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第一章 落とされたもの
第15話 目覚め
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「ん、ん~……。ここは」
目を覚ますと僕のお店の寝室だった。
「アート様……」
「シエルさん。ここまで運んでくれたのかな」
寝言が聞こえてきた。僕の眠るベッドに寄り添うように眠るシエルさんの寝言。とても綺麗な彼女の寝顔。思わず、彼女の頬を触ってしまう。
「ん……、アート様、起きたんですね。よかった」
「ごめんね。起こしちゃったね。運んでくれてありがとシエルさん」
うるんだ瞳で微笑むシエルさん。お礼を言うと首を横に振った。
「アート様、私をシエルとお呼びください」
跪いたシエルさんがそういうと僕の掌にキスをした。急なことで僕は言葉がでない。
「アート様は私の主。呼び捨てで呼んでほしいのです」
「あ、え? ……わかったよシエルさ、じゃなかった、シエル。君がそう言うなら呼び捨てで呼ばせてもらうね」
「はい!」
彼女の話に答えると顔を見合って笑いあう。
グ~! そうしていると僕のお腹が鳴ってしまう。恥ずかしい……
「ふふ、すぐに朝食を作りますね」
「あっ、僕も作るよ」
「きゃ!」
シエルさんが話ながら扉を開けるとイーマちゃんが聞き耳を立てていたみたいで倒れこんでくる。
「もう! イーマったら……」
「えへへへ。私もお腹すいた~。早く作ろ~」
シエルさんに抱き着くイーマちゃん。誤魔化すように話す彼女にため息をつきながらも一緒に一階のキッチンに降りていく。
「みんな無事に終わって良かった。僕も行こ」
昨日のことを思い出しながら階段を降りていく。孤児院の子達も無事だった、本当に良かった。あの時に孤児院に泊ってなかったら大変なことになってた。
「わ~! 美味しそ~」
「ふふ、アート様! 卵を頂けますか?」
「了解」
イーマちゃんが薄く切った焼きポテトを見て、嬉しそうに声をあげる。シエルさんは更に卵焼きをつくってくれるみたい、言われた通り卵を手渡す。
「アート様。アート様は才能を複数持っているのですね。凄いです!」
「え?」
料理が出来て机に並べていると急にシエルさんが聞いてきた。
「魔法を使ったじゃないですか。それにあの剣捌き。才能がないと出来ませんよ」
「へ、へ~……」
ルドガーの素振りの真似をしただけなんだけどな。
「実は才能がないってことで僕は捨てられたんだ。まあお父さんに直接聞いたわけじゃないけど、僕はそう思ってる」
「え? でも」
シエルさんの料理を食べながら話していく。話を聞いて、彼女は首を傾げた。
「そう、才能がないと出来ない動きをしたよね。それはこの落とし物バッグのおかげなんだ。才能も入っているんだ」
「え!? それって……」
真実を話すとシエルさんが驚愕する。それもそのはず、神様のような能力だもんな。
イーマちゃんの食器をつく音だけが聞こえてくる静寂が続く。料理を並べ終えて、しばらくするとシエルさんが口を開く。
「聞いてはいけないと思っていましたが、そのバッグから私も……」
「そうだったんだね。実はそうなんだ」
シエルさんの言葉に俯いて肯定する。彼女は再度口を紡ぐ。
「じゃあ、アート様のおかげで私とシエルお姉ちゃんが笑っていられるんだね! やった~!」
「イーマ……」
口の周りを汚しながらイーマちゃんが声をあげる。本当に嬉しそうな彼女を見てシエルさんは泣き出してしまう。
「アート様、ありがとうございます」
「ううん。本物なのかはわからない。勝手に複製を作ってしまった可能性もある。怒られても仕方ないことをしてると思う」
「怒るなんてそんな! 感謝してもしきれないほどの幸せをアート様にもらっています。複製されていてもいなくても、今この目の前の幸せを否定なんてさせません。それがアート様でも!」
お礼を言ってくれるシエルさん。僕が言葉をこぼすと彼女は僕を抱きしめて耳元で囁く。
「こちらこそ、ありがとうシエルさん。えっと……」
「お姉ちゃん達キスするの? イーマもした~い!」
「「!?」」
シエルさんと見つめ合っているとイーマちゃんが目を輝かせて声をあげた。僕らは驚き戸惑って離れると食事を再開する。
「ほ、ほらイーマ。まだ食事中でしょ」
「え~、私は全部食べました~。お姉ちゃん達が遅いんだよ~」
「じゃあ、ハチミツ菓子があったでしょ。それも食べていいよ」
「あ~、本当だ~。やった~」
シエルさんが誤魔化してイーマちゃんを誘導していく。僕も食事に集中しよう。
「アート君はいるかな?」
「ん?」
食事を終えてお店の準備をしようと思ったら声が聞こえてくる。ルルスさんかな?
「やっほ~、アート君!」
「スティナさん? ルルスさんと?」
スティナさんとルルスさんが一緒にお店に入ってきた。珍しいメンバー、どうしたんだろう?
「丁度外で会っただけだよ。僕は昨日の報酬とポーションの代金を届けに来たんだ。金貨1枚」
「え!? 金貨ですか? 大銀貨1枚じゃ?」
ポーション一本が原価で大銅貨50枚。100本でしょ。明らかに値段が高いような?
「間違いじゃないよ。これはトロールやゴブリンの褒賞金も入っているからね。ついでに冒険者ギルドから受け取ってきたんだ」
「そ、そうなんですか? ルルスさんが肩代わりしてるんじゃ?」
商人たちを納得させるためにそう言ってたよな~。
「いやいや、本当だよ。確かにポーションは肩代わりしているけど、褒賞金はギルドから出てる額だ。更に上乗せしても私としてはいいと思うくらいの活躍をしてくれたよ、君達は」
「そんな~」
褒められて思わず頬が緩む。ルルスさんは本当にいい人だな~。
「おっとすまない。すぐに他の商人の元へ行かないといけないんだ」
「ありがとうございます。これ良かったら飲んでいってください」
ルルスさんは急いでいるみたいだ。何か僕に出来ないことはないかなと思ってポーションを差し出した。
「ん? ポーションかな? 遠慮せずにもらうよ。正直、朝食も食べれていないんだ。ゴクッ! ん~、美味しいし、体が軽くなるな~。では!」
「はい! 頑張りすぎないでくださいね」
「はは、心配無用だよ。アート君」
手を振って見送ると振りかえしながら微笑んでくれた。颯爽と現れて颯爽と去っていく。仕事人だな~。
「次は私だよアート君!」
おっと忘れてた。スティナさんもいたんだった。
目を覚ますと僕のお店の寝室だった。
「アート様……」
「シエルさん。ここまで運んでくれたのかな」
寝言が聞こえてきた。僕の眠るベッドに寄り添うように眠るシエルさんの寝言。とても綺麗な彼女の寝顔。思わず、彼女の頬を触ってしまう。
「ん……、アート様、起きたんですね。よかった」
「ごめんね。起こしちゃったね。運んでくれてありがとシエルさん」
うるんだ瞳で微笑むシエルさん。お礼を言うと首を横に振った。
「アート様、私をシエルとお呼びください」
跪いたシエルさんがそういうと僕の掌にキスをした。急なことで僕は言葉がでない。
「アート様は私の主。呼び捨てで呼んでほしいのです」
「あ、え? ……わかったよシエルさ、じゃなかった、シエル。君がそう言うなら呼び捨てで呼ばせてもらうね」
「はい!」
彼女の話に答えると顔を見合って笑いあう。
グ~! そうしていると僕のお腹が鳴ってしまう。恥ずかしい……
「ふふ、すぐに朝食を作りますね」
「あっ、僕も作るよ」
「きゃ!」
シエルさんが話ながら扉を開けるとイーマちゃんが聞き耳を立てていたみたいで倒れこんでくる。
「もう! イーマったら……」
「えへへへ。私もお腹すいた~。早く作ろ~」
シエルさんに抱き着くイーマちゃん。誤魔化すように話す彼女にため息をつきながらも一緒に一階のキッチンに降りていく。
「みんな無事に終わって良かった。僕も行こ」
昨日のことを思い出しながら階段を降りていく。孤児院の子達も無事だった、本当に良かった。あの時に孤児院に泊ってなかったら大変なことになってた。
「わ~! 美味しそ~」
「ふふ、アート様! 卵を頂けますか?」
「了解」
イーマちゃんが薄く切った焼きポテトを見て、嬉しそうに声をあげる。シエルさんは更に卵焼きをつくってくれるみたい、言われた通り卵を手渡す。
「アート様。アート様は才能を複数持っているのですね。凄いです!」
「え?」
料理が出来て机に並べていると急にシエルさんが聞いてきた。
「魔法を使ったじゃないですか。それにあの剣捌き。才能がないと出来ませんよ」
「へ、へ~……」
ルドガーの素振りの真似をしただけなんだけどな。
「実は才能がないってことで僕は捨てられたんだ。まあお父さんに直接聞いたわけじゃないけど、僕はそう思ってる」
「え? でも」
シエルさんの料理を食べながら話していく。話を聞いて、彼女は首を傾げた。
「そう、才能がないと出来ない動きをしたよね。それはこの落とし物バッグのおかげなんだ。才能も入っているんだ」
「え!? それって……」
真実を話すとシエルさんが驚愕する。それもそのはず、神様のような能力だもんな。
イーマちゃんの食器をつく音だけが聞こえてくる静寂が続く。料理を並べ終えて、しばらくするとシエルさんが口を開く。
「聞いてはいけないと思っていましたが、そのバッグから私も……」
「そうだったんだね。実はそうなんだ」
シエルさんの言葉に俯いて肯定する。彼女は再度口を紡ぐ。
「じゃあ、アート様のおかげで私とシエルお姉ちゃんが笑っていられるんだね! やった~!」
「イーマ……」
口の周りを汚しながらイーマちゃんが声をあげる。本当に嬉しそうな彼女を見てシエルさんは泣き出してしまう。
「アート様、ありがとうございます」
「ううん。本物なのかはわからない。勝手に複製を作ってしまった可能性もある。怒られても仕方ないことをしてると思う」
「怒るなんてそんな! 感謝してもしきれないほどの幸せをアート様にもらっています。複製されていてもいなくても、今この目の前の幸せを否定なんてさせません。それがアート様でも!」
お礼を言ってくれるシエルさん。僕が言葉をこぼすと彼女は僕を抱きしめて耳元で囁く。
「こちらこそ、ありがとうシエルさん。えっと……」
「お姉ちゃん達キスするの? イーマもした~い!」
「「!?」」
シエルさんと見つめ合っているとイーマちゃんが目を輝かせて声をあげた。僕らは驚き戸惑って離れると食事を再開する。
「ほ、ほらイーマ。まだ食事中でしょ」
「え~、私は全部食べました~。お姉ちゃん達が遅いんだよ~」
「じゃあ、ハチミツ菓子があったでしょ。それも食べていいよ」
「あ~、本当だ~。やった~」
シエルさんが誤魔化してイーマちゃんを誘導していく。僕も食事に集中しよう。
「アート君はいるかな?」
「ん?」
食事を終えてお店の準備をしようと思ったら声が聞こえてくる。ルルスさんかな?
「やっほ~、アート君!」
「スティナさん? ルルスさんと?」
スティナさんとルルスさんが一緒にお店に入ってきた。珍しいメンバー、どうしたんだろう?
「丁度外で会っただけだよ。僕は昨日の報酬とポーションの代金を届けに来たんだ。金貨1枚」
「え!? 金貨ですか? 大銀貨1枚じゃ?」
ポーション一本が原価で大銅貨50枚。100本でしょ。明らかに値段が高いような?
「間違いじゃないよ。これはトロールやゴブリンの褒賞金も入っているからね。ついでに冒険者ギルドから受け取ってきたんだ」
「そ、そうなんですか? ルルスさんが肩代わりしてるんじゃ?」
商人たちを納得させるためにそう言ってたよな~。
「いやいや、本当だよ。確かにポーションは肩代わりしているけど、褒賞金はギルドから出てる額だ。更に上乗せしても私としてはいいと思うくらいの活躍をしてくれたよ、君達は」
「そんな~」
褒められて思わず頬が緩む。ルルスさんは本当にいい人だな~。
「おっとすまない。すぐに他の商人の元へ行かないといけないんだ」
「ありがとうございます。これ良かったら飲んでいってください」
ルルスさんは急いでいるみたいだ。何か僕に出来ないことはないかなと思ってポーションを差し出した。
「ん? ポーションかな? 遠慮せずにもらうよ。正直、朝食も食べれていないんだ。ゴクッ! ん~、美味しいし、体が軽くなるな~。では!」
「はい! 頑張りすぎないでくださいね」
「はは、心配無用だよ。アート君」
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