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第14話 ポーション作り
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いつもの薪拾い、でもいつもと違う。龍の声は弱く、風の声も弱い。緩やかな時をビートに与えている。
与えられた時の中、ビートとラトスは薬草を銀の大地で探し回る。一歩一歩、ビートと共に頂上へと歩みを進める。
息をするたびに吐かれる白銀の息、まるで龍の咆哮。風はそれを消すことはない。ただ静かに二人を見ていた。
「赤い実、青い実、緑の実。赤い実が薬草と合わせると傷を治してくれる実だよ」
頂上に登っていると三つの実がなっている木があった。ラトスが赤い実をもぎ取ってビートに手渡す。食べてみるように促すとビートは赤い実をかじる。
『にがい!?』ビートは口に雪を入れて洗う。何度洗っても苦みが消えない。彼は涙目でラトスを見つめた。
「ははは、ごめんごめん。赤い実は美味しそうだからね。食料がない時に食べてしまう冒険者も多いんだ。だから教訓をね」
ビートの視線に笑いながら謝るラトス。ビートは視線を青い実と緑の実に移す。この苦みを消す美味しい実はないのだろうか、そう思った彼は二つの実をとる。
残念ながら二つとも外れ。三つの実で食べられる物はない。特に緑の実は危険だ。クジキの木、赤、青、緑の実をつける木。赤い実は人を癒し、青い実は魔物を癒す。緑の実はその二つを傷つける。
従魔を持つ冒険者もいる。クジキの木は重宝される木としても有名だ。
「取れるだけ取っていこう」
赤い実をあるだけ詰め込んでいく。緑の実も少しだけ取るラトス。毒もまた使い道がある、ということか。
二人は赤い実を持てるだけ持つと村へと帰っていく。村に帰るとラトスが新しく作った小屋に入る。色とりどりの野草が乾燥されている棚が見られる。
「これが薬草、乾燥しているからわかりにくいかな。これが今日とった薬草。少し色が白くなっているんだ」
薬草を二つ見せて話すラトス。ビートは頷いて乾燥棚の中から薬草を見つめてニッコリと笑う。
薬草と赤い実を混ぜる。赤い実も薄く切って乾燥させると混ぜやすい。すぐに使うのならそのままでもいい、ラトスが火にかけながら混ぜていく、すると赤い粉へと変わっていく。
最後に蒸留させた水に入れる。水との分量を間違えると効果がなくなってしまう。慎重に合わせると革袋に入れて吊るす。
「完成だ」
レッシーの薬やで作ったものと同じものが出来上がる。ビートはそれを見て目を輝かせる。『僕もやりたい』そう言って彼もラトスと同じように作っていく。何度も失敗を繰り返す。出来なくて涙目になるビート。ラトスはそんな彼の頭を撫でて教えていく。
「薬草と赤い実を混ぜる時に火につける。その時の火の強さに注意する。最後の水の量も重要だ」
やってみせるラトス。ビートは頷いて言われた通りやっていく。三度の失敗の末、ビートは見事なポーションを作り出すことに成功した。
早速、飲んでみようとビートは口に含む。苦みもなくて少し甘いような気がする。体の疲れがなくなっていく。
「簡単なように見えて難しい。毎日、繰り返し練習しよう」
ラトスはそう言ってほほ笑む。
ビートはラトスに言われるまま薬の勉強に励んだ。傷を治すポーション、毒を治すポーション。ありとあらゆるポーションを勉強していった。
冬が終わり、春になる。そして、また冬が来る。それを三度繰り返すとビートは10歳となった。
カレンの旅立ちから3年、ビートは外への憧れが強くなってきた。
「ラトス。ポーションはすべて作れるようになったよね」
いつもの夕食時、ビートはそう言ってラトスを見つめる。スープに手を付けていた彼はビートを見つめて少しため息をつく。考えが頭をめぐる。
我が子の願いをかなえてやりたい。だが、世界のことを考えると行かせるのは危険。そう思うラトスは悩みでため息をつく。
「ビート……。君は外で何を見る」
ラトスは問いかける。するとビートは首を傾げる。
『僕は人を助けたい、見るだけじゃだめだから』ビートはそう言ってダッツのことを思いだす。何年たっても思い出される後悔。ビートは今も助けられた未来を夢見ていた。
ダッツの奥さんが泣く姿をシーナと重ならせる。お母さんを泣かせるなんて僕にはできないと。
「僕らは一緒に行けないよ? 一人で大丈夫かい?」
ラトスはそう言って背中を向ける。ビートの姿を見ていると泣いてしまうと思ったラトスは顔を見ることが出来なかった。
ビートは彼の背中を見て、シーナに視線を向ける。今まで一緒にいた二人がいない世界。ビートは一人になることを想像する。悲しくて寂しい世界。でも、新たな世界が見える。初めて頂上に登った時のような高揚を与えてくれるような世界が。
「ビート、あなたを生んでよかった。とても優しい子。大丈夫。私はもう寂しくないから」
シーナはそう言ってビートを抱きしめる。強く強く抱きしめる彼女は本当はビートに外へ行ってほしくなかった。強がっている彼女はラトスに微笑む。
その微笑みがラトスを動かす。大きくうなずいて涙を浮かべる彼。彼はビートの肩を叩く。
「これからの世界は厳しい世界になる。ビートなら大丈夫だと思うけれど」
涙を流しながらほほ笑むラトス。彼もまたビートと、我が子と離れることを良しとしていなかった。悲しくて寂しくて、半身がなくなるような痛みを感じていた。
でも、子は親から離れる、それが自然なこと。自然ならば龍ですらあらがうことはできないのだから。
与えられた時の中、ビートとラトスは薬草を銀の大地で探し回る。一歩一歩、ビートと共に頂上へと歩みを進める。
息をするたびに吐かれる白銀の息、まるで龍の咆哮。風はそれを消すことはない。ただ静かに二人を見ていた。
「赤い実、青い実、緑の実。赤い実が薬草と合わせると傷を治してくれる実だよ」
頂上に登っていると三つの実がなっている木があった。ラトスが赤い実をもぎ取ってビートに手渡す。食べてみるように促すとビートは赤い実をかじる。
『にがい!?』ビートは口に雪を入れて洗う。何度洗っても苦みが消えない。彼は涙目でラトスを見つめた。
「ははは、ごめんごめん。赤い実は美味しそうだからね。食料がない時に食べてしまう冒険者も多いんだ。だから教訓をね」
ビートの視線に笑いながら謝るラトス。ビートは視線を青い実と緑の実に移す。この苦みを消す美味しい実はないのだろうか、そう思った彼は二つの実をとる。
残念ながら二つとも外れ。三つの実で食べられる物はない。特に緑の実は危険だ。クジキの木、赤、青、緑の実をつける木。赤い実は人を癒し、青い実は魔物を癒す。緑の実はその二つを傷つける。
従魔を持つ冒険者もいる。クジキの木は重宝される木としても有名だ。
「取れるだけ取っていこう」
赤い実をあるだけ詰め込んでいく。緑の実も少しだけ取るラトス。毒もまた使い道がある、ということか。
二人は赤い実を持てるだけ持つと村へと帰っていく。村に帰るとラトスが新しく作った小屋に入る。色とりどりの野草が乾燥されている棚が見られる。
「これが薬草、乾燥しているからわかりにくいかな。これが今日とった薬草。少し色が白くなっているんだ」
薬草を二つ見せて話すラトス。ビートは頷いて乾燥棚の中から薬草を見つめてニッコリと笑う。
薬草と赤い実を混ぜる。赤い実も薄く切って乾燥させると混ぜやすい。すぐに使うのならそのままでもいい、ラトスが火にかけながら混ぜていく、すると赤い粉へと変わっていく。
最後に蒸留させた水に入れる。水との分量を間違えると効果がなくなってしまう。慎重に合わせると革袋に入れて吊るす。
「完成だ」
レッシーの薬やで作ったものと同じものが出来上がる。ビートはそれを見て目を輝かせる。『僕もやりたい』そう言って彼もラトスと同じように作っていく。何度も失敗を繰り返す。出来なくて涙目になるビート。ラトスはそんな彼の頭を撫でて教えていく。
「薬草と赤い実を混ぜる時に火につける。その時の火の強さに注意する。最後の水の量も重要だ」
やってみせるラトス。ビートは頷いて言われた通りやっていく。三度の失敗の末、ビートは見事なポーションを作り出すことに成功した。
早速、飲んでみようとビートは口に含む。苦みもなくて少し甘いような気がする。体の疲れがなくなっていく。
「簡単なように見えて難しい。毎日、繰り返し練習しよう」
ラトスはそう言ってほほ笑む。
ビートはラトスに言われるまま薬の勉強に励んだ。傷を治すポーション、毒を治すポーション。ありとあらゆるポーションを勉強していった。
冬が終わり、春になる。そして、また冬が来る。それを三度繰り返すとビートは10歳となった。
カレンの旅立ちから3年、ビートは外への憧れが強くなってきた。
「ラトス。ポーションはすべて作れるようになったよね」
いつもの夕食時、ビートはそう言ってラトスを見つめる。スープに手を付けていた彼はビートを見つめて少しため息をつく。考えが頭をめぐる。
我が子の願いをかなえてやりたい。だが、世界のことを考えると行かせるのは危険。そう思うラトスは悩みでため息をつく。
「ビート……。君は外で何を見る」
ラトスは問いかける。するとビートは首を傾げる。
『僕は人を助けたい、見るだけじゃだめだから』ビートはそう言ってダッツのことを思いだす。何年たっても思い出される後悔。ビートは今も助けられた未来を夢見ていた。
ダッツの奥さんが泣く姿をシーナと重ならせる。お母さんを泣かせるなんて僕にはできないと。
「僕らは一緒に行けないよ? 一人で大丈夫かい?」
ラトスはそう言って背中を向ける。ビートの姿を見ていると泣いてしまうと思ったラトスは顔を見ることが出来なかった。
ビートは彼の背中を見て、シーナに視線を向ける。今まで一緒にいた二人がいない世界。ビートは一人になることを想像する。悲しくて寂しい世界。でも、新たな世界が見える。初めて頂上に登った時のような高揚を与えてくれるような世界が。
「ビート、あなたを生んでよかった。とても優しい子。大丈夫。私はもう寂しくないから」
シーナはそう言ってビートを抱きしめる。強く強く抱きしめる彼女は本当はビートに外へ行ってほしくなかった。強がっている彼女はラトスに微笑む。
その微笑みがラトスを動かす。大きくうなずいて涙を浮かべる彼。彼はビートの肩を叩く。
「これからの世界は厳しい世界になる。ビートなら大丈夫だと思うけれど」
涙を流しながらほほ笑むラトス。彼もまたビートと、我が子と離れることを良しとしていなかった。悲しくて寂しくて、半身がなくなるような痛みを感じていた。
でも、子は親から離れる、それが自然なこと。自然ならば龍ですらあらがうことはできないのだから。
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