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第一章 異世界
第二十六話 戦いの結末
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夕日が傾きトライホーンの影が薄っすらと消えていく、すると三眼熊が上空へとファイアボールを数発放った。火の玉が上空で留まると俺達とトライホーンを照らした。夜になってもこの状況は覆らないようだ。
「キャン!」
「チィ、かかって来いってか」
炎の柱を水柱で消したことでお湯になり、それをかぶっていたトライホーンから湯気が出ている。その姿が更に威圧的に感じた。
トライホーンは声を張り上げて早くかかってこいと催促してくる。
「ルキア、これを着てくれ」
「あい!」
熊との戦闘時に俺は隙をみて手で触った。それにより見事に三眼熊の着ぐるみをゲット。着ぐるみはその魔物の能力を使えるようになる。それは蜘蛛で確認済みだ。
ルキアに戦闘をさせたくはないがファイアボールを使えるという強みはとても大きい。
俺はルキアに三眼熊の着ぐるみを渡すとトライホーンへと駆けだした。
丸盾を構えながらロングソードを槍のようにしてトライホーンへと突進していく。素人の突き技など、簡単にトライホーンはあしらった。
「これでどうだ!」
俺がトライホーンの角に剣を流されると続いてオッズが十字切りで切り付ける。しかし、それも読んでいたトライホーンは後方にジャンプをして避けた。
「いま!」
「私も!」
ルキアのファイアボールとアイサのファイアが混ざり合い、青白い炎の球がトライホーンへと駆け巡った。青白い炎の球は通常のファイアボールよりも速度が増していて丁度着地したトライホーンに着弾した。流石のこの事態に熊も上から降りてくる、とても心配そうな顔だ。
「ガウ・・」
「・・・」
トライホーンを包む青い煙と俺達の間でトライホーンを守ろうとして割って入ってきた熊の姿に俺は何だか、いたたまれない気持ちになる。
殺す気のなかった魔物を殺そうとすることがこんなにも心を傷つけるのかと。
「キャン・・・」
「ガウガウ!」
青白い炎がトライホーンを包んでいたのだが、それが消えていくとトライホーンが声を上げた。薄っすらとトライホーンの姿が見えてくる。トライホーンは片足を引きずっていた。
「グルルルル」
その姿を見た熊が俺に向かって牙を見せる。
「もう終わりだな」
熊は俺を見ていたわけではなく、俺の後ろにいたオッズを見ていたようだ。オッズはこの世界に生きている冒険者だ。命を狙われたら無慈悲に返り討ちにできる人間だ。
三眼熊がトライホーンを守る姿を見ると剣を握る手に力がいかない俺とは違う。俺達を利用して、戦闘経験を積むこいつらを倒さずに生かしておいたら別の誰かが殺されるかもしれない。だけど、俺にはできない。
「オッズ・・」
「タツミさんどうして止めるんです?」
オッズの肩に手を置いて止めると彼は首を傾げる。これ以上の戦闘は無意味だ。
「アイテムを売れば金貨くらい稼げるだろ?」
「でも、依頼をキャンセルするとギルドから目をつけられて・・・」
「オッズ、もう帰ろ。お金は十分だし」
俺がオッズを止めているとアイサも加わってくれた。ルキアもアイサの足に引っ付いてオッズへと上目遣いで訴えている。
「・・・わかったよ。全く、これじゃ俺が悪者みたいじゃねえか」
「オッズ、ありがとう」
「タツミさんに礼を言われるようなことはしてないですよ」
オッズは不貞腐れながらも顔を赤くして大地がせり上がった壁に登っていく。
「アイサとポロロちゃんも先にいっててくれ」
「タツミさんは?」
「俺は・・」
トライホーンを見ると三眼熊が傷ついた左前脚を舐めていた。あの傷では野生で生きることは厳しいだろう。
「・・わかった。先に帰ってるね」
オッズ達が去るのを見送ると俺はトライホーン達へと近づいていく、ルキアも一緒に俺のズボンを握りながら歩いている。
「これからは人間で遊ぶなよ」
「キュルルル」
俺の話が分かったのか、トライホーンは可愛らしい声で応えた。
「ガル」
「がる?」
三眼熊は着ぐるみを着たルキアを見て人懐っこくルキアに擦り寄った。ルキアは首を傾げているが、たぶん子供だと思っているのだろう?
「キュルル」
トライホーンが俺へと近づいてきて、三又の角を落とした。
「くれるのか?」
「キュルル」
トライホーンは頷いて答えた。何だか、気を使わせてしまったようだな。なら、俺も人間らしくお礼をするか。
「お前たちが得たように、俺もいい経験ができた。これは俺の礼だよ」
俺は僧侶の服に着替えてヒールを唱えた。
ここで初めて使ったけど、俺の服なら無詠唱で行けるようだ。ちょっと詠唱を唱えてみたいとも思ったんだけど、面倒なので省略だ。トライホーンの体が緑の光に包まれて、足のケガが治っていった。
「キュルルル」
「ガル~」
トライホーンは足を見て喜び、三眼熊はトライホーンの頬を舐めまわした。師匠であるトライホーンが治ったことに歓喜しているのだろう。
「あんまり人間で遊ぶなよ。というより人間と関わるのはやめろ。勝っても負けても碌なことにはならないからな」
トライホーン達が勝ってもギルドへと報告が言って討伐隊が組まれる。それが負けたら更に強い人が来る。トライホーン達が負けるまで一生続くんだ。そんなの無駄だ。自由気ままに山で暮らした方がいい。それでも冒険者みたいなのがテリトリーに来て防衛しなくちゃいけないわけだけど、今みたいに好き好んで戦っていると良い事はない。
「キャン」
「はは、了解って事でいいのか? じゃあ、俺達は帰るぞ。だいぶ暗くなったからすぐそこで野営すると思うけどな。許してくれよ」
「ガル!」
トライホーンと三眼熊は俺の言葉にうなずきながら小さく声を上げた。俺は剣士の服に着替えてオッズ達を追いかける。
トライホーン達はずっと、俺を見つめていた。何だか寂しそうな顔だったな。
「キャン!」
「チィ、かかって来いってか」
炎の柱を水柱で消したことでお湯になり、それをかぶっていたトライホーンから湯気が出ている。その姿が更に威圧的に感じた。
トライホーンは声を張り上げて早くかかってこいと催促してくる。
「ルキア、これを着てくれ」
「あい!」
熊との戦闘時に俺は隙をみて手で触った。それにより見事に三眼熊の着ぐるみをゲット。着ぐるみはその魔物の能力を使えるようになる。それは蜘蛛で確認済みだ。
ルキアに戦闘をさせたくはないがファイアボールを使えるという強みはとても大きい。
俺はルキアに三眼熊の着ぐるみを渡すとトライホーンへと駆けだした。
丸盾を構えながらロングソードを槍のようにしてトライホーンへと突進していく。素人の突き技など、簡単にトライホーンはあしらった。
「これでどうだ!」
俺がトライホーンの角に剣を流されると続いてオッズが十字切りで切り付ける。しかし、それも読んでいたトライホーンは後方にジャンプをして避けた。
「いま!」
「私も!」
ルキアのファイアボールとアイサのファイアが混ざり合い、青白い炎の球がトライホーンへと駆け巡った。青白い炎の球は通常のファイアボールよりも速度が増していて丁度着地したトライホーンに着弾した。流石のこの事態に熊も上から降りてくる、とても心配そうな顔だ。
「ガウ・・」
「・・・」
トライホーンを包む青い煙と俺達の間でトライホーンを守ろうとして割って入ってきた熊の姿に俺は何だか、いたたまれない気持ちになる。
殺す気のなかった魔物を殺そうとすることがこんなにも心を傷つけるのかと。
「キャン・・・」
「ガウガウ!」
青白い炎がトライホーンを包んでいたのだが、それが消えていくとトライホーンが声を上げた。薄っすらとトライホーンの姿が見えてくる。トライホーンは片足を引きずっていた。
「グルルルル」
その姿を見た熊が俺に向かって牙を見せる。
「もう終わりだな」
熊は俺を見ていたわけではなく、俺の後ろにいたオッズを見ていたようだ。オッズはこの世界に生きている冒険者だ。命を狙われたら無慈悲に返り討ちにできる人間だ。
三眼熊がトライホーンを守る姿を見ると剣を握る手に力がいかない俺とは違う。俺達を利用して、戦闘経験を積むこいつらを倒さずに生かしておいたら別の誰かが殺されるかもしれない。だけど、俺にはできない。
「オッズ・・」
「タツミさんどうして止めるんです?」
オッズの肩に手を置いて止めると彼は首を傾げる。これ以上の戦闘は無意味だ。
「アイテムを売れば金貨くらい稼げるだろ?」
「でも、依頼をキャンセルするとギルドから目をつけられて・・・」
「オッズ、もう帰ろ。お金は十分だし」
俺がオッズを止めているとアイサも加わってくれた。ルキアもアイサの足に引っ付いてオッズへと上目遣いで訴えている。
「・・・わかったよ。全く、これじゃ俺が悪者みたいじゃねえか」
「オッズ、ありがとう」
「タツミさんに礼を言われるようなことはしてないですよ」
オッズは不貞腐れながらも顔を赤くして大地がせり上がった壁に登っていく。
「アイサとポロロちゃんも先にいっててくれ」
「タツミさんは?」
「俺は・・」
トライホーンを見ると三眼熊が傷ついた左前脚を舐めていた。あの傷では野生で生きることは厳しいだろう。
「・・わかった。先に帰ってるね」
オッズ達が去るのを見送ると俺はトライホーン達へと近づいていく、ルキアも一緒に俺のズボンを握りながら歩いている。
「これからは人間で遊ぶなよ」
「キュルルル」
俺の話が分かったのか、トライホーンは可愛らしい声で応えた。
「ガル」
「がる?」
三眼熊は着ぐるみを着たルキアを見て人懐っこくルキアに擦り寄った。ルキアは首を傾げているが、たぶん子供だと思っているのだろう?
「キュルル」
トライホーンが俺へと近づいてきて、三又の角を落とした。
「くれるのか?」
「キュルル」
トライホーンは頷いて答えた。何だか、気を使わせてしまったようだな。なら、俺も人間らしくお礼をするか。
「お前たちが得たように、俺もいい経験ができた。これは俺の礼だよ」
俺は僧侶の服に着替えてヒールを唱えた。
ここで初めて使ったけど、俺の服なら無詠唱で行けるようだ。ちょっと詠唱を唱えてみたいとも思ったんだけど、面倒なので省略だ。トライホーンの体が緑の光に包まれて、足のケガが治っていった。
「キュルルル」
「ガル~」
トライホーンは足を見て喜び、三眼熊はトライホーンの頬を舐めまわした。師匠であるトライホーンが治ったことに歓喜しているのだろう。
「あんまり人間で遊ぶなよ。というより人間と関わるのはやめろ。勝っても負けても碌なことにはならないからな」
トライホーン達が勝ってもギルドへと報告が言って討伐隊が組まれる。それが負けたら更に強い人が来る。トライホーン達が負けるまで一生続くんだ。そんなの無駄だ。自由気ままに山で暮らした方がいい。それでも冒険者みたいなのがテリトリーに来て防衛しなくちゃいけないわけだけど、今みたいに好き好んで戦っていると良い事はない。
「キャン」
「はは、了解って事でいいのか? じゃあ、俺達は帰るぞ。だいぶ暗くなったからすぐそこで野営すると思うけどな。許してくれよ」
「ガル!」
トライホーンと三眼熊は俺の言葉にうなずきながら小さく声を上げた。俺は剣士の服に着替えてオッズ達を追いかける。
トライホーン達はずっと、俺を見つめていた。何だか寂しそうな顔だったな。
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