異世界転生したら【スキル】が【グミ】でした 【魔王】の友達もできたので世界を平和にしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 新たな地で

第12話 シャドウ

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「そんなことを言ってる場合じゃないんですよ、シャドウさん」

 僕は思わず声をあげる。シャドウさんは何を言っているのか分かっていない様子だ。

「何を怒っているんだシン?」

「ブラックゴブリンが外に出て人を襲ったんですよ」

「ん? 魔物なのだから人を襲うのは当たり前だろう? 魔族領でブラックゴブリンなど、大人が一人いれば倒せるのだから大丈夫だっただろ?」

 え? 魔族領? シャドウさんは何を言ってるんだ?

「シャドウさん。洞窟の外はシーレイクラインの近くです」

「ん? シーレイクラインと言うとオルデーナ王国の領地か? ということは人族の領地? ふむ、おかしいな」

 僕の説明を聞いてシャドウさんは顎に手を当てて考え込む。魔族領にいると思っていたってことはブラックゴブリンを放ったのは故意じゃなかったってことか。

「私は確かに魔族領の洞窟に入った。シーレイクラインは海の向こうのはずだ。しかし、シンが嘘をついているような様子はない。ということは本当のことを言っている。私はその距離を瞬間移動してしまったのか……」

 ブツブツと呟きながら再度考え込むシャドウさん。彼は本当に魔族領の洞窟に入ったみたいだな。

「……ではシン。私と奥の通路から出口に行くか」

「え?」

「魔族領と繋がっていたら歴史的大発見になるぞ」

 シャドウさんは考えるのをやめて奥の扉に入って行く。仕方なく僕もついていくことにした。

「湿気が凄いですね」

「ああ、この湿気が魔素を作り出してゴブリンを進化させる薬を作り出せたのだよ。まあ、それは言うことを聞かなくなるから失敗作だがな」

 奥の通路は僕が通ってきた通路とは違ってじめじめしていた。シャドウさんは嬉しそうに解説してくれる。

「じめじめしてるってことはこの外は海?」

「うむ、そうかもしれないがそんなに長い通路ではないのだよ。私の入った洞窟は魔国マルグリアの港町、シーグリアだ。シーレイクラインには二日は船に揺られないとつかない。どう考えても瞬間移動しているとしか思えん」

 水が天井から滴るほどの湿気、思わず疑問を呟くとシャドウさんが推測を話す。瞬間移動かそんなことありえるのかな。

「謎ではあったのだよ。ただの湿気で魔物を進化させる薬が作れるのは。しかし、研究に没頭するあまり、深く考えていなかった。まさか、海の魔素が含まれていたとは、それも深海の」

「深海の海は魔素が強いってことですか?」

「うむ、海は命のゆりかごであり、棺桶でもある。命が集まるところには魔素が集まるものだよ」

 そうか、生まれるところであり、死ぬところでもあるわけか。魔物はもちろんだけど、僕ら人間にも魔素は含まれてる、MPが魔素と同義だから。
 動植物にも含まれているから海は魔素の塊と言っても過言じゃない。深海は更に濃い魔素が溜まっているからこの外が海なら深海と言ってもいい深度だ。かなり濃い魔素が染み出てるってことだな。

「ここで湿気の多い通路は終わる。私の歩幅で100歩と言ったところだ。どうだ? 海を越えられると思うか?」

「あり得ないですね」

「そうだろう。もう少し付き合ってくれ。更に進めばすぐに出口だ」

 シャドウの疑問に答えると更に奥に進んでいく。彼の言った通り、少しすると外の光が見えてくる。

「魔族領に生える花だ。名前は紅蓮花(グレンカ)。オルデーナにはない花のはずだ」

 外に出ると早速見たことのない花をシャドウさんが見せてくる。花もそうだけど、木が明らかに違う。
 シーレイクラインの森は緑色の葉っぱだった。だけど、この森の木はピンクや赤、明らかに世界が違うといった光景だ。

「あの町がシーグリアだ。中々大きな町であろう?」

 自慢げに話すシャドウさん。洞窟の外は少し高い山の中腹。町を見下ろすことが出来て、大きな港町が見える。
 シーレイクラインと同じくらいの港町だ。見た感じ、魔族領なのか人族の領なのかはわからないな。

「では反対も行ってみよう。シンが嘘を言っていないことを祈るぞ」

 そう言ってシャドウさんは洞窟に入って行く。僕もついていく。
 入ってきた時と違ってゴブリンもいないからすぐにシーレイクラインの町の近くに出る。
 シャドウさんは驚いた様子で木々や花々を見回す。

「これは驚いたぞ。確かにここは人族の領地だ。植物が魔素の少ないものばかりだな。だが、これはどういうことだ? 海を渡るほど歩いているとは思えないんだがな」

 シャドウさんは驚いてから考え込んだ。僕も信じられないと思っているけど、現実に魔国の景色を見ているからな~。

「魔素がゲートのような役割をしているのか? ふむ、確かに移動する魔法も存在するがゲートのように媒体となる柱が存在しないのに動作しているというのか?」

 シャドウさんがブツブツと考察していく。
 ゲートは王族が管理しているワープ装置。魔石で作られた柱で魔素を使って同じ装置のある所にワープすることが出来るらしい。話には聞いていたけど、自然にそんなものが出来るなんて思えないけど。

「通路全体が魔石の役割をする程に濃い魔素になっているということか。海が魔素そのものになっているから常時ワープ状態になっている? いや、そんな感覚はしていないな。もしかしたら時間が止まっているのかもしれん」

 推測を呟くシャドウさん。どういう原理か気にはなるけど、まずはブラックゴブリンのことを謝罪してほしいんだけどな。

「まあいい。そんなことよりも魔物の進化を追求しよう。魔物を自由に操れるようになれば、人類は更に平和に暮らせるようになる。シン! 早速君の魔物を作るぞ!」

「え? いや。僕は別に作りたくないんですが?」

「何を言っている! 強い魔物を作って言うことを聞かせることが出来たらそれだけでその地域が平和になるのだぞ!」

 シャドウさんは熱を込めて話してくる。

「……魔族と人族は仲が悪いですよね? 魔族はその技術を使って人族を襲うんじゃないですか? 平和じゃなくて戦争になると思うけど」

「それは使うものによるだろ。私は人を選んで教えるから大丈夫だ!」

 ん~、そう言っても技術は必ず外に出ちゃうからな~。

「シャドウさん。既に一人の人族があなたの技術で死んでいるんです」

「なに!? シンが最初に言って来たことか、そういえば人族は弱い。ブラックゴブリンにも勝てない個体が多いんだったな。魔族は私のように弱いものは少ないから失念していた」

 頭を抱えるシャドウさん。自分の犯した罪を嘆いてるみたい。

「……まあ仕方ないか。新たな技術に犠牲は付き物だからな。その失敗を糧に更なる失敗をしないように突き進んでいく。それが成功への近道と言うものだ。よし! シン! 行くぞ!」

「ええ、ちょっとシャドウさん!」

 シャドウさんが少し俯いたと思ったらすぐに顔をあげて僕の腕を掴んで洞窟へ走り出す。何を言っても彼は止まらない様子。
 シャドウさんはどうしようもない人だけど、平和の為に研究しているというのは分かった。魔物を使役できるなら僕にとっても良いことだよな。
 僕の魔物は何になるのか興味あるし、結局好奇心には勝てないな~。
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