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第一章 

第17話 順調な日々

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 ゲルグガルドに戻ってきてギルドに帰還。
 中に入るとルファーとリファが僕に気づいて近づいてくる。

「「お帰りなさい」」

 双子特有の声で迎えてくれる二人。なんだか獣耳や尻尾が垣間見えるけど、僕の気のせいだろう。

「「ただいま」」

 ルリと一緒に挨拶を返すと二人は銀貨や大銅貨の入った革袋を手渡してきた。

「今日の給料と報酬だよ」

「みんな協力してくれて思ったよりも売れたよ」

 二人は満面の笑みで報告してくる。
 ギルドの中にいる冒険者やジムさん達を見ると僕らに微笑んでくれてる。

「お帰りなさい」

「ああ、オリーブさん。ただいま」

「フィル君達は休んでていいよ」

「ん、報告は私達がやっておく」

 オリーブさんも迎えてくれて挨拶を返すとイレレイさんとベルルさんが報告を済ませるって言ってくれた。
 僕は甘えさせてもらってルファーとリファと一緒に併設されてる酒場の席に座った。

「ルリ! 魔物ってどんなだった?」

「それがね!」

 座るとすぐにリファがルリに質問し始める。僕らの冒険譚を聞きたいと言った感じかな。ルファーも輝いた瞳でルリの話に聞き耳をたててる。

「それでね。ゴブリンがいっぱいきてね。フィルが魔法でイフリートを作ってね」

「わ~」

 ルリの話を聞いて目を輝かせるリファ。ルファーはなぜかそれを聞いて僕に視線を向けてきた。

「い、今の本当なの?」

「え? イフリートのこと?」

「うん!」

「本当だよ」

「す、すご~い。やっぱりフィルって凄いんだね」

 輝く瞳のままそんな感想を言ってくるルファー。少し大人びてると思っていたけど、こういうところはまだまだ子供だな~。

「ん、フィル。マジックバッグを貸してくれる? 討伐の証拠として出してほしいみたい」

「あっ。わかりました」

 ゴブリンの死骸が大量に入ってるマジックバッグをベルルさんに手渡す。

「ありがと。もう少し待っててね。すぐに報奨金を分けるから」

「はい」

 ベルルさんはそういってオリーブさんと奥の部屋に入って行った。
 魔物がいっぱい入ってるから解体室みたいなところで出すんだろうな。受付の前じゃ流石に出し切れないだろうし。

「よ~し。ベルルが帰ってくる前に飲むぞ~」

「ファバル~。また二日酔いになっちゃうんだな。やめるんだな!」

「あ~? 知ってんだろワッタ。俺がそんなやわじゃねえって!」

「説得力ないわよファバル。今日だってそれで置いてかれたんでしょ」

 ファバルさんがエールに氷を入れて飲み始めるとワッタさんとイレレイさんが呆れて声をあげた。

「僕はみんなの言うことを聞くよ。今日のことは本当にすまないと思ってるからね」

「あっ! ジムこのやろう! 裏切ったな」

「昨日は完全に舞い上がっちゃってたからね。反省したんだ。それにフィルの見学のお金も入って調子乗っちゃったって言うのは大きかったし」

 ジムさんは優しい表情で僕らを見つめて話した。ファバルさんはジト目でずっとジムさんを見てる。

「ちぃ! いい子ちゃんがよ~。しかし、だ! リファの回復魔法で二日酔いは治るわけだ。今日は罰として使ってもらわなかったが明日からは」

「ダメだよファバル!」

「そうそう。そんなことでリファちゃんの手を煩わせるなんて」

 まだまだ飲むぞというファバルさんにイレレイさんとワッタさんが呆れて声をもらす。
 
「わ、私は大丈夫ですよ。お金が貰えるなら」

「ほ、ほらな~。大丈夫だって言ってるぜ~」

「フィルと私達の夢を叶えるのにお金がひつようだもの」

「……」

 リファの言葉にファバルさんは口ごもる。

「ちぃ……その夢に俺達はいないのかよ」

「え?」

「もう同じパーティーだろ。それなら夢だって」

「ファバルさん……」

 頬を赤くするファバルさん。可愛らしいお兄さんのファバルさんにみんな口角が上がってしまう。

「ぶは! ファバル面白い」

「ほんと!」

「可愛いところあるなファバルは!」

 ワッタさんが我慢できずに笑うとイレレイさんとジムさんも笑い出してしまった。
 笑われて恥ずかしくなったファバルさんは「ちぃ」って言って頭を掻いてる。

「でも、おいらもそう思うな」

「うんうん。私も~」

「ああ、僕も」

 ワッタさんが呟くとイレレイさんとジムさんが呟いて僕を見つめた。

「もう僕らは同じパーティーだ。そうだろ?」

「それならおいらたちの夢も孤児院を作ることなんだな」

 僕らの座る椅子の背もたれに手を置いて顔を近づけてくるジムさんとワッタさん。

「ふん。一緒なら笑うなよな」

「ははは、揶揄うの面白いんだもんしょうがないじゃん」

 ファバルさんとイレレイさんも同じようにルリとリファの背もたれに手を置いて笑う。まだ顔が赤いファバルさんがなんだか面白い。

「あっ! フィル! 笑いやがったな。まったくよ~」

「あう。ちょファバルさん!」

 思わずニヤニヤと笑っているとファバルさんに頬を掴まれちゃう。痛くはないけど、みんなに変顔を見せてしまったみたいで笑われてしまった。

「ん、ふふふ面白い」

 報告から帰ってきたベルルさんにも見られてしまって笑われた。
 彼女の手には大きな革袋が握れてる。

「はい、マジックバッグ返すね」

「はい」

「それとっと」

 ベルルさんはマジックバッグを返してくれて僕らの座っている席の机に革袋をどさっと置いた。その衝撃で中身が出てきてしまってどよめきが起こる。

「ん、ゴブリンキングがいたみたい。ゴブリンもいっぱいいて金貨50枚だってさ」

 金貨がジャラジャラと出てきてるのに冷静に話すベルルさん。

「フィルはこれからCランクにあがるよ。ルリはまだDランクね」

「「え!?」」

「おいおい……」

 ベルルさんのさらなる報告に僕とルリが驚く。よく見るとみんな驚いてるな。ファバルさんなんか呆れて声が漏れてるよ。

「昇格はすると思ってたがまさか僕らと同じランクまで上がっちゃうとは……」

「ん、おかしくないよ。私達で倒せなかった魔物を倒したんだから。改めてフィル。今日はありがとうね」

 ジムさんが腰砕けになって椅子に座って声をもらすとベルルさんが僕の両手を握ってお礼を言って来た。
 僕は一心不乱に魔法を使っただけだから実感がわかないな。
 それにしても昇格か……レベルで考えると当然っちゃ当然だけど、早いな~。

「7歳のCランクか。末恐ろしいな」

「うん。おいらたちはそんな子達とパーティーメンバーってこと。意味わかるファバル?」

「あ~? ワッタこの野郎。見本にならないとか言おうとしてんじゃねえだろうな」

「違うんだな。見本になってないって言ってるんだな。これからのことじゃないんだな」

「このやろ! 言いやがったな!」

 ワッタさんがファバルさんを揶揄うとファバルさんがワッタさんの肩に乗って耳や髪をぐちゃぐちゃにかきむしってる。ワッタさんはくすぐりで応酬してる。仲がいいな~。

 そんなこんなで僕らは冒険者ギルドでいなくちゃいけない子供となっていく。
 ギルドの前で孤児や家のない人へ炊き出しなんかもして積極的に孤児を助け始めた。
 依頼を受けて報告に戻って、炊き出しなんかもして、そんな日々が一週間くらい経ったとき、心配していたことが起こり始めた。
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