前世大精霊の貴族 魔法適性がないといわれて捨てられたけど精霊なので普通に使えますけど~!

カムイイムカ(神威異夢華)

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第14話 

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「リッチ! 聞こえているなら返事をしろ。どうしたというんだ」

 私はグレイスホーン。死霊術を教えてくれたレッドオットの地下にいたリッチに念話を送るが返事は帰ってこない。
 やつが死ぬはずはない。なぜなら死なざる者だからだ。奴が死ぬには司祭が十人は必要だろう。それも魔法に対して有効な防具を身に着けてやっとといったところか。
 レッドオットの情報を聞いたが何もわからない。最新の情報と言ってもここからレッドオットへは一週間の道のりだ。一週間前の情報ということになる。もしや、高名な司祭がやつを……いやいや、そんな高名な司祭は王都の教会にいるはず。田舎とは言わないが辺境に近いレッドオットにいるはずがない。

「くっ。口惜しい。満月は二日後。それまでにリッチを呼び儀式を行わなくては……ルミナも女を産んでしまうだろう。また満月を待つわけにはいかない。一刻も早く世継ぎを産まなくては、他の貴族にこの領土を取られてしまう」

 宰相として君臨している我が家は大大偉大な血統を受け継いでいる。レティナも魔法に長けた家の出だった。必ずや最強の子を産むと確信していたというのにあのような子を産んでしまうとは誤算だった。
 リリやレレイが男の子ならば……魔法の才能にあふれた子供達、あの子達は保険として手元に置いているがそれは他の家の子供を我が家に受け入れるということ、それは最終手段だ。偉大な我が家を別の家の子供に渡すなど……決して許されんというのに。

「自力で実行せざる負えんか。リッチなど頼っていては大賢者の名が廃る」

 リッチも滅ぼせる私がやつの力を借りなくてはならない? そんなことはない! 死霊術の事はかなりわかってきた。満月による母体への影響も判明している。それを倍増させればいいだけだ。
 子を成してルミナは力尽きるだろうが致し方ない。それも我が一族のため、リリとレレイにはその子を育てるという使命につかせ、最強の一族を作り出す。
 ふはは、考えるだけでも身震いする。
 最強の子を三人も従えて、私は王都をルルイス王国を支配するのだ! 
 
「フハハハハハ!」

 思わず笑いが込みあがってきた。これ以上ない高揚感。早速、自室で死霊術を調べていく。魔方式を応用して死霊術を強化、それを天井に幾重にも描き、人へと作用するように改良を加えていく。
 なんだ、簡単ではないか!
 





「ん? 物音がした? 雨?」

「どうした?」

「いや、今物音がしたんだが……雨だったようだ」

 ふぅ。何とか気づかれなかったな。
 僕は早速、情報で得たグレイスホーンの屋敷へと侵入しようと内壁を渡った。空を飛んで城壁を越えるときにどうしても音がでちゃうんんだよね。
 なんせ僕は元水の精霊だから水を介してでしか空を飛べない。水を足に纏って地面に噴射させて飛ぶんだけど、痕跡が残ってしまうから大変なんだよね。

「アクアス様。大丈夫ですか?」

「大丈夫だよエルザさん」

 エルザさんは飛べないからお姫様抱っこで運んだんだよね。
 空を飛んだら驚いていたけど、なんだか嬉しそうに僕を見つめてきてた。
 彼女はダークエルフで綺麗だからなんだか緊張したよ。

「さて、入ったらあとは素早く屋敷へ向かおうか」

「はい」

 内壁の中へと降り立つ。彼女を降ろして早速、屋敷へと向き直る。
 見つかった時の為に服は貴族のような豪華な服にしてきた。エルザさんも白を基調にした豪華な服。いつもよりもかなり綺麗だ。うん、ダークエルフに白い服はやっぱり似合うな~。
 僕はというと緑と白の服で坊ちゃんって感じだな。エルザさんに似合ってるって言ってもらったけど、ほんと恥ずかしい。
 どこの金持ちかなって感じだよ。まあ、変装みたいなものだからそれでいいんだけどね。
 そんな恥ずかしさも気にせずに屋敷へと歩く、流石に貴族が走っていたら目立ちそうだからね、偏見かな? それにしても塔が目印だからわかりやすいな、すぐに見つけられました。

「侵入にはあの塔の天窓がよろしいかと」

 エルザさんの提案に頷いてまたもや空を飛ぶ。空を飛ぶのでエルザさんを抱き上げると嬉しそうに抱き着いてきた。
 兵士の見張りも見られないから飛んでもなんの問題もない。貴族って家から出ても馬車とかに入ってしまうから大丈夫みたいだ。兵士達も平和ボケしているから目撃者はいない。やりたい放題だな。

 塔の上部にたどり着いて天窓から下を覗く。ベッドと小さなテーブルセット、それにトイレが見える。まるで牢屋みたいだ。

「誰かいます」

「あっ。ほんとうだ……ってルミナさんだ!」

 よく見るとベッドに横たわる女性が見えた。金髪の長い髪、僕の大好きな人だ。
 彼女だと気づくと体が勝手に動いて天窓から降りたつ。目を瞑っていた彼女を起こさないようにゆっくりと降り立ってエルザさんを降ろすとルミナさんの頬に手を添えた。

「ん……アク、アス様?」

「ふふ、おはようルミナさん」

 目を覚ますと僕がいるもんだから驚いてるルミナさん。子供みたいに驚くものだから笑っちゃった。

「私は夢を見ているのですか?」

「そうだね。夢を見てるんだよ。だからキスしちゃう」

 ルミナさんの頬にキスをする。彼女はその感触に頬を摩ると嬉しそうに僕に抱き着いてきた。

「すみませんでしたアクアス様。あなた様を誘拐した罪を償おうと来たのですが間違いでした」

「うん。ルミナさんは間違えたね。だけど、大丈夫、妻の間違いは夫である僕が正したからね」

「アクアス様」

 ルミナさんと見つめ合う。今度は唇同士のキスをしようと思ったんだけど、残念なことに他に人がいることを忘れてた。

「スト~ップ」

「エルザさん? どうしたの?」

「どうしたのではありませんよ。私がいるのにそんなにイチャイチャするなんて」

 ぷく~っと頬を膨らませて怒るエルザさん。なんだか怒ってるみたいだ。

「アクアス様。この方は?」

「ああ、この人はレッドオットの受付をしていたエルザさん。呪いをかけられてたんだけど解いてあげたんだ。それで恩返しに従者になってくれたんだ」

 僕の説明を聞くとルミナさんは嬉しそうに手を叩いてエルザさんに握手を求めた。エルザさんはそっぽを向いてしまう。なんであんなに怒ってるんだろう?

「エル、ザさん?」

「ふんっ! 私はまだ認めていませんから」

 頑なに認めないエルザさん。認めるも何もルミナさんは僕の妻なんだけどな。
 怒っているエルザさんにルミナさんは微笑んで抱きしめた。

「いいんです。アクアス様を信頼してくれているだけで、私はとても嬉しい。私以外にアクアス様を愛してくれている人がいることが」

「ルミナさ……ま」

 ルミナさんは涙して抱きしめる。その姿にエルザさんは認め始めちゃってる。
 ルミナさんは僕の境遇を知っているから僕のことが認められているのが嬉しいんだろうな。

「流石アクアス様の愛する人ですね……。私の負けです」

 エルザさんは大きくため息をついてルミナさんを抱き返した。ふふ、ルミナさんの懐の厚さは僕が一番知ってるからね。なんせ、僕をここまで育てたのはルミナさんなんだからね。

「それでお父様は?」

 抱き合う二人を微笑ましく見つめて現状を聞く。どうやら、嬉しいことと最悪なことがあったみたいだ。
 この落差は天と地との差があるね。
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