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第一章
第14話 帰還
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「お帰りなさい皆さん。今日はどうでしたか?」
「カオルはレベル上がったか?」
ハンター協会に帰ってくるとワダさんとグゼさんが迎えてくれた。
まずはキリサキ達に襲われたことを告げる。
「……」
「まさか、命を狙ってくるとはな……。それもカオルにナイフを突きつけて血まで出させるとは……。生きていなくてよかったかもな」
ギリギリと拳を握り音を立てるグゼさん。生きていたら死ぬまで殴られていたのが容易に想像できる。
「とにかくです。皆さんご無事でよかった。フジノさん。皆さんが狩った獲物を出してもらえますか?」
「あ、はい」
無限収納もちのフジノちゃんが受付に死骸を出していく。受付の少し後ろに大きめのスペースが確保されている。そのスペースでも全部は出せないのでとりあえず一種類ずつ。
「チャンピオンとクイーン!? これだけで10億はくだらないですよ……。SランクとAランクですからね」
「やった~」
ワダさんが焦りながら呟く言葉にウルハさんは大喜び。
「でも、全部タチカワさんのおかげ……」
「ワサキッチ。それは言わない約束でしょ」
「ですよ。俺は経験値をもらえているわけだからそれで」
「ん……」
不服な様子で頷くワサキさん。まだまだ不服ではあるみたいだ。
義理高いというかなんというか。もらえるものはもらっちゃえばいいのにな。
「では6人で割って報酬をお出ししますね」
「え? フジノちゃんのは?」
「ああ、フジノさんはまだ未成年ですのでもらえないんですよ。グゼが説明しませんでしたか?」
「……いえ、全然」
グゼさんに視線を向けると口笛を吹く真似をして胡麻化している。
そんな様子にワダさんはため息をついて、
「未成年がハンターの報酬をもらってしまうと法的にダメなんですよね」
「未成年を働かせるってことになっちまうんだ」
そういえば、そんなことテレビで言っていたような気がするな。有能な能力者を雇ったら未成年でしたとか言って大きなチームが解散に追いやられたとか何とか言っていたっけな。
選定者として覚醒したから学校辞めるとかいう子供が増えてしまって大変なことになったんだよな。今はそんなことあんまり見かけなくなったけどな。
「じゃあ。彼女のご家族に?」
「それもダメなんですよ。ですのでお気持ちだけで」
「ん~。じゃあ(後で別の個体を卸しますので俺の報酬を彼女のために残しておいてください)」
「(別の個体!? ……わかりました。では後程)」
「はい」
悪い笑顔を向けて言うとあちらも黒い笑みで答えてくれた。流石に無報酬で一緒に狩りするのは木が引けるもんな。
「ん、タチカワさん何を言ったの?」
「私達も知りたいな~」
ワサキさんとツルヤさんが手を引っ張ってきた。笑ってごまかすけど、しつこく手を握ってくる。
「ではこちら、1億6千万ですね。それぞれ口座にお入れしますのでここでご確認ください」
ワダさんはそういってウインクしてくる。
口座で確認するから俺がもらっていないということは俺にしかわからないわけだ。流石だな。
「では、タチカワさんは奥の部屋へ」
「ん、さっきの……あやしい」
ワサキさんにジト目を向けられてワダさんと共に奥の部屋へ。
ウルハさん達がワサキさんに温かい目を送っているのが気になるが気にしないようにしてワダさんに続いて部屋へと入った。
「それで別の個体っていうのは?」
「これです」
「!? 大きい!? それに頭が吹き飛んでる!」
「何だこりゃ……」
グゼさんも入ってきていて二人で驚き戸惑ってる。
「クイーンのお腹にいた個体です。瀕死になったクイーンが産んだみたいなんです」
「生まれてすぐってことか……」
「レジェンドに分類されている個体かも知れませんね」
レジェンド? 伝説ってことか? それにしては弱かったような?
「レジェンド? そんなもん聞いたことがねえぞ」
「そりゃそうですよ。まだ見られていないから伝説なんですからね。伝説がそんなに見られていたら伝説じゃないでしょ」
「まあ、そりゃそうだが……」
「ランクでいうとS~SSでしょうね」
「おいおい、S以上のランクなんて確認されてないだろ」
……S以上の個体を倒してしまったってことか。これは流石にやばい状況か?
「大っぴらに発表することは控えたほうがいいですね」
「大騒ぎになって協会の運営が大変になるな」
そんな伝説級の魔物が現れ始めた。これは世界の危機につながる話だ。
マスコミに知られたら大騒ぎ間違いなし、そう判断したワダさんはすぐに協会本部へと連絡するため部屋を出ていった。
「しかし、すげえな。こんな個体を倒しちまうなんて」
「ワダさんから聞いてるでしょ」
「ああ、マスターだからな。それにしてもすげえよ」
「たぶん、生まれたばかりでステータスも弱かったんでしょ。少し威嚇したら逃げようとしましたしね」
アンチマテリアルライフルを取り出しただけで脅威だと見抜いた知能も侮りがたい。普通の人が会ったら間違いなく、死を迎えるだろう。
やはり、俺が勝てるように運が向いているのは明確だな。流石は巫女の祈りだ。
「査定額は正直わからん。とりあえず、素材は剥ぎ取って研究に回されるかもしれないな」
「わかりました。それでいいですよ。装備もこれでいいですしね」
「助かるよ。もしかしたらサプライズでいいことがあるかもしれないしな」
言い含めて話すグゼさん。俺は何のことかわからずに首を傾げて部屋を後にした。
さあ、帰ろうユナの元へ。
「カオルはレベル上がったか?」
ハンター協会に帰ってくるとワダさんとグゼさんが迎えてくれた。
まずはキリサキ達に襲われたことを告げる。
「……」
「まさか、命を狙ってくるとはな……。それもカオルにナイフを突きつけて血まで出させるとは……。生きていなくてよかったかもな」
ギリギリと拳を握り音を立てるグゼさん。生きていたら死ぬまで殴られていたのが容易に想像できる。
「とにかくです。皆さんご無事でよかった。フジノさん。皆さんが狩った獲物を出してもらえますか?」
「あ、はい」
無限収納もちのフジノちゃんが受付に死骸を出していく。受付の少し後ろに大きめのスペースが確保されている。そのスペースでも全部は出せないのでとりあえず一種類ずつ。
「チャンピオンとクイーン!? これだけで10億はくだらないですよ……。SランクとAランクですからね」
「やった~」
ワダさんが焦りながら呟く言葉にウルハさんは大喜び。
「でも、全部タチカワさんのおかげ……」
「ワサキッチ。それは言わない約束でしょ」
「ですよ。俺は経験値をもらえているわけだからそれで」
「ん……」
不服な様子で頷くワサキさん。まだまだ不服ではあるみたいだ。
義理高いというかなんというか。もらえるものはもらっちゃえばいいのにな。
「では6人で割って報酬をお出ししますね」
「え? フジノちゃんのは?」
「ああ、フジノさんはまだ未成年ですのでもらえないんですよ。グゼが説明しませんでしたか?」
「……いえ、全然」
グゼさんに視線を向けると口笛を吹く真似をして胡麻化している。
そんな様子にワダさんはため息をついて、
「未成年がハンターの報酬をもらってしまうと法的にダメなんですよね」
「未成年を働かせるってことになっちまうんだ」
そういえば、そんなことテレビで言っていたような気がするな。有能な能力者を雇ったら未成年でしたとか言って大きなチームが解散に追いやられたとか何とか言っていたっけな。
選定者として覚醒したから学校辞めるとかいう子供が増えてしまって大変なことになったんだよな。今はそんなことあんまり見かけなくなったけどな。
「じゃあ。彼女のご家族に?」
「それもダメなんですよ。ですのでお気持ちだけで」
「ん~。じゃあ(後で別の個体を卸しますので俺の報酬を彼女のために残しておいてください)」
「(別の個体!? ……わかりました。では後程)」
「はい」
悪い笑顔を向けて言うとあちらも黒い笑みで答えてくれた。流石に無報酬で一緒に狩りするのは木が引けるもんな。
「ん、タチカワさん何を言ったの?」
「私達も知りたいな~」
ワサキさんとツルヤさんが手を引っ張ってきた。笑ってごまかすけど、しつこく手を握ってくる。
「ではこちら、1億6千万ですね。それぞれ口座にお入れしますのでここでご確認ください」
ワダさんはそういってウインクしてくる。
口座で確認するから俺がもらっていないということは俺にしかわからないわけだ。流石だな。
「では、タチカワさんは奥の部屋へ」
「ん、さっきの……あやしい」
ワサキさんにジト目を向けられてワダさんと共に奥の部屋へ。
ウルハさん達がワサキさんに温かい目を送っているのが気になるが気にしないようにしてワダさんに続いて部屋へと入った。
「それで別の個体っていうのは?」
「これです」
「!? 大きい!? それに頭が吹き飛んでる!」
「何だこりゃ……」
グゼさんも入ってきていて二人で驚き戸惑ってる。
「クイーンのお腹にいた個体です。瀕死になったクイーンが産んだみたいなんです」
「生まれてすぐってことか……」
「レジェンドに分類されている個体かも知れませんね」
レジェンド? 伝説ってことか? それにしては弱かったような?
「レジェンド? そんなもん聞いたことがねえぞ」
「そりゃそうですよ。まだ見られていないから伝説なんですからね。伝説がそんなに見られていたら伝説じゃないでしょ」
「まあ、そりゃそうだが……」
「ランクでいうとS~SSでしょうね」
「おいおい、S以上のランクなんて確認されてないだろ」
……S以上の個体を倒してしまったってことか。これは流石にやばい状況か?
「大っぴらに発表することは控えたほうがいいですね」
「大騒ぎになって協会の運営が大変になるな」
そんな伝説級の魔物が現れ始めた。これは世界の危機につながる話だ。
マスコミに知られたら大騒ぎ間違いなし、そう判断したワダさんはすぐに協会本部へと連絡するため部屋を出ていった。
「しかし、すげえな。こんな個体を倒しちまうなんて」
「ワダさんから聞いてるでしょ」
「ああ、マスターだからな。それにしてもすげえよ」
「たぶん、生まれたばかりでステータスも弱かったんでしょ。少し威嚇したら逃げようとしましたしね」
アンチマテリアルライフルを取り出しただけで脅威だと見抜いた知能も侮りがたい。普通の人が会ったら間違いなく、死を迎えるだろう。
やはり、俺が勝てるように運が向いているのは明確だな。流石は巫女の祈りだ。
「査定額は正直わからん。とりあえず、素材は剥ぎ取って研究に回されるかもしれないな」
「わかりました。それでいいですよ。装備もこれでいいですしね」
「助かるよ。もしかしたらサプライズでいいことがあるかもしれないしな」
言い含めて話すグゼさん。俺は何のことかわからずに首を傾げて部屋を後にした。
さあ、帰ろうユナの元へ。
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