【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
77 / 110
第2章 王国と魔道

第77話 洗脳

しおりを挟む


「お姉ちゃん。このまま逃げれない?」

「メイ。それは無理よ。この首輪がついている限り」

 少し時は遡り。
 ムラタ達へ放ったゴブリン達を生んでいたメイドの姉妹。彼女達はムラタの土地とは反対の山の麓にいた。
 【隷属の首輪】をつけている限り、彼女達は逃げることができない。【この場で待て】という命令を実行することしかできない。

「まだ向かいに来ない。ゼターは死んだんじゃない?」

「……戦っていた人たちは異常な人達だった。ゴブリン達を仲間にしてしまうんだもの。死んでしまった、そう思いたいのは分かるけど」

 妹、メイの言葉に俯いて答えるアイ。ゼターの死を願うけれど、それは叶わないとうつむいてしまっている。

「グルルルルル」

「「え!?」」

 不穏なことを話していると彼女達に迎えがやって来た。エドラが木陰から現れて唸り声を上げる。姉妹は怯えてその場に座り込んでしまう。

「ガウ!」

「ひぃ……。乗れっていうの?」

「ガウ!」

 エドラが吠えると二人は更に怯えて声をもらす。
 彼が背中を見せると意図を組んで背中にまたがる。
 二人を乗せても余りある膂力で走り出すエドラ。風よりも早く森をかけて、すぐに草原にたどり着く。
 まだムラタ達はマグマと対峙している。

「おかえりエドラ。メイとアイもご苦労」

「ガウ」

「「……はい」」

 しばらく走っていると、すぐにドレイクに追いつきねぎらいの声がかけられる。ドレイクに乗りながら話すゼターは満足げだ。
 
「罠が役に立った。エスメルはまだ帰ってきていなかったようだな。帰ってきていたら、お前達は山におきざりにしたんだがな」

 ゼターは笑みを浮かべて不穏なことを口にする。
 姉妹はそれを聞いて顔を青ざめさせた。

「マグマに覆われたら流石のエスメルも息絶えるだろう。学院長ですら言葉で欺いて逃げる程の英雄。私では勝てないだろうからな。しかし、リッテンの裏切りは予想外だった……」

 ゼターは笑みを浮かべながら怒りをあらわにした。

「リッテン。私よりもイカレタ思想を持っていた男だった。それなのに改心していた。あのムラタという男にそれ程の気骨があるというのか?」

 死の世界よりも守るべき男が出来た。そういうことなのだろうか、とゼターは考え込む。

「人を操る力。スキルの類だろう。稀に見る力だな。しかし、グールの体と幽体の体を持っていたはず。研究報告書で見たから確実だ。今のリッテンは人間の体だった。謎なスキルだな。興味深い」

 ゼターはそう言って天を仰ぐ。

「……ルーンは死んでいた。確かに白骨死体になったのを見た。それなのに元気な姿で、前よりも魔法の才能に目覚めていた。ルナは死んだのかはわからないが……。死んだ者を従えることが出来るスキル? それなら……あの緑の狼は本当にルドラ?」

 ゼターは頬を高揚させて話す。嬉しさがこみあげてドレイクの首をなで始める。

「ドレイク。お前のお兄ちゃんが生き返ったんだ。こんなにうれしいことあるかい?」

「ギャウ」

「そうだろうそうだろう。嬉しいよね。会ったことなくても私の気持ちが伝わる。魔物は人の代わりに世界を平和に出来るんだ。私の研究成果は間違っていない」

 ゼターの気持ちを汲むドレイクは嬉しそうに鳴いて答える。
 彼はムラタのスキルを理解し、ルドラを本物と認めていく。

「ルドラは生きている。あのムラタが生き返らせた。凄い奴だ……。私が成しえたかったことをいとも簡単に。そうか、私は学院長を目指さなくてもいいのか。ルドラを生き返らせること、それが学院長を目指す意味だったのだから……」

 ゼターは呟き続ける。そして、気づきを口にすると、ドレイクを地上に降ろす。
 草原に降りると彼は両手を天へ向けて広げる。

「私はなんで学院長を目指していたんだ。なぜ、人を殺してまで研究成果を上げていた? なぜだ? なぜ……」

 彼は今まで行った研究を思い呟く。そして、少しすると顔を青くさせていく。

「人を殺した。10人や20人では済まない程。なぜ……なんで私は」

 頭を抱え始めるゼター。
 エドラが近づいて彼の頬を舐めるが、それを気にすることもできない程、苦悩している。彼の背中には幾人もの霊が取り付いているようだった。

「フォッフォッフォ。これはいかんな。壊れてしまう」

「「ゼグラデム学院長!?」」

 ゼターが頭を抱える中、急に彼の目の前にゼグラデムが現れた。メイとアイが驚いて声を上げた。
 瞬間移動、テレポーテーション、そう言った魔法を使ってきたとしか言いようがない。
 それでもゼターは苦悩した頭を地面にたたきつけ始める。

「私は人の命を軽々しく使う。ルドラを殺した盗賊よりも醜い人間。私など死んでしまえばいいんだ!」

「フォッフォッフォ。こらこら。才能あるゼター教授。リッテン教授が敵の手に落ちてしまったのだから、無駄に命を散らすでない。困るではないか」

「あ、が……」

 ゼグラデムは頭から血を流すゼターを止めて気絶させる。ただ目を見つめあうだけで気絶させている。痙攣をおこして倒れるゼター。

「「あ、ああ……」」

 姉妹は恐ろしくその様子を見て声をもらす。
 あまりにも恐ろしい風景、悪魔がゼターの顎に手を当てて大きく口を開き、魂を食らっているような姿。そんな幻覚を見るほどの恐怖。姉妹は私達も食べられてしまう。そんな想像をして、顔を青ざめさせる。

「フォッフォッフォ。安心せい、お主たちはゼター教授の研究部品。殺しはせんよ。魔根の球の研究は貴族、王族の餌になるからな。期待しておるんじゃ」

 ゼグラデムは姉妹にそう告げると姿を消した。まるで幻だったかのようにいなくなったゼグラデム。
 本当に幻だったのか? と姉妹が思ってゼターに近づく。すると彼は寝て起きたかのように起き上がり。当たり前のようにドレイクにまたがる。

「何をしている。帰るぞ。魔道都市オルディナにな」

 ゼターもまた、苦悩していた姿が幻だったかのようにふるまいドレイクへとまたがった。ドレイクもエドラも困惑しながら従い魔道都市へと進んでいった。

「ゼターは本当はこんなことをするような人じゃない?」

「そ、そうだと思う」

 エドラの背に乗った姉妹は推測を口にする。ゼグラデム学院長が洗脳している。二人はそう気づいて、ドレイクの背に乗るゼターを見つめた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

処理中です...