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第6話
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『危険だと思ったらすぐに帰って。お願い』
無表情な彼女はそういって僕を見つめた。優しい幽霊さんだな。頷いてこたえると地下へ進んでいく。
一歩一歩階段を下ると血の匂いが強くなってくる。そして、異臭がするようになった。
階段が終わると通路が見える。通路の端に骸骨が無造作に置かれていて、幽霊さんは顔をしかめた。
『男爵様が治めていた時に奴らが入ってきたの。そして、男爵様を脅して住み着いて……』
ガタガタと震える幽霊さん。その時に彼女はここで……。
「大丈夫だよ。今は僕がいるから」
『……不思議な人……凄いホッとするのね』
普通は触れられない手、それを握って告げると微笑んでくれた。彼女は幽霊の時間が長かったから箒なんかを握れるほどになってる。まあ、そうじゃなかったら、僕の力で握っていたけどね。
『この奥……奴らはずっと機会を待ってた。人を殺すために……』
「死霊術師……リッチか」
石造りの広場が広がった。結構の広さの地下室だ。棺がたくさんあってそれぞれに骸骨が横たわってる。
「ようこそ、餌の小僧」
ローブを着た骸骨が僕らに気づいて声をかけてきた。
「地下に入った時から気づいていたぞ」
「ああ、あの骸骨ね」
実はリッチがいるってわかってたんだよね。通路に置いてあった骸骨はやつらの常とう手段だからさ。
あれで侵入者を見ることが出来るんだ。さんざん前世で見たよ。
「ほ~。気づいていたのにそのゴーストには心を許していたのか?」
「まあ、ね」
『……』
幽霊さんが骸骨の後ろに移動していく。
目が赤く輝いて魔物みたいになってしまった。……やつらは未練のある幽霊を自由自在に操れる。どんなに逆らおうとしても操られてしまうんだ。
彼女は優しいからさ、夜な夜な叫び声が聞こえてきたって言うのは抵抗していたんだろうね。
「大丈夫。すぐに済むよ」
『……』
彼女の目から涙が流れる。無表情な頬を涙が流れた。
「くっくっく、すぐ済むか。確かにな。おまえが儂の者になってしまいだ! そして! すべてが骸となって儂の者になるのだ!」
リッチの言葉と共に棺から骸骨が起き上がりだす。二百はいる骸骨が剣や盾を持って僕へと迫ってきた。
『に、にげて』
幽霊さんは何とか声をひねり出す。
その言葉に笑うと僕は少し後ずさって、
「【ウォーターウェーブ】」
「何! 水気のないここでここまでの水魔法だと!」
通路からとめどなく流れる水。波を打って骸骨達を流していく。魔法名を言っているけど、なんちゃって魔法だ。僕は魔法が使えないからね。
骸骨はバラバラになって動きを止めた。
「ぜ、全員一掃したというのか……」
「これで全部? 弱すぎだよ」
「……くっくっく。骸骨はこれで全部だがな。ゴーストはまだまだいるぞ!」
『……』
幽霊の彼女と共に幾百の人の霊が前を塞ぐ。確かに幽霊を相手にするには銀やミスリルの武器がいる……。あんまり切りたくないけどね。
「くっくっく、手も足も出まい?」
『大丈夫。幽霊の私達はあなたの精神を攻撃することしかできないから』
殴ったりけったりするのは出来るけど、それだけなんだよね。ゴーストって言うのはそんなに強い魔物じゃないんだ。実質、リッチは骸骨がやられた時点で詰んでるんだ。
「ふ、なめられたものだ。問答をしていたのもこれまで、儂の最大戦力を出すとしよう」
「ん? 地揺れ?」
リッチの言葉と共にリッチの背後の壁が崩れていく。
真っ赤な大きな目が六つ。ゆらゆらとこちらを見つめてきた。
「三つ首ヒドラだ! それもゾンビのな! 水で押し流そうとしても死なんぞ!」
得意げにゾンビヒドラの背に乗ったリッチが叫ぶ。あんなものまで用意していたとは、腐臭の正体はあれか。
『逃げて!』
「ゴーストのみんな、待っててね」
『逃げてよ』
「いやだね」
『どうしてそこまで』
涙して懇願してくる幽霊さん。幽霊になったみんなは涙を流してる。リッチに繋ぎ止められて成仏できないんだ。
こんなこと許されることじゃない。絶対にやつは許しちゃダメなんだ。
「はっはっは。最初に儂を倒しておくべきだったな小僧! か~っかっかっか」
「あ!? そうだった。じゃあ」
「か? かかかか~」
大きくあいたやつの口を貫いて頭蓋を切り裂く。高圧縮したただの水で切り裂いた。ヒドラはなにが起こったのか自分の背中を覗いている。
「ど、どういうことだ!」
半分になった顔を手で押さえながら話すリッチ。まだ生きてるのか、核が別になるのかもな。高ランクの魔物にもなると核となる魔石を自由に移動できるんだよな。大体は胸とかだけど、偶に頭にしてるやつがいる。
リッチとかは体がスケスケだから頭が多かったんだけど、やつは魔石を小さくして別の所にしてたんだな。
「君の忠告を聞いてあげたんだよ。っていうか悠長に質問していていいの?」
「な!?」
水の膜がやつを包囲した。そのまま、狭まっていく水の膜がリッチを押しつぶしていく。
全部押しつぶしてしまえば核がどこにあっても意味ないもんな。
無表情な彼女はそういって僕を見つめた。優しい幽霊さんだな。頷いてこたえると地下へ進んでいく。
一歩一歩階段を下ると血の匂いが強くなってくる。そして、異臭がするようになった。
階段が終わると通路が見える。通路の端に骸骨が無造作に置かれていて、幽霊さんは顔をしかめた。
『男爵様が治めていた時に奴らが入ってきたの。そして、男爵様を脅して住み着いて……』
ガタガタと震える幽霊さん。その時に彼女はここで……。
「大丈夫だよ。今は僕がいるから」
『……不思議な人……凄いホッとするのね』
普通は触れられない手、それを握って告げると微笑んでくれた。彼女は幽霊の時間が長かったから箒なんかを握れるほどになってる。まあ、そうじゃなかったら、僕の力で握っていたけどね。
『この奥……奴らはずっと機会を待ってた。人を殺すために……』
「死霊術師……リッチか」
石造りの広場が広がった。結構の広さの地下室だ。棺がたくさんあってそれぞれに骸骨が横たわってる。
「ようこそ、餌の小僧」
ローブを着た骸骨が僕らに気づいて声をかけてきた。
「地下に入った時から気づいていたぞ」
「ああ、あの骸骨ね」
実はリッチがいるってわかってたんだよね。通路に置いてあった骸骨はやつらの常とう手段だからさ。
あれで侵入者を見ることが出来るんだ。さんざん前世で見たよ。
「ほ~。気づいていたのにそのゴーストには心を許していたのか?」
「まあ、ね」
『……』
幽霊さんが骸骨の後ろに移動していく。
目が赤く輝いて魔物みたいになってしまった。……やつらは未練のある幽霊を自由自在に操れる。どんなに逆らおうとしても操られてしまうんだ。
彼女は優しいからさ、夜な夜な叫び声が聞こえてきたって言うのは抵抗していたんだろうね。
「大丈夫。すぐに済むよ」
『……』
彼女の目から涙が流れる。無表情な頬を涙が流れた。
「くっくっく、すぐ済むか。確かにな。おまえが儂の者になってしまいだ! そして! すべてが骸となって儂の者になるのだ!」
リッチの言葉と共に棺から骸骨が起き上がりだす。二百はいる骸骨が剣や盾を持って僕へと迫ってきた。
『に、にげて』
幽霊さんは何とか声をひねり出す。
その言葉に笑うと僕は少し後ずさって、
「【ウォーターウェーブ】」
「何! 水気のないここでここまでの水魔法だと!」
通路からとめどなく流れる水。波を打って骸骨達を流していく。魔法名を言っているけど、なんちゃって魔法だ。僕は魔法が使えないからね。
骸骨はバラバラになって動きを止めた。
「ぜ、全員一掃したというのか……」
「これで全部? 弱すぎだよ」
「……くっくっく。骸骨はこれで全部だがな。ゴーストはまだまだいるぞ!」
『……』
幽霊の彼女と共に幾百の人の霊が前を塞ぐ。確かに幽霊を相手にするには銀やミスリルの武器がいる……。あんまり切りたくないけどね。
「くっくっく、手も足も出まい?」
『大丈夫。幽霊の私達はあなたの精神を攻撃することしかできないから』
殴ったりけったりするのは出来るけど、それだけなんだよね。ゴーストって言うのはそんなに強い魔物じゃないんだ。実質、リッチは骸骨がやられた時点で詰んでるんだ。
「ふ、なめられたものだ。問答をしていたのもこれまで、儂の最大戦力を出すとしよう」
「ん? 地揺れ?」
リッチの言葉と共にリッチの背後の壁が崩れていく。
真っ赤な大きな目が六つ。ゆらゆらとこちらを見つめてきた。
「三つ首ヒドラだ! それもゾンビのな! 水で押し流そうとしても死なんぞ!」
得意げにゾンビヒドラの背に乗ったリッチが叫ぶ。あんなものまで用意していたとは、腐臭の正体はあれか。
『逃げて!』
「ゴーストのみんな、待っててね」
『逃げてよ』
「いやだね」
『どうしてそこまで』
涙して懇願してくる幽霊さん。幽霊になったみんなは涙を流してる。リッチに繋ぎ止められて成仏できないんだ。
こんなこと許されることじゃない。絶対にやつは許しちゃダメなんだ。
「はっはっは。最初に儂を倒しておくべきだったな小僧! か~っかっかっか」
「あ!? そうだった。じゃあ」
「か? かかかか~」
大きくあいたやつの口を貫いて頭蓋を切り裂く。高圧縮したただの水で切り裂いた。ヒドラはなにが起こったのか自分の背中を覗いている。
「ど、どういうことだ!」
半分になった顔を手で押さえながら話すリッチ。まだ生きてるのか、核が別になるのかもな。高ランクの魔物にもなると核となる魔石を自由に移動できるんだよな。大体は胸とかだけど、偶に頭にしてるやつがいる。
リッチとかは体がスケスケだから頭が多かったんだけど、やつは魔石を小さくして別の所にしてたんだな。
「君の忠告を聞いてあげたんだよ。っていうか悠長に質問していていいの?」
「な!?」
水の膜がやつを包囲した。そのまま、狭まっていく水の膜がリッチを押しつぶしていく。
全部押しつぶしてしまえば核がどこにあっても意味ないもんな。
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