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第13話
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「アクアス様」
塔に監禁されて一日。空しか見えない塔、私はアクアス様の事を思って涙することしかできない。逃げることは出来る。だけど、グレイスホーンは首輪を私につけた。
逃げてもすぐに捕まってしまう。アクアス様でも首輪を壊すことはできないはず……。
それにこれ以上あの方に迷惑をかけたくない。私のことなんか忘れて幸せな暮らしをして欲しい。そこに私がいなくてもアクアス様が幸せなら私は……。
「リリ、ここには近づくなって言われてるだろ」
「姉様。お父様は隠し事をしてます。あの人の弱みがあるはずです」
唯一の入口の扉の向こうから声が聞こえる。子供のような声でなんだか心が和む。
カチャカチャと扉を開ける音が聞こえてきてしばらくすると扉が開いた。すると子供が二人入ってきた。
「あなたたちは?」
「あなたがお父様の弱み?」
弱み? 何を言っているのかわからない。少女の問いに首を傾げると二人は深くお辞儀をして自己紹介を始めた。
「わたくしはリリと申します。こちらは姉様のレレイ」
「レレイです」
礼儀正しい二人。なんだか誰かに似ているような気がする。
「お父様が閉じ込めたってことはお父様の弱みよね! ね?」
「お父様? まさか」
「私達はグレイスホーンの娘です」
リリちゃんのことbに首を傾げているとお姉ちゃんのレレイちゃんが答えてくれた。
アクアス様が生まれた後にグレイスホーンは子供をもうけていたみたい。
でも、発言からはグレイスホーンの事を嫌っているみたい?
「あなたを逃がせばあの男は困るわよね? ね?」
リリちゃんが私に迫ってきて聞いてくる。やっぱり、グレイスホーンを困らせたいみたい。
「ちょっとリリ。困っているじゃない」
「だって~。あの男はお母様を泣かせた男なの。許せないもん。だから困らせてやるの」
リリちゃんもレレイちゃんも私の事を知らないみたい。ってことはアクアス様のことも……。
「あなた達他に兄弟は?」
「え? いないわ」
「私とレレイだけだよ」
やっぱり。あの男はアクアス様の事をなかったことにしたんだ。
私に処分させて本当になかったことにしたんだ……。この子達には本当のことを知ってほしい。
「あなた達にはお兄ちゃんがいるの」
「「え!?」」
「とても聡明なお兄ちゃんで。とても大好きなお方」
お兄ちゃんという二人がキラキラした目で見つめてきた。微笑んで大好きだと言うと更に目をキラキラさせてる。
「お兄様がいるの! お兄様が好きなのね!」
「いやいや。ちょっと落ち着こうリリ。嘘かも知れないでしょ」
「嘘じゃないわ。魔法適性がないからって森に捨てられたのよ。私はそれが許せなくて森で育てたの」
「じゃあ本当なのね! 好きなのね?」
アクアス様に興味津々のリリちゃん。レレイちゃんも疑っているけど内心は興味あるみたいで腕を組んで耳を傾けてくる。
可愛らしい姉妹がアクアス様と会いたがってる。会わせてあげたい。
「ええ、大好きよ。この世で一番。だけど、会えないの」
「ええ、なんで?」
「お父様が閉じ込めているからよ。従順の首輪がついてる」
レレイちゃんは首輪に気づいたみたい。本来は奴隷につける首輪。レレイちゃんはお姉ちゃんだからこういうことも知っているのね。
「む~。愛し合ってる人はやっぱり一緒に居ないとダメだよ。やっぱりお姉ちゃんを外に出してあげたい。そういえばお名前は?」
リリちゃんは怒っていたのもなかったかのように私の名前を聞いてきた。
私が自己紹介をすると手を取って自分の頬に当てた。
「温かい。お母様みたい。お母様は今も一人なんだ。だから、早くあの人を懲らしめてここから抜け出してやるの」
「そんな。じゃあ、レティナ様は別の所に?」
「お母様を知っているんですか? そうなんです。お母様は碌な跡継ぎを産まないと言ってかなり遠くの田舎へ行かされているの。私達は会うことも許されずにこの屋敷に監禁されてる……」
リリちゃんが私の手に夢中になって話すとレレイちゃんが説明してくれた。
アクアス様のお母様はレティナ。とても綺麗な青い髪の女性。とても優しそうだったけど、アクアス様を生んで魔法適性がないことを聞くと絶望した表情をしていた。
なんてことなの……それでグレイスホーンは私に子供を産ませようとしているのね。このままここにいるのは危険……
「どうにか抜け出せないかしら……うんん、抜け出してもダメよね。この首輪がある限り」
グレイスホーンの子供を産むことが贖罪になるのなら受け入れるのもやぶさかじゃなかった。でも、グレイスホーンも罪を犯してる。
レティナ様は決して努力をしなかったわけじゃない。それを子供から離したり、子供を捨てるなんて許されるはずないわ。
「お父様は二日後に機は熟すって言ってた。怪しげな本を読みながら言っていました」
「本?」
「はい。真っ黒な」
レレイちゃんの話を聞いて一つ思い出すことがあった。グレイスホーンは死霊術にも興味を示していた。
リッチやスケルトンの事が描かれていた本。その中に誕生という項目があって、満月の夜に子を成すと男の子が生まれるという項目があったわ。
迷信めいたことだったけど、二日後は確か満月。グレイスホーンはその時に私を抱きに来る……急がないと。
「二人とも、一つお願いしてもいい?」
「「はい」」
「これを屋敷の壁の外に捨ててくれない?」
私が大事にしていた髪留め。アクアス様には形見と言っていた髪留めでこれを見つけてくれれば彼が助けてくれる。
このリリースレイクに来てくれるかもわからないアクアス様に助けを求めてしまうなんて、私は最低の女ね。
「いいよ~! でも、こっちのお願いも叶えてくれる?」
「お願い?」
「お兄様に会わせて! あと、抱きしめてほしいの」
頬を赤くしてお願いしてくるリリちゃん。彼女を見てレレイちゃんも頬を赤くしてる。彼女達はお母さんと離れ離れにされて人肌恋しいのね。
二人を順番に抱きしめて頬にキスをしてあげると嬉しそうに微笑んだ。リリちゃんはぴょんぴょん跳ねちゃって本当に可愛いわ。
「じゃあ行ってくるね!」
「リリ! 待って、あなたじゃ壁の向こうに投げれないでしょ」
リリちゃんが元気よく外へと走っていく。5歳くらいのリリちゃんでは投げられないだろうな。レレイちゃんに任せれば何とかなりそうだけど、彼女も8歳か7歳……少し不安。
でも、彼女達に頼るほかない。私は無力な女ね。
塔に監禁されて一日。空しか見えない塔、私はアクアス様の事を思って涙することしかできない。逃げることは出来る。だけど、グレイスホーンは首輪を私につけた。
逃げてもすぐに捕まってしまう。アクアス様でも首輪を壊すことはできないはず……。
それにこれ以上あの方に迷惑をかけたくない。私のことなんか忘れて幸せな暮らしをして欲しい。そこに私がいなくてもアクアス様が幸せなら私は……。
「リリ、ここには近づくなって言われてるだろ」
「姉様。お父様は隠し事をしてます。あの人の弱みがあるはずです」
唯一の入口の扉の向こうから声が聞こえる。子供のような声でなんだか心が和む。
カチャカチャと扉を開ける音が聞こえてきてしばらくすると扉が開いた。すると子供が二人入ってきた。
「あなたたちは?」
「あなたがお父様の弱み?」
弱み? 何を言っているのかわからない。少女の問いに首を傾げると二人は深くお辞儀をして自己紹介を始めた。
「わたくしはリリと申します。こちらは姉様のレレイ」
「レレイです」
礼儀正しい二人。なんだか誰かに似ているような気がする。
「お父様が閉じ込めたってことはお父様の弱みよね! ね?」
「お父様? まさか」
「私達はグレイスホーンの娘です」
リリちゃんのことbに首を傾げているとお姉ちゃんのレレイちゃんが答えてくれた。
アクアス様が生まれた後にグレイスホーンは子供をもうけていたみたい。
でも、発言からはグレイスホーンの事を嫌っているみたい?
「あなたを逃がせばあの男は困るわよね? ね?」
リリちゃんが私に迫ってきて聞いてくる。やっぱり、グレイスホーンを困らせたいみたい。
「ちょっとリリ。困っているじゃない」
「だって~。あの男はお母様を泣かせた男なの。許せないもん。だから困らせてやるの」
リリちゃんもレレイちゃんも私の事を知らないみたい。ってことはアクアス様のことも……。
「あなた達他に兄弟は?」
「え? いないわ」
「私とレレイだけだよ」
やっぱり。あの男はアクアス様の事をなかったことにしたんだ。
私に処分させて本当になかったことにしたんだ……。この子達には本当のことを知ってほしい。
「あなた達にはお兄ちゃんがいるの」
「「え!?」」
「とても聡明なお兄ちゃんで。とても大好きなお方」
お兄ちゃんという二人がキラキラした目で見つめてきた。微笑んで大好きだと言うと更に目をキラキラさせてる。
「お兄様がいるの! お兄様が好きなのね!」
「いやいや。ちょっと落ち着こうリリ。嘘かも知れないでしょ」
「嘘じゃないわ。魔法適性がないからって森に捨てられたのよ。私はそれが許せなくて森で育てたの」
「じゃあ本当なのね! 好きなのね?」
アクアス様に興味津々のリリちゃん。レレイちゃんも疑っているけど内心は興味あるみたいで腕を組んで耳を傾けてくる。
可愛らしい姉妹がアクアス様と会いたがってる。会わせてあげたい。
「ええ、大好きよ。この世で一番。だけど、会えないの」
「ええ、なんで?」
「お父様が閉じ込めているからよ。従順の首輪がついてる」
レレイちゃんは首輪に気づいたみたい。本来は奴隷につける首輪。レレイちゃんはお姉ちゃんだからこういうことも知っているのね。
「む~。愛し合ってる人はやっぱり一緒に居ないとダメだよ。やっぱりお姉ちゃんを外に出してあげたい。そういえばお名前は?」
リリちゃんは怒っていたのもなかったかのように私の名前を聞いてきた。
私が自己紹介をすると手を取って自分の頬に当てた。
「温かい。お母様みたい。お母様は今も一人なんだ。だから、早くあの人を懲らしめてここから抜け出してやるの」
「そんな。じゃあ、レティナ様は別の所に?」
「お母様を知っているんですか? そうなんです。お母様は碌な跡継ぎを産まないと言ってかなり遠くの田舎へ行かされているの。私達は会うことも許されずにこの屋敷に監禁されてる……」
リリちゃんが私の手に夢中になって話すとレレイちゃんが説明してくれた。
アクアス様のお母様はレティナ。とても綺麗な青い髪の女性。とても優しそうだったけど、アクアス様を生んで魔法適性がないことを聞くと絶望した表情をしていた。
なんてことなの……それでグレイスホーンは私に子供を産ませようとしているのね。このままここにいるのは危険……
「どうにか抜け出せないかしら……うんん、抜け出してもダメよね。この首輪がある限り」
グレイスホーンの子供を産むことが贖罪になるのなら受け入れるのもやぶさかじゃなかった。でも、グレイスホーンも罪を犯してる。
レティナ様は決して努力をしなかったわけじゃない。それを子供から離したり、子供を捨てるなんて許されるはずないわ。
「お父様は二日後に機は熟すって言ってた。怪しげな本を読みながら言っていました」
「本?」
「はい。真っ黒な」
レレイちゃんの話を聞いて一つ思い出すことがあった。グレイスホーンは死霊術にも興味を示していた。
リッチやスケルトンの事が描かれていた本。その中に誕生という項目があって、満月の夜に子を成すと男の子が生まれるという項目があったわ。
迷信めいたことだったけど、二日後は確か満月。グレイスホーンはその時に私を抱きに来る……急がないと。
「二人とも、一つお願いしてもいい?」
「「はい」」
「これを屋敷の壁の外に捨ててくれない?」
私が大事にしていた髪留め。アクアス様には形見と言っていた髪留めでこれを見つけてくれれば彼が助けてくれる。
このリリースレイクに来てくれるかもわからないアクアス様に助けを求めてしまうなんて、私は最低の女ね。
「いいよ~! でも、こっちのお願いも叶えてくれる?」
「お願い?」
「お兄様に会わせて! あと、抱きしめてほしいの」
頬を赤くしてお願いしてくるリリちゃん。彼女を見てレレイちゃんも頬を赤くしてる。彼女達はお母さんと離れ離れにされて人肌恋しいのね。
二人を順番に抱きしめて頬にキスをしてあげると嬉しそうに微笑んだ。リリちゃんはぴょんぴょん跳ねちゃって本当に可愛いわ。
「じゃあ行ってくるね!」
「リリ! 待って、あなたじゃ壁の向こうに投げれないでしょ」
リリちゃんが元気よく外へと走っていく。5歳くらいのリリちゃんでは投げられないだろうな。レレイちゃんに任せれば何とかなりそうだけど、彼女も8歳か7歳……少し不安。
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