64 / 113
第二章 海へ
第二十二話 武器屋の依頼
しおりを挟む
フェレナさんに勧められた依頼を先に消化してしまおうと市場へと歩き出した。市場は昨日と同じように賑わっていて米を売っているおっちゃんも店を出していた。金も入ったことだしもう10キロくらい買っておくかな。
「おお、昨日のあんちゃんじゃねえか。又買っていくのか?」
米屋のおっさんがそう言いながら米を入れていく、こっちの意図を汲んでくれているようだ。
「ああ、10キロ頼む」
「おう、じゃあ銀貨二枚だな。今日からは正式なお客様ってこった」
おっさんにニカッと笑って米を詰め終わると皮袋いっぱいの米を渡してきた。俺は銀貨を二枚お店の机に置いて受け取る。
「お父さん、美味しくないよ、お米」
「はは、まだ料理してなかったな。今度美味しくしてやるから待っててくれよ」
ルキアがズボンの横を引っ張って米は美味しくないと主張してきた。本当の美味しさを知った時の顔が目に浮かぶよ。
米を肩に担いでルキアの頭を撫でる。
「今日はキャットマンだけか?トライホーンと三眼熊はどうしたんだ?」
「ああ、ちょっと野暮用でね。ここいらに武器屋があるって聞いたんだけど、そこの依頼を済ましに来たんだ」
「武器屋って言うとあの海の刃か?碌なものも売ってないって噂になっているが亭主はドワーフだからな、本当なら凄いもんがあるんだがな~。どうやら、亭主のドワーフが外にいってから帰ってきていないみたいなんだ。かれこれ一年になるとか」
「ドワーフ?」
俺はおっさんの話を聞いてワッツを思い出した。だけど、ワッツはドワーフの国に帰ると言っていた。ここが帰る家ならここに帰ると言っていたはずだよな。気になるが依頼主に会いに行ってみよう。
「おっさんありがとな」
「おう、また来てくれよ」
米屋のおっさんがジェスチャーで金を表して手を振ってきた。俺は頷いて答える。
おっさんに教えてもらった店の前に着くと剣と盾に髭が絡みついているような看板が目についた。確かにワッツも髭が凄かったがあまりいい看板とは言えないな。
「ごめんください」
店に入ると真っ暗で誰もいなかった。店の中の武器や防具は埃をかぶっていて、とても営業しているとは思えない。
「すみません冒険者ギルドで依頼を受けたものですが?」
少し声を張って言ったのだが帰ってくるのは俺の声、まるで洞窟の中のように反響している。
「誰もいないね~」
「そうだな。また今度来てみるか」
誰もいないのに奥に入っていくのも何なので俺とルキアは外に出ることにして踵を返した。
「いらっしゃい・・・ませ」
「うおっ」
踵を返して外への扉を見るといつの間にか俺の背後に女性が立っていた。長い金髪が月の輝きのように光っていてまるでこの世界の人物ではないようなそんな印象を受けた。
「・・えっと、あなたはこの海の刃の店員ですか?」
「・・・は・い」
物静かで今にも消え入りそうな声で答えてきた。弱い物腰が人相にも出ている彼女はとても弱々しい人なのだろう事が伺える。
「俺は冒険者ギルドの依頼を受けたタツミといいます」
「ルキアはルキアだよ~」
「・・・私は海の刃の店主、ワッツの妻のヴィナスです」
「ええっ!?」
ヴィナスさんからワッツの名前がでて、俺は驚きの声を上げた。ワッツの奴こんな美人と結婚しているのか!
米屋のおっさんの話じゃ一年も帰っていないんだよな、何やってんだよあいつ。
「あの人を知っているんですか?今どこにいるんです?」
「わっ・・えっと~」
ヴィナスさんは俺へと肉薄してきた。胸も大きめの為もろに当たっている。
俺は見ないようにするのだが、胸元をチラチラと見て頬が熱を持つのを感じてしまう。人妻に何を欲情しているんだ、といった感じだ。
「アリプソの街との間にある森の中で会ったんですけど・・・ドワーフの国に帰ると言って別れました」
「・・・そうなのですか・・国に」
ヴィナスさんはワッツが国に帰ったことを聞くと明日、世界が滅びるんじゃないかと言った様子で俯いてしまった。
「あの、大丈夫ですか?」
「・・・はい、大丈夫です」
心配して声をかけるが返事とは裏腹に今にも倒れてしまいそうなくらい元気がなくなった。元々元気のあるタイプではないけど、会った時よりも生気がない感じだ。
ヴィナスさんは俯きながら椅子に腰かけた、両手で顔を覆って声を押し殺して泣き出してしまった。
「ううっ、あの人が帰ってきてくれると思って冒険者ギルドに鉱石を依頼していたのにあの人はドワーフの国へ帰ってしまった。私はこれからどうしたらいいの」
ワッツの奴、鉱石を探すために旅しててこんな綺麗な人を待たせていたんだよな。だから、彼女は鉱石を手に入れたら帰ってくると思ったんだろうな、だけど、手に入れたのを知ってもらわないと無理だからな。何かをしていなくちゃいられなかったんだろうな。
今度、ワッツにあったら殴ってやる。ヴィナスさんみたいな美人を待たせた罰だ。
「どこか痛いの?」
「・・うん、そうなのよ。ここが痛いの、でもポーションじゃ治せないの。だから泣いて治そうとしているのよ」
「泣いたら治るの?」
「治らないけど、涙がこの痛みを和らげてくれるの」
「じゃあ、泣くよりももっと良い方法があるよ」
「えっ?」
顔を覆って泣いていたヴィナスさんにルキアがヴィナスさんの膝に顔を乗せて話しかけた。
「お父さんの料理食べること~」
「お父さん?」
ルキアはニカッと笑って俺を見ていった。
「お父さん?」
「あ~ルキアは事情があって、キャットマンの群れから迫害されてたところを助けたんです。それで」
「お父さんの料理はすっごい美味しいんだよ!」
ルキアが大きく手を広げて美味しさを表現した。とても可愛らしい表現にさっきまで泣いていたヴィナスさんは笑顔になっていく。
「とても美味しいんでしょうね」
「一緒に食べよ」
「いいの?」
「うん~、いいでしょ?お父さん」
ヴィナスさんとルキアが潤んだ瞳で見つめてきた。ヴィナスさんはさっきまで泣いてたからなんだろうけど、そんな瞳で見つめられたら胸がドキドキしてしまう。人妻に惚れてしまうのもどうかと思うがヴィナスさんが美人過ぎるのがいけない。まあ、告白するわけでもないんだからいいだろう。勝手に好きになって何も言わずに去る、それが俺の冒険者道だ!
「おお、昨日のあんちゃんじゃねえか。又買っていくのか?」
米屋のおっさんがそう言いながら米を入れていく、こっちの意図を汲んでくれているようだ。
「ああ、10キロ頼む」
「おう、じゃあ銀貨二枚だな。今日からは正式なお客様ってこった」
おっさんにニカッと笑って米を詰め終わると皮袋いっぱいの米を渡してきた。俺は銀貨を二枚お店の机に置いて受け取る。
「お父さん、美味しくないよ、お米」
「はは、まだ料理してなかったな。今度美味しくしてやるから待っててくれよ」
ルキアがズボンの横を引っ張って米は美味しくないと主張してきた。本当の美味しさを知った時の顔が目に浮かぶよ。
米を肩に担いでルキアの頭を撫でる。
「今日はキャットマンだけか?トライホーンと三眼熊はどうしたんだ?」
「ああ、ちょっと野暮用でね。ここいらに武器屋があるって聞いたんだけど、そこの依頼を済ましに来たんだ」
「武器屋って言うとあの海の刃か?碌なものも売ってないって噂になっているが亭主はドワーフだからな、本当なら凄いもんがあるんだがな~。どうやら、亭主のドワーフが外にいってから帰ってきていないみたいなんだ。かれこれ一年になるとか」
「ドワーフ?」
俺はおっさんの話を聞いてワッツを思い出した。だけど、ワッツはドワーフの国に帰ると言っていた。ここが帰る家ならここに帰ると言っていたはずだよな。気になるが依頼主に会いに行ってみよう。
「おっさんありがとな」
「おう、また来てくれよ」
米屋のおっさんがジェスチャーで金を表して手を振ってきた。俺は頷いて答える。
おっさんに教えてもらった店の前に着くと剣と盾に髭が絡みついているような看板が目についた。確かにワッツも髭が凄かったがあまりいい看板とは言えないな。
「ごめんください」
店に入ると真っ暗で誰もいなかった。店の中の武器や防具は埃をかぶっていて、とても営業しているとは思えない。
「すみません冒険者ギルドで依頼を受けたものですが?」
少し声を張って言ったのだが帰ってくるのは俺の声、まるで洞窟の中のように反響している。
「誰もいないね~」
「そうだな。また今度来てみるか」
誰もいないのに奥に入っていくのも何なので俺とルキアは外に出ることにして踵を返した。
「いらっしゃい・・・ませ」
「うおっ」
踵を返して外への扉を見るといつの間にか俺の背後に女性が立っていた。長い金髪が月の輝きのように光っていてまるでこの世界の人物ではないようなそんな印象を受けた。
「・・えっと、あなたはこの海の刃の店員ですか?」
「・・・は・い」
物静かで今にも消え入りそうな声で答えてきた。弱い物腰が人相にも出ている彼女はとても弱々しい人なのだろう事が伺える。
「俺は冒険者ギルドの依頼を受けたタツミといいます」
「ルキアはルキアだよ~」
「・・・私は海の刃の店主、ワッツの妻のヴィナスです」
「ええっ!?」
ヴィナスさんからワッツの名前がでて、俺は驚きの声を上げた。ワッツの奴こんな美人と結婚しているのか!
米屋のおっさんの話じゃ一年も帰っていないんだよな、何やってんだよあいつ。
「あの人を知っているんですか?今どこにいるんです?」
「わっ・・えっと~」
ヴィナスさんは俺へと肉薄してきた。胸も大きめの為もろに当たっている。
俺は見ないようにするのだが、胸元をチラチラと見て頬が熱を持つのを感じてしまう。人妻に何を欲情しているんだ、といった感じだ。
「アリプソの街との間にある森の中で会ったんですけど・・・ドワーフの国に帰ると言って別れました」
「・・・そうなのですか・・国に」
ヴィナスさんはワッツが国に帰ったことを聞くと明日、世界が滅びるんじゃないかと言った様子で俯いてしまった。
「あの、大丈夫ですか?」
「・・・はい、大丈夫です」
心配して声をかけるが返事とは裏腹に今にも倒れてしまいそうなくらい元気がなくなった。元々元気のあるタイプではないけど、会った時よりも生気がない感じだ。
ヴィナスさんは俯きながら椅子に腰かけた、両手で顔を覆って声を押し殺して泣き出してしまった。
「ううっ、あの人が帰ってきてくれると思って冒険者ギルドに鉱石を依頼していたのにあの人はドワーフの国へ帰ってしまった。私はこれからどうしたらいいの」
ワッツの奴、鉱石を探すために旅しててこんな綺麗な人を待たせていたんだよな。だから、彼女は鉱石を手に入れたら帰ってくると思ったんだろうな、だけど、手に入れたのを知ってもらわないと無理だからな。何かをしていなくちゃいられなかったんだろうな。
今度、ワッツにあったら殴ってやる。ヴィナスさんみたいな美人を待たせた罰だ。
「どこか痛いの?」
「・・うん、そうなのよ。ここが痛いの、でもポーションじゃ治せないの。だから泣いて治そうとしているのよ」
「泣いたら治るの?」
「治らないけど、涙がこの痛みを和らげてくれるの」
「じゃあ、泣くよりももっと良い方法があるよ」
「えっ?」
顔を覆って泣いていたヴィナスさんにルキアがヴィナスさんの膝に顔を乗せて話しかけた。
「お父さんの料理食べること~」
「お父さん?」
ルキアはニカッと笑って俺を見ていった。
「お父さん?」
「あ~ルキアは事情があって、キャットマンの群れから迫害されてたところを助けたんです。それで」
「お父さんの料理はすっごい美味しいんだよ!」
ルキアが大きく手を広げて美味しさを表現した。とても可愛らしい表現にさっきまで泣いていたヴィナスさんは笑顔になっていく。
「とても美味しいんでしょうね」
「一緒に食べよ」
「いいの?」
「うん~、いいでしょ?お父さん」
ヴィナスさんとルキアが潤んだ瞳で見つめてきた。ヴィナスさんはさっきまで泣いてたからなんだろうけど、そんな瞳で見つめられたら胸がドキドキしてしまう。人妻に惚れてしまうのもどうかと思うがヴィナスさんが美人過ぎるのがいけない。まあ、告白するわけでもないんだからいいだろう。勝手に好きになって何も言わずに去る、それが俺の冒険者道だ!
50
あなたにおすすめの小説
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
村人召喚? お前は呼んでないと追い出されたので気ままに生きる
丹辺るん
ファンタジー
本作はレジーナブックスにて書籍化されています。
―ー勇者召喚なるものに巻き込まれて、私はサーナリア王国にやって来た。ところが私の職業は、職業とも呼べない「村人」。すぐに追い出されてしまった。
ーーでもこの世界の「村人」ってこんなに強いの? それに私すぐに…ーー
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる