないですね」

「そうだろう。もう少し付き合ってくれ。更に進めばすぐに出口だ」

 シャドウの疑問に答えると更に奥に進んでいく。彼の言った通り、少しすると外の光が見えてくる。

「魔族領に生える花だ。名前は紅蓮花(グレンカ)。オルデーナにはない花のはずだ」

 外に出ると早速見たことのない花をシャドウさんが見せてくる。花もそうだけど、木が明らかに違う。
 シーレイクラインの森は緑色の葉っぱだった。だけど、この森の木はピンクや赤、明らかに世界が違うといった光景だ。

「あの町がシーグリアだ。中々大きな町であろう?」

 自慢げに話すシャドウさん。洞窟の外は少し高い山の中腹。町を見下ろすことが出来て、大きな港町が見える。
 シーレイクラインと同じくらいの港町だ。見た感じ、魔族領なのか人族の領なのかはわからないな。

「では反対も行ってみよう。シンが嘘を言っていないことを祈るぞ」

 そう言ってシャドウさんは洞窟に入って行く。僕もついていく。
 入ってきた時と違ってゴブリンもいないからすぐにシーレイクラインの町の近くに出る。
 シャドウさんは驚いた様子で木々や花々を見回す。

「これは驚いたぞ。確かにここは人族の領地だ。植物が魔素の少ないものばかりだな。だが、これはどういうことだ? 海を渡るほど歩いているとは思えないんだがな」

 シャドウさんは驚いてから考え込んだ。僕も信じられないと思っているけど、現実に魔国の景色を見ているからな~。

「魔素がゲートのような役割をしているのか? ふむ、確かに移動する魔法も存在するがゲートのように媒体となる柱が存在しないのに動作しているというのか?」

 シャドウさんがブツブツと考察していく。
 ゲートは王族が管理しているワープ装置。魔石で作られた柱で魔素を使って同じ装置のある所にワープすることが出来るらしい。話には聞いていたけど、自然にそんなものが出来るなんて思えないけど。

「通路全体が魔石の役割をする程に濃い魔素になっているということか。海が魔素そのものになっているから常時ワープ状態になっている? いや、そんな感覚はしていないな。もしかしたら時間が止まっているのかもしれん」

 推測を呟くシャドウさん。どういう原理か気にはなるけど、まずはブラックゴブリンのことを謝罪してほしいんだけどな。

「まあいい。そんなことよりも魔物の進化を追求しよう。魔物を自由に操れるようになれば、人類は更に平和に暮らせるようになる。シン! 早速君の魔物を作るぞ!」

「え? いや。僕は別に作りたくないんですが?」

「何を言っている! 強い魔物を作って言うことを聞かせることが出来たらそれだけでその地域が平和になるのだぞ!」

 シャドウさんは熱を込めて話してくる。

「……魔族と人族は仲が悪いですよね? 魔族はその技術を使って人族を襲うんじゃないですか? 平和じゃなくて戦争になると思うけど」

「それは使うものによるだろ。私は人を選んで教えるから大丈夫だ!」

 ん~、そう言っても技術は必ず外に出ちゃうからな~。

「シャドウさん。既に一人の人族があなたの技術で死んでいるんです」

「なに!? シンが最初に言って来たことか、そういえば人族は弱い。ブラックゴブリンにも勝てない個体が多いんだったな。魔族は私のように弱いものは少ないから失念していた」

 頭を抱えるシャドウさん。自分の犯した罪を嘆いてるみたい。

「……まあ仕方ないか。新たな技術に犠牲は付き物だからな。その失敗を糧に更なる失敗をしないように突き進んでいく。それが成功への近道と言うものだ。よし! シン! 行くぞ!」

「ええ、ちょっとシャドウさん!」

 シャドウさんが少し俯いたと思ったらすぐに顔をあげて僕の腕を掴んで洞窟へ走り出す。何を言っても彼は止まらない様子。
 シャドウさんはどうしようもない人だけど、平和の為に研究しているというのは分かった。魔物を使役できるなら僕にとっても良いことだよな。
 僕の魔物は何になるのか興味あるし、結局好奇心には勝てないな~。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...